病院の検査の基礎知識

水疱瘡は水痘ワクチンの定期接種化で患者数の激減が期待されています

一般的には「水疱瘡(水ぼうそう)」と呼ばれることが多い「水痘(すいとう)」は、水痘帯状疱疹ウイルスに初めて感染することで発症します。麻疹(はしか)、結核と同様に空気感染する感染症として知られており、空気中に漂うウイルスを直接吸い込むだけでなく、咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込んだり、水ぶくれの汁などに触れることでも感染します。

赤い発疹が特徴的

水疱瘡は、冬から春にかけて主に幼児や小学校の低学年の間で流行します。代表的な症状である発疹(詳しくは後述)が現れる1日〜2日前くらい前にウイルスは感染力を持っています。すなわち、周囲の人は発疹が現れてから感染に注意しても既に遅い可能性があり、学校や保育施設だけでなく、家庭内でも感染が広がってしまうことがあります。

麻疹(はしか)に比べると感染力は弱いものの、それでも免疫のない人が家庭内感染する確率は約90%と非常に高くなっています。ウイルスに対して免疫のない大人が感染すると重症化しやすく、肺炎などの合併症を引き起こして入院による治療が必要になることもあります。また、妊婦さんは流産のリスクや、胎児への感染リスクが生じます。

水痘帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、2週間程度の潜伏期間の後、発熱と全身の倦怠感とともに「赤い発疹」が現れるのが水疱瘡の大きな特徴です。発疹はかゆみを伴っていることが多く、顔や頭皮、手足、お腹、背中などに現れて、2〜3日経つと「水泡(水ぶくれ)」になります。やがて水泡は粘度が帯びて「膿疱」となり3日程度でかさぶたになって、3週間ほどで剥がれて治ります。

この間にも新たな発疹が次々とできるため、全身の皮膚に発疹、水疱、膿疱、かさぶたが同時に混在して見られます。かゆみがピークは発疹が水疱になったときで、かさぶたになる頃には自然にかゆみは治まります。

水泡のかゆみが我慢できないからと掻き毟ってしまうと、化膿して治癒した後も痕が残ることがあります。小さいお子さんの場合、爪を短く切ってあげるか、手袋を着用させるとよいでしょう。

水泡の汁は二次感染を引き起こす原因となりますので、患者さんもその家族も手洗いを念入りに行うことが大切です。また、水泡をつぶさないようにタオルで患部を拭くときは優しくしましょう。

治療は、体内でのウイルスの増殖を抑える抗ウイルス剤(アシクロビル・バラシクロビル)が使用されます。発症48時間以内に服用することで、症状を和らげることができます。かゆみの症状が酷い場合には、塗り薬(フェノール亜鉛華軟膏)や抗ヒスタミン薬が使用されます。

なお、水疱瘡を発症した場合、二次感染を予防するため、全ての発疹がかさぶたに変わるまで出席停止となることが「学校保健安全法」によって定められています。

水疱瘡は一度かかると生涯にわたって免疫が獲得されるため、二度と感染することはありません。それにもかかわらず、水疱瘡が厄介な感染症とされるのは、なぜでしょうか?

その理由は、水痘帯状疱疹ウイルスに一度感染すると、症状が消えた後もウイルスは排除されることなく、神経の根っこの部分(神経節)に潜伏を続け、過労やストレス、睡眠不足などで免疫力が低下すると、ウイルスが復活して皮膚に不快な症状を引き起こすからです。これが「帯状疱疹」で、水疱瘡に罹った人は誰でも発症する可能性があります。

ウイルスが神経節で潜伏を続け、免疫力の低下に乗じて活動を再開させるという一連の経緯は、口唇ヘルペスや性器ヘルペスで知られる単純ヘルペスウイルス感染症と全く同じですが、実は水疱瘡の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスも、人間に感染するヘルペスウイルス(8種類)の一つなのです。

帯状疱疹を発症すると、顔や胸、腹部、手足などの右側もしくは左側のどちらか一方に、チクチクあるいはピリピリとした痛みが現れて、数日経つとその場所に赤い発疹が現れます。発疹は帯状に広がりながら水泡になります。水泡はやがてかさぶたとなり剥がれ落ちます。通常、皮膚の痛みが現れてからかさぶたが落ちて完治するまでに数週間から1か月程度かかります。

従来、水痘ワクチンは任意接種だったため、接種率は低い状態で推移してきました。その結果、毎年約100万人(推定)もの水疱瘡の患者が新たに報告されてきました。

しかし、2014年10月1日から水痘ワクチンが定期接種化されたため、患者数は激減すると期待されています。水痘ワクチンは基本的に生後12〜15か月の間に1回目の接種を行い、それから3か月以上してから2回目の接種を行います。


 
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