病院の検査の基礎知識

妊婦さんは胎児に感染して難聴などが現れる「先天性風疹症候群」に注意!

風疹は、風疹ウイルス(下の写真参照)に感染することで起こる感染症です。ウイルスに感染すると2〜3週間の潜伏期間を経て、最初に耳の後ろや首のリンパ節が腫れてきます。そして数日後に発熱があり、かゆみを伴う淡紅色の発疹が顔から全身に広がるのが特徴です。急性肝炎、関節炎、血小板減少性紫斑病などの合併症を引き起こす人もいます。

風疹ウイルス

その一方で、症状が軽くて済む人も少なくなく、発熱がない患者さんが約半数程度となっています。またリンパ節の腫れがなく突然、発熱・発疹が現れる人います。症状が全く現れない不顕性感染も全感染者の15〜30%程度いるとされ、感染に気がつかないまま多くの人に移しているケースがあります。

発疹は、麻疹(はしか)のように跡が長く残ることはなく、通常は3日程度で消えてることから「3日ばしか」とも呼ばれています。そのため、風疹と麻疹が混同されているケースが多く、過去に受けた麻疹のワクチン接種を、風疹のワクチン接種と思い込んでいたという話がよく聞かれます。

風疹ウイルスは感染力は強く、咳やくしゃみの飛沫に含まれたウイルスを呼吸器から直接吸い込む「飛沫感染」だけでなく、ウイルスを含んだ飛沫に直接触れたり、ドアノブなどを介して間接的に触れる「接触感染」でも感染するリスクがあります。風疹ウイルスに対して免疫がない人の場合、インフルエンザに比べて2〜5倍ほど移りやすいとされています。

ワクチン対策が整備されている先進国で風疹が発生することは稀で、年間の患者数が100人を超えることはまずありません。2013年の患者数を見ると、アメリカでは9人、イギリスが13人、カナダとスペインが2人と非常に少なくなっています。

一方、同じ2013年の日本国内における風疹の患者数は14,357人と突出した数字になっています。大きな特徴としては、@患者全体の約9割を成人が占めていること、A患者全体の7割を男性が占めていることの2点が挙げられます。

従来、風疹は子供に感染しやすい病気とされてきましたが、近年は成人に患者数が増加しています。その背景には子供の頃にワクチン接種を受けていないという事実があります。1977年8月〜1995年3月までは、中学生の女子がワクチン接種の対象となっていました。

その影響から1979年4月1日以前に生まれた男性は、ワクチン接種を受けていません。また、1979年4月2日〜1995年4月1日に生まれた男女は、ワクチンの接種率が低かったことも成人患者の増加に関係しています。

風疹に特に注意を払う必要があるのは妊婦さんです。風疹に対する免疫がない妊婦さんが妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、胎児に感染する恐れがあります。その場合、胎児は「先天性風疹症候群」となり、白内障や先天性心疾患、難聴などの障害が現れます。

これら先天異常のほかにも、新生児期に低出生体重、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、間質性肺炎、黄疸などの症状が現れることもあります。妊娠4週目までの初期に風疹ウイルスに感染することが最も危険ですが、20週目前後までは油断は禁物です。

注射

風疹はワクチンで予防が可能ですので、風疹の免疫がない女性は、一度ワクチン接種について考えてみるとよいでしょう。風疹に対する免疫の有無は、採血をして抗体を調べる「風疹抗体検査」で簡単に確認することができます。

抗体の検査は、HI(赤血球凝集抑制試験)と呼ばれる方法で測定を行い、一般的にHI抗体16倍以上が「免疫あり」とされており、妊娠を希望する女性では、16倍以下の場合にワクチン接種が勧められます。

現在、多くの自治体では妊娠を希望する女性に対する予防的な措置として、協力医療機関における無料の抗体検査を実施しています。事前の申請が必要となりますので、詳しくはお住いの自治体のホームページ等でご確認ください。

ただし、風疹の予防に使用される弱毒性ワクチンは、妊婦さんに接種することはできません。妊娠を希望する女性でワクチン接種を考えている人は、妊娠前に受ける必要があります。また過去にワクチンを接種していても、1回だけでは免疫が十分にできていなかったり、年齢を重ねるにつれて免疫が低下していることもあります。胎児の先天性風疹症候群を予防するためには、女性だけでなくその夫もワクチン接種を受けておくことが大切です。

なお、風疹ワクチンを受けた女性は、接種後少なくとも2か月間は避妊する必要があります。ちなみにアメリカでは3か月の避妊が指導されています。これはワクチンのウイルスが絶対に影響しないとは言い切れないからです。

風疹には特効薬や特別な治療法は存在せず、手洗いの励行やマスクの着用だけでは感染を完全に予防することはできません。風疹に罹ってしまったら、ほかの人との接触をできるだけ避け、感染を拡大させないようにすることが大切です。子供が発症した場合、学校保健安全法の定めによって、発疹が消えるまでは出席停止となります。


 
Copyright 2015 病院の検査の基礎知識 All Rights Reserved.