病院の検査の基礎知識

高齢者の結核は突然発病する可能性があるので注意が必要です

結核に感染しても、多くの人は発病せずに結核菌が体内で生き続けます。ストレスや栄養不良などでからだの抵抗力が落ちてくると、その結核菌が増殖して発病します。現代の高齢者は若いうちに感染していることが多く、突然発病する可能性がありますので注意しましょう。

結核菌の画像です

結核菌の有無を調べる検査には、主に次のようなものがあります。

ツベルクリン反応
結核菌の培養液から抽出した精製タンパク質(PPD)を前腕部の内側の皮膚に注射し、48時間後、皮膚に一定の大きさの赤斑が出るか確認します。

塗沫検査
痰を採取し、ガラス板に塗沫してチール・ネールゼン染色という特殊な染色法を施し、顕微鏡で観察します。

培養検査
塗沫検査だけで菌が確認できなかった場合には、痰を特殊培地で1ヶ月ほど培養・発育させたうえで、再び検査を行います。培地で発育した菌は抗酸菌といいます。結核菌のほかにも非定型坑酸菌が育ちますが、これはナイアシンテストという方法で鑑別できます。

検査を受けるときの注意
検査用の痰が採取できたら、表面が乾かないうちに速やかに提出します。ツベルクリン反応では、注射した皮膚をかきむしらないようにしてください。

基準値
塗沫・培養検査で痰に結核菌が確認されなければ陰性(-)で異常なし、ツベルクリン反応で皮膚に一定の大きさの赤斑が出れば陽性(+)で正常です。赤斑がなければ陰性(-)です。結核の予防注射(BCG)を受けていると、ツベルクリン反応が陽性になります。陰性の場合にはこの予防注射が必要です。

検査結果の見方と判定
塗沫・培養検査で痰に結核菌が確認されれば、陽性(+)で結核と診断されます。ツベルクリン反応では皮膚に一定以上の大きさの赤斑が出れば、強陽性(++以上)で結核にかかっている疑いがあります。その場合は、胸部X線検査やたんの塗沫・培養検査、白血球数赤沈CRP(C-反応性タンパク)など複数の検査を行い、結核かどうかの確定診断が行われます。

結核は国内で年間2万人の新規患者、2000人以上の死亡が報告されています

結核は、患者の咳やくしゃみなどによって体外に排出された結核菌が空気中に飛散し、それを吸い込む「空気感染」で広がっていきます。沖田総司、正岡子規、樋口一葉、滝廉太郎など歴史上の多くの有名人物が亡くなっているイメージが強いせいか、どうしても「過去の病気」として考えられがちです。

咳をする高齢者

確かに、1950年まで日本人の死因の第1位だった結核は、戦後の栄養状態の改善、衛生環境の整備、抗生物質の開発などにより、現在では死因ランキングの下位になりました。

しかし、結核はHIV感染症、マラリアと並んで、「世界三大感染症」と位置づけられており、日本でも1999年に「再興感染症」として結核緊急事態宣言が出されています。再興感染症とは、治療薬の進歩等により一時期は患者数が減少したものの、何らかの理由で再度感染が拡大している感染症を意味しています。

日本では毎年約2万人の新規患者と2000人以上の死亡が報告されており、患者数は先進国の中で最も多くなっています。罹患率も他の先進国の2〜5倍となっており、衛生環境が整っていない開発途上国を結核の大規模流行国とするならば、日本は中規模流行国と言えるでしょう。

結核菌は、感染者の60%が1年以内に発症します。しかし、感染してもすぐに発症せず、数十年にわたって体内で潜伏を続けることがあるのが大きな特徴です。そして高齢になり免疫が低下すると、活動を活発化させて結核を発症するのです。

厚生労働省の年次別結核の統計(2013年)によると、新規の結核患者のうち60歳以上の患者が占める割合は71.2%となっています。高齢化のほか、糖尿病、抗がん剤やステロイド薬の投与、栄養状態の悪化なども免疫力を低下させる原因となります。したがって、病院や高齢者が集まる施設は結核の発症リスクが高まり、院内感染や集団感染が起きた事例もあります。

結核菌は気道から肺に侵入するため、肺結核が全体の80%以上を占めています。肺結核の代表的な初期症状は、咳と痰、発熱(微熱)です。風邪との違いは、これらの症状が長期化することです。初期症状の後は、全身の倦怠感、胸痛、食欲不振、喀血など症状が段々と重くなっていき、体重が大きく減少し呼吸困難を訴えることもあります。

上記の症状に身に覚えがある場合、早急に呼吸器科のある医療機関を受診しましょう。結核と診断されたら、専門の病院に入院して、抗結核薬などによる治療を行います。結核菌を完全に排除するためには数種類の薬を半年以上、飲み続ける必要があります。

近年は複数の抗結核薬に対して耐性を持つ結核菌による「多剤耐性結核」の増加が世界的に問題となっています。さらには抗結核薬が全く効かない「超多剤耐性結核」の出現も報告されるなど、この病気を取り巻く状況は予断を許さないところまで来ています。


 
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