病院の検査の基礎知識

インフルエンザの感染経路、種類、検査方法を解説しています

インフルエンザは、感染者の咳やくしゃみなどの飛沫に含まれたインフルエンザを吸い込んだり(飛沫感染)、感染者がウイルスの付着した手で触ったドアノブやエレベータのボタン等に別の人が触り、その手で鼻や口に触れる(接触感染)ことで感染します。ウイルスは乾燥した環境下では長時間の生存が可能なため、日常生活の中で接触感染が想定される場面は数多くあります。

呼吸器に症状が現れます

インフルエンザは、感染症法によって「季節型インフルエンザ」、「新型インフルエンザ」、「鳥インフルエンザ」の3つに分類されています。このうち免疫のない新型インフルエンザや鳥インフルエンザは重症化しやすく、なかでも鳥インフルエンザでは死に至ることもあります。

インフルエンザウイルスにはA型・B型・C型に分類されます。インフルエンザは人、豚、鳥に感染しますが、人が感染するのはA型とB型の2つで、世界的に大流行するのはA型が中心となります。

「A・B・C型の3つしかないのに、ニュースを見ていると香港型(H3N2型)やアジア型(H2N2型)みたいに、H型とかN型があるのはどうして?」と思われる方がいるかもしれません。実はA型には「H型」と「N型」があり、その組み合わせで多数の「亜型(派生的な型のこと)」に分かれるのです。

季節型インフルエンザ
冬に流行するインフルエンザです。私たちが会話の中で「インフルエンザ」という単語を使う際は、この「季節型インフルエンザ」を指しています。通常11月上旬ごろから感染者が増加しはじめ、翌年の1月下旬から2月上旬に流行のピークを迎え、4月上旬に終息します。患者数には幅があり約10万人程度の年もあれば、100万人を突破する年もあります。

医療機関で接種できます

ウイルスに感染して1〜3日程度の潜伏期間を経て、38℃以上の高熱や頭痛、全身の筋肉痛、関節痛、倦怠感などが現れます。鼻水、のどの痛み、咳などの呼吸器症状に加えて、下痢を起こすこともあります。

ワクチン接種を受けていない高齢者や子供、あるいは気管支喘息、危険支援、心疾患、糖尿病、腎疾患などがある人は重症化しやすく、最悪の場合、死に至るケースもあります。

ワクチンを接種することで、インフルエンザの発症や合併症をある程度防ぐことができますが、完全に感染を予防できるわけはありません。発症後の重症化を防ぐことがワクチン接種の本来の目的です。

インフルエンザワクチンには人が感染するA型・B型に対応するワクチンが含まれていますが、A型・B型ともに複数のタイプがあり、ワクチンもそれぞれ異なります。その年に使用されるワクチンの内容は、世界での流行状況や前年度の流行を考慮したうえで、日本で流行しそうなものを予測して製造します。

高齢者や小児はインフルエンザを発症すると重症化しやすい傾向にあるので、予防接種を受けるメリットは特に大きいといえます。持続効果は約5か月とされています。ワクチンは安全性の高い不活化ワクチンですので、生ワクチンと異なり妊婦さんでも使用できます。

ワクチンの効果が出るのは、摂取してから約2週間後ですので、「この冬もインフルエンザが大流行!全国で学級閉鎖が相次ぐ」というニュースを見てから慌てて医療機関を受診するのでは遅いです。流行が始まる前に予防接種を受けるのが正しいタイミングです。

インフルエンザの検査方法は非常に簡単です。まず専用の綿棒で鼻の奥の粘膜に付着している鼻汁を擦り取ります。そして綿棒を処理液に浸して、検査紙(テステープ)にポタポタと垂らします。10分くらい経てば、試験紙の色が変化(インフルエンザA型なら赤色、B型なら青色)しますので、これでインフルエンザの感染の有無とその種類がわかります。

季節型インフルエンザにかかったと思ったら早目に医療機関を受診しましょう。検査のタイミングですが、発症直後では陽性になりにくいため、発熱後12〜48時間に受診するのが最善とされています。

治療にはタミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬が使用されます。自宅では安静にして休養をとることが必要で、特に水分補給が大切となります。

予防のためには、流行時は外出時にマスクを着用し、人混みを極力避けるようにし、帰宅時には必ずうがいと手洗いを行いましょう。インフルエンザウイルスは乾燥に強いので、加湿器などで室内の湿度を適度に保つようにしましょう。

新型インフルエンザ
季節性インフルエンザと異なった抗原性を持ち、大半の人が免疫を持っていないため急速に蔓延し、健康に重大な悪影響を及ぼす恐れのあるものを指します。

大流行したA型

2009年にはメキシコとアメリカで発生したA型(H1N1型)によるインフルエンザは、日本でも大流行し、軽症または無症状だった感染者も含めると、国内で2000万人が感染したとされています。死亡率が低かったのは不幸中の幸いで、多くの人がこの大流行を機に免疫を獲得しました。

この新型インフルエンザ(H1N1)は2010年も季節的な流行が発生したため、2011年からは上記の「季節型インフルエンザ」として区分されるようになりました。

鳥インフルエンザ
鳥は、A型インフルエンザウイルスの亜型を多数持っていますが、その多くは病原性の低いものであるため心配ありません。しかし、H5N1型やH7N9型などの一部の亜型には鳥類に強い毒性があり、これを「高病原性インフルエンザウイルス」といい、これらのウイルスによって引き起こされるインフルエンザを「鳥インフルエンザ」といいます。

マスクで対策する女性

WHO(世界保健機関)の報告によると、2003年から流行している高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)による死亡者数は447人、2013年に中国で発生し感染が拡大した鳥インフルエンザA(H7N9)による死亡者数は271人(いずれの数字も2015年6月末時点)となっており、死亡率もそれぞれ約53%、約40%と極めて高い数字となっています。

感染を予防するためには、これらの鳥インフルエンザが流行している土地では死んでいる鳥や弱っている鳥に近寄らないことです。鳥インフルエンザウイルスは、鳥と豚、人に感染しながら、人から人へと感染しやすい型に変異しつつあり、今後世界中で大流行する可能性もあります。


 
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