病院の検査の基礎知識

集団食中毒の原因菌となることが多く、子供や高齢者は重症化しやすい

ヒトや家畜の腸管に存在する細菌のひとつが大腸菌です。大腸菌のなかには、急性の胃腸炎や下痢を起こすものがあり、特に腸管出血性大腸菌O157(O157)は出血性の腸炎を起こす毒性の強い細菌です。O157に感染すると、激しい腹痛と下痢を起こします。最初は水のような下痢ですが、ひどくなると腸管から出血して鮮血便となります。発熱をともなわないのも特徴です。

O(オー)157

O157はノロウイルスやカンピロバクターなどと並んで集団食中毒の原因菌となることが多く、子供や高齢者の場合は重症化しやすく、生命に関わることもあるので注意が必要です。O157は75度以上で1分以上過熱すると死滅するので、食中毒の起こりやすい季節には加熱調理を心がけましょう

腸管出血性大腸菌O157はどのように検査するのか?
検査方法には、便を培養して調べる方法(培養)と、O157が産生している細胞変性毒素のベロ毒素(VT)を免疫学的に検出する方法(ベロトキシン)があります。便から菌が検出できるのは、下痢が始まってから5日程度なので、それを過ぎた場合には血清抗体価検査が必要となります。

検査結果の判定
O157が検出された場合は、O157がベロ毒素を産生しているかどうかの検査も必要です。
O157だからといって、全ての菌がベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌だとは限らないからです。
症状がないにもかかわらずベロ毒素を産生する菌であることが確認された場合、こうした人を「無症状病原体保有者」といい、本人に症状がなくても、他の人に移す可能性があります。
そのため、感染症の法律上は、患者と同様に便の検査でベロ毒素産生菌が陰性になるまでの間は飲食物の製造や飲食物に直接接触するような業務につくことが制限されます。

異常があったらどうするか?
O157の感染が確認され、下痢症がある場合は、安静、水分の補給、消化しやすい食事の摂取に気をつけます。症状が重い場合は、輸液(点滴)を行います。止痢剤(下痢止め)の使用は、毒素の排泄を遅らせることになるので使用しません。また、抗菌剤の使用については賛否両論があり、医師の判断のもとで慎重に使用する必要があります。

下痢が長引いたり、激しい腹痛、血便、尿量が少ない、浮腫、出血斑、頭痛、傾眠傾向(眠りたがる)のような症状が認められる場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)の合併が疑われます。
溶血性尿毒症症候群とは、5歳以下の子供や高齢者に発症しやすい急性腎不全のことで、破砕状赤血球を伴った貧血、血小板減少、腎機能障害を3大特徴とする生命に関わる重篤な病態です。

溶血性尿毒症症候群が疑われる場合、尿タンパク尿潜血反応を調べる尿検査、赤血球数白血球数血小板数を調べる血液検査、LDH血清ビルビリン値を調べる生化学検査、そのほかクレアチニンGOT・GPTなどの検査を行ないます。

溶血性尿毒症症候群の場合は、すぐに入院した上で、状態を見ながら輸血、血小板輸血、血しょう交換、人工透析などを行う必要があります。

異常な場合に疑われること
出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群(HUS)など

O157の感染を予防するためのポイント

  • O157は75度以上で1分以上過熱すると死減します。調理するときは、十分加熱しましょう。
  • 食品の調理に当たっては、手や調理器具は十分に洗いましょう。
  • 調理器具は食品ごとにこまめに流水で洗い、熱湯をかけておきましょう。洗浄した後でしっかり乾燥させましょう。
  • 生野菜は流水でよく洗って、肉は火を十分に通して食べましょう。衛生的に扱われているお刺し身やお寿司は安全です。
  • 調理した食品は早めに良べましよう。冷蔵庫に入れ低温で保存する場合も、冷蔵庫を過信しないようにしましょう。

 
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