病院の検査の基礎知識

感染症や心筋梗塞の疑いがあるときにフィブリノゲンを調べます

フィブリノゲンとは、血液凝固因子の一つ(第T因子)で、血液凝固のメカニズムの最終段階でフィブリンという水に溶けない網状の線維素となり、血球や血小板が集まってできた塊(血栓)の隙間を埋めて、血液成分がそこから漏れ出さないようにしています。

血液を採取して検査を行ないます

フィブリノゲンを調べると何がわかるのか?
急性の炎症が起こったり、体のどこかの組織が破壊されていると血液中のフィブリノゲンが増減するので、これらの異常を診断するために検査を行ないます。例えば、全身のいたるところで血液が凝固する病気として、播種性血管内凝固症候群(DIC)があります。

播種性血管内凝固症候群(DIC)は、悪性腫瘍や重症細菌感染症、白血病などから二次的に発症する病態です。全身で血液凝固が起こるため、凝固因子が消耗してフィブリノゲンも低下し、出血傾向が出現します。

フィブリノゲンは肝機能検査としても用いられます。これはフィブリノゲンが肝臓で合成されているためで、肝硬変や肝臓がんで肝臓の合成能力が低下すると低値を示します。さらに感染症や急性心筋梗塞などの疑いがあるときにも行ないます。

フィブリノゲンは、体内に炎症や組織の変性が生じると血液中に増加して高値を示すからです。血液凝固因子であるフィブリノゲンが何らかの原因で増加すると、体のいろいろな場所で血栓ができやすくなります。

フィブリノゲンはどのように検査するのか?
血液を採取して行ないますが、検査には、フィブリノゲンをフィブリンとして測定する方法と、血漿部分に凝固因子であるトロンビンを加えて、フィブリノゲンが凝固するまでの時間を測定するトロンビン法の2つが用いられています。

前者は、採血に難渋した検体や古い検体では偽低値になることがあります。一方、後者のトロンビン法でも、フィブリノゲンに分子異常があると、凝固するまでに時間がかかり偽低値になります。

フィブリノゲンは、急性の炎症や組織に破壊があるときに血液中に出現する物質であるため、症状の落ち着いたときに再検査する必要があります。

検査を受けるときの注意
心臓病などの血栓症のために抗凝固剤を使用している人、妊娠中の人、経口避妊薬を飲んでいる人は、検査前に申し出てください。

基準値
200〜400mg/dl

検査結果の判定
高値の場合は感染症などで炎症が起こっているか、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症が起こっていることが考えられます。抗凝固剤であるヘパリンの投与を中止したあとや、新鮮凍結血漿(FFP)・フィブリノゲン製剤などを大量に投与された場合にも高値を示します。

低値の場合は血栓症のあとで消費されたために低くなっているか、もしくはフィブリノゲンをつくる肝臓に異常があることなどを疑います。フィブリノゲンの消費量が多くなる播種性血管内凝固症候群(DIC)などでも低値となります。

目安として、フィブリノゲンの検査値が100mg/dlの場合は低フィブリノゲン血症として注意し、50mg/dl以下の場合は出血の危険性を考えます。

異常があったらどうするか?
ほかの検査を行なって病気の診断をして、治療を行ないます。

異常な場合に疑われること

  • 高値…感染症、脳梗塞、急性心筋梗塞、がん、ネフローゼ症候群など
  • 低値…肝機能障害(肝硬変、肝臓がん)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、低フィブリノゲン血症、劇症肝炎など

 
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