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女性の80%は無症状!クラミジアの感染が招く不妊のリスク

近年の性感染症(STD)の最大の特徴は「症状が現れにくい」ことです。昔の性感染症は、感染すると強い症状が現れることが多かったのですが、最近は感染者がそれと気付かないままセックスパートナーに病気を移してしまうリスクが高まっています。数ある性感染症の中でも最も感染者数が多く、この10年で若い女性に急増しているのが、クラミジア感染症です。

クラミジア・トラコマチス

クラミジアに感染すると、1〜3週間の潜伏期間の後、男性では尿道の出口がかゆくなり、白く濁った尿が出て、排尿痛や熱っぽさを感じます。女性ではおりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交時の痛みなどが現れますが、自覚症状が全くない症例が全体の約80%を占めるとされています。また、オーラルセックスで口や喉に感染した場合は、無症状のケースもありますが、頚部のリンパ節が腫れ上がることもあります。

性感染症の症状としては、男女とも比較的軽い部類に入りますが、放置していると菌が性器内部まで入っていき合併症を起こします。男性ではクラミジアの感染による尿道炎が、非淋菌性尿道炎(淋病の感染を原因としない尿道炎)の約半数を占めているほか、慢性前立腺炎や精巣上体炎の原因にもなります。

女性は尿道が短いために菌が膀胱へ達しやすいため、膀胱炎になったり、膣から子宮頚部におよんだ場合には、子宮頚管炎を引き起こすこともあります。また、クラミジア感染者の約20%の人は淋菌にも感染しているとされています。

妊娠している女性の場合、クラミジアの産道感染によって新生児肺炎や結膜炎を起こすことがあります。公益財団法人「性の健康医学財団」が約32万人の妊婦さんを対象に実施した大規模調査(2015年)では、約2.4%の妊婦さんがクラミジアに感染していることが判明しました。新生児の誕生数は1年間で約100万人ですので、約2万4千人の妊婦さんが感染していると推計されます。

不妊症の原因となる性病

女性がクラミジアに感染して一番怖いのは、自覚症状がないまま子宮頸管の炎症が子宮内膜、卵管などに広がり、子宮外妊娠や不妊の原因になることです。

例えば、クラミジアが卵管にまで侵入すると、炎症による癒着(組織同士がくっつくこと)で卵管が変形したり、完全に塞がってしまうことがあります。そうなると排卵後に卵子を取り込むことができなくなる「ピックアップ障害」を起こしてしまい、不妊の原因となってしまうのです。

不妊の原因が女性にある場合、その原因として最も多いのが卵管の異常です。卵管の異常の多くはクラミジアが関係しているとされており、症状が軽いからといって放置しておくのは危険です。

口は第二の性器!フェラでクラミジアが喉に感染する女性が急増中

近年のクラミジアの傾向として、オーラルセックスで感染するケースが増加していることが挙げられます。フェラチオに代表されるオーラルセックスがAVなどの限られた世界で行われていたのは今や昔の話です。10代後半から30代の男女を対象にした調査によると、約70%の人がオーラルセックスを経験していると回答しています。

咽頭の感染に注意

そのうち約80%の人は、口による類似性行為なら「妊娠しないから安心」あるいは「彼氏が"生"じゃないと嫌がる」などの理由で、オーラルセックスの際にコンドームを使用していません。ここに感染が拡大する落とし穴があります。

口や喉の粘膜は非常に薄く、わずかな刺激でも傷がつきやすいため、コンドームを着用しないでオーラルセックスを行うと、男性の精液に存在しているクラミジアに感染するリスクが生じてしまうのです。

その逆のパターンとして、女性の口や喉にクラミジア感染がある場合は、唾液を通じて男性の性器に感染させてしまうリスクもあります。なお、通常のキス程度は問題ありませんが。双方の粘膜が絡みあうディープキスになると、クラミジアへの感染リスクを排除しきれないため注意が必要です。

口や喉に感染した場合は自覚症状が現れにくいため、女性に複数の男性パートナーがいる場合には、本人は全く気がつかないまま、大きな感染源となっていることがあります。

性病の診察機会の多い医師の間では、"口は第二の性器"と言われているほど、クラミジアや淋菌が感染、繁殖しやすい場所となっています。したがって、オーラルセックスを行う際にもコンドームを付けるように心がけましょう。

クラミジアの検査はどのように行うのか?
受診する診療科は、性病科もしくは泌尿器科(男性)・婦人科(女性)になります。まず問診を行って、男性で尿道炎が疑われる場合は尿沈渣を行って白血球の有無を確認します。

不快な症状の放置は危険

クラミジアの検出には抗原検査法、核酸増幅法などがあります。いずれも尿(男性)、膣分泌液(女性)を採取して調べますが、核酸増幅法の方が精度が高く、簡易性にも優れているため、現在の主流となっています。その他、うがい液を採取したり、咽頭ぬぐい液を採取する方法などがあります。

クラミジア感染症の治療に際しては、ジスロマック(一般名:アジスロマイシン)、クラリス、クラリシッド(一般名:クラリスロマイシン)、クラビット(一般名:レボフロキサシン)などの抗生物質が処方されます。

クラミジア感染症に限らず、全ての性感染症の治療で大切なのは、男女間で互いに感染させてしまう「ピンポン感染」を防ぐことです。感染が疑われる場合はセックスパートナーも医療機関を受診し、検査結果が陽性の場合は、両者が同時に治療を行う必要があります。


 
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