病院の検査の基礎知識

過剰なコレステロールは生活習慣病の原因となります

コレステロールは体内にある脂質(脂肪)の一種で、脂肪酸と結合したエステル型と、別々に分かれた遊離型があり、これら二つを合わせて総コレステロール(T-Cho)といいます。

低コレステロールを意識した食生活

コレステロールは細胞膜の材料となったり、血管の強化や維持にも重要な役割を果たしています。また、副腎皮質ホルモンや性ホルモンなどは、このコレステロールをもとに作られています。脂肪の消化を助ける胆汁酸の主成分ともなっており、私たちの体には必要不可欠なものです。

しかし、ご存知のとおり、血液中のコレステロールが多くなりすぎると、動脈硬化症などの生活習慣病の原因となります。日本人のコレステロール値は、ファストフードなどに代表される食生活の欧米化により年々高くなってきています。増えすぎたコレステロールは、血管の壁に付着し、血管を詰まらせる一因となります(下のイラスト参照)。これが脳動脈で起きれば脳梗塞に、心臓の冠状動脈で起きれば心筋梗塞になります。

血管の弾力も失われます

総コレステロールで何がわかるのか?
動脈硬化を早める危険因子には、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、糖尿病、喫煙、ストレスなどさまざまなものがあります。なかでもコレステロールや中性脂肪が増加する脂質異常症が長引くと、心臓の冠状動脈硬化や脳動脈硬化が起こりやすくなります。

生活習慣の改善を行わずにこの状態を放置していると、日本人の死亡原因の上位を占めている、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクが高まります。そのため、総コレステロールの検査は、動脈硬化や心臓病などの循環器障害の診断や経過の判定に重要な役割を果たしているのです。

総コレステロールはどのように測定するのか?
血液を採取して行ないます。酵素を使って簡単に測定できます。

検査を受けるときの注意
食後には、食事でとった栄養素が血液中に増えるため、正しい測定ができません。そのため、総コレステロール値を測定する場合は、原則として前日の夕食後は飲食を禁止し、空腹の状態で採血をします。

基準値と変動の範囲
総コレステロールの基準値は140〜219mg/dlですが、閉経後の女性は、ホルモンの関係で上昇する傾向があり、150〜239mg/dlを基準値としています。ただ、総コレステロール値は個人差があり、遺伝的な体質や食生活の内容、ストレスによっても左右されるので、多少の変動なら神経質になる必要ありません。

異常があったらどうするか?
総コレステロール値が基準値を超えていれば、動脈硬化の進行を考えて、HDLコレステロールLDLコレステロール眼底検査、CT、MRI、心電図冠状動脈造影心筋シンチなどの検査を受けておくことが大切です。

喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を促進させるので、今すぐ禁煙しましょう。そのうえで、動脈硬化予防のために食生活を見直します。コレステロール値は、脂肪、特に飽和脂肪酸を多く含む食品を食べると高くなります。バターや豚ロース肉、牛霜降り肉、エビ、卵黄など、コレステロールを上昇させる食品は、食べ過ぎないようにしましょう。

コレステロール値が基準値よりも低い場合には、肝機能の検査を受け、異常がなければ食生活(偏食や栄養不足)についても調べます。

異常な場合に疑われること

  • 高値…脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化、糖尿病、脂肪肝、閉塞性黄疸など
  • 低値…肝硬変、肝臓がん、栄養障害、甲状腺機能亢進症、アジソン病など

数値が高い人は食事で摂取するコレステロール量を1日300mg以下にします

健康な人が食品から摂取してもよいとされるコレステロールの適量は、男性で750mg/日、女性で600mg/日とされていますが、既にコレステロールの数値が高い人は、食事での摂取量を300mg/日以下に抑えることが重要となります。

摂取量を考えた食事を心掛けましょう

2015年5月、厚生労働省は「体内のコレステロールの数値は食事で大きく変動しない」として、従来の1日摂取量の基準を撤廃しました。しかし、これは「健康な人については、食事によるコレステロールの摂取と、血液中のコレステロール量はそれほど関係ない」という話であって、コレステロールを気にする必要ははなく、なにを食べても大丈夫というわけではありません。

実際、日本動脈硬化学会も基準撤廃に賛同する意見を表明しましたが、「悪玉のLDLコレステロールの数値が高い人は、引き続きコレステロールの摂取制限が推奨される」としています。

摂取量を制限するうえで、効率的なのはコレステロールを多く含んでいる食品をなるべく避けるようにすることです。文部科学省が公表している「日本食品標準成分表」のデータを元にコレステロールの含有量が多い食品をまとめたのが、下の表です。

食品名1回使用量コテステロールの含有量
鶏卵1個(50g)210mg
あん肝1個(40g)225mg
たらこ小1腹(50g)175mg
かずのこ1本(30g)110mg
うににぎり寿司2個分30mg
いか(生)刺身1人分(50g)135mg
いか焼き1杯(120g)456mg
するめ1人分(20g)196mg
たこ足1本(150g)225mg
うなぎ(蒲焼き)1串(80g)184mg
カキ5個(75g)40mg
鶏レバー1人分(50g)185mg
豚レバー1人分(50g)125mg
牛レバー1人分(50g)120mg

表の中で食べる機会が多くて、コレステロールが高いものとしては鶏卵が挙げられます。1日の摂取量を300mg以下に抑えようとすれば、卵を1個食べただけで、その日はコレステロールを含んだ他の食品をほとんど食べられなくなってしまいます。

しかし、鶏卵はたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを豊富に含んだ栄養価値の高い食べ物ですので、全く食べないのも考えものです。卵とコレステロールの関係を調べた研究は数多くあり、1日2個食べても数値は上昇しなかったという研究もあれば、卵を多く食べる人に脂質異常症の人が多いという研究もあります。

半信半疑で食べたり、食べなかったりしても不安ですので、まずは、主治医に相談して、その指導によって食べる量を決めておくと安心かと思います。一般的には鶏卵は1日1個程度にして、肉類や魚卵類などを食べる際には、1/2個程度に減らせば問題ないとされています。

なお、鶏卵は確かにコレステロールを多く含んでいますが、ほとんどは卵黄(黄身)に含まれており、卵白(白身)のコレステロールはほぼゼロです。卵白は良質なたんぱく質の宝庫でもありますので、上手に活用しましょう。

また、上の表の含有量だけ見ると、いか、たこ、貝類も避けたほうがよさそうに見えますが、最近の研究ではそれほど神経質になることはないとされています。というのも、これらの食品にはコレステロールが腸から吸収されるのを抑えるステロール類が多く含まれているため、実際に体内で吸収される量はそれほど多くないためです。

さらに、これらの食品にはコレステロールを上昇させる飽和脂肪酸はあまり含まれていませんし、元々、毎日大量に食べる食品でもありません。

しかし、既にコレステロールの数値が基準値よりも高い人や、食事療法を行っても数値に改善が見られないような人は避けたほうがよいでしょう。

果物、海草、キノコ類に豊富な食物繊維や、豆腐、納豆などの大豆製品に含まれる良質なたんぱく質には、コレステロールの吸収を抑える作用があります。また、サンマ、ブリ、イワシなどの青魚に含まれているDHAとEPAには、血液中のコレステロールを低下させる作用がありますので、毎日の食事で積極的にとるようにしましょう。


 
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