病院の検査の基礎知識

肝臓、胆道、膵臓の検査の一覧(全27項目)

肝臓は再生能力があり予備能力に富んでいるので、少々のダメージや障害では影響を受けません。肝臓がトラブルを抱えても、すぐには自覚症状が現れにくいことから「沈黙の臓器」といわれています。逆に言うと、全身の倦怠感やむくみ、食欲低下、黄疸、腹水などの症状が現れたときには、かなり深刻という警告でもあります。

肝臓、胆道、膵臓の病気は近年増加しています

人間ドックを受診した約30%の方に肝機能に関する検査項目で異常が認められたという報告もあります(データ:日本人間ドック学会より)

アルコール性肝炎や脂肪肝などの肝障害を早期発見・予防するためには、健康診断や人間ドックを定期的に受診し、GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP、ビリルビン等の数値(下部のリンク先で解説)をご自身で把握しておくことが大切です。血液検査の他に以下のような検査も必要に合わせて実施されます。

腹部エコー(超音波)は、肝臓の脂肪の付き具合、腫れ具合、きめ細かさ(肝臓の線維化が進むと粗くなる)などがわかります。肝臓の細かい変化の診断をつけるのは難しいですが、検査の手軽さ、患者さんの負担の少なさ(放射線を利用しない)が腹部エコーの最大の利点です。

腹部CTは、腹部の周囲を囲むようにエックス線を照射して、腹部の内部の断面図を撮影する検査です。血流が多い肝細胞がんは、造影剤を注射しながらCT撮影を行うと微小な病巣を発見することができます。

腹腔鏡検査は、ガスを注入して腹部を膨らませて十分な空間を作り、お腹に空けた穴から内視鏡を挿入して腹部の内部を観察する検査です。医師が直接肝臓の全体を把握できるというメリットがありますが、患者さんへの負担がやや大きいのが難点です。画像診断が発達した近年は検査のみの目的で実施することは少なくなっています。

肝生検は、腹部エコーで肝臓を確認しながら、肋骨の間に針を刺して肝臓の組織を採取して、肝臓の病変を顕微鏡で直接観察するする検査です。

  • GOT、GPT(AST、ALT)…肝臓病の有無を調べる際に行われる一般的な検査です。
  • γ-GTP…アルコール性肝障害の診断に特に重要な検査です。
  • LAP…胆道が詰まると血液中に増加するので、胆道閉塞の診断に有用です。
  • ALP…γ-GTPやLAPと同様に、肝・胆道疾患の指標として用いられています。
  • LDH…特に急性肝炎や肝臓がん、あるいは心筋梗塞のときに著しく増加します。
  • ビリルビン…肝機能障害や胆管障害などがあると、ビリルビンが血液中に増加します。
  • コリンエステラーゼ…慢性の肝臓病の経過をみていくうえで、とても重要な検査です。
  • 尿ビリルビン、ウロビリノーゲン…急性肝炎の早期発見と経過観察に重要です。
  • A/G比…肝障害、ネフローゼ症候群、悪性腫瘍などの可能性を探ることができます。
  • ICG試験…注射したICGの排出の具合を見て、肝臓の解毒機能をチェックします。
  • 膠質反応(コロイド反応)…肝機能検査のスクリーニングとして用いられています。
  • 腹部CT…肝臓がん、胆道がん、膵臓がんなどの腹部臓器の悪性腫瘍を調べます。
  • 腹部超音波検査(腹部エコー)…胆石、早期肝臓がんの発見に有用です。
  • 腹部血管造影検査…腹部の太い血管に造影剤を流して、X線撮影します。
  • ERCP…早期の膵臓がん、胆嚢がん、胆管がんなどの精度の高い画像を得られます。
  • PTC・PTCD…胆管の狭窄や閉塞が疑われる場合、その部位および原因を探ります。
  • 腹腔鏡検査…腹部に内視鏡を挿入し、肝臓などの腹腔内臓器を肉眼で観察します。
  • 肝生検…肝臓に針を刺して組織や細胞を採取し、顕微鏡で細かく観察する検査です。
  • 腹水検査…腹水は必ず何らかの病気にともなって発生するので、採取して調べます。
  • HCV抗体…C型肝炎の感染の有無を調べることができます。
  • HBs抗原・抗体…B型肝炎ウイルス感染の有無や、その程度を知ることができます。
  • AFP…腫瘍マーカー。肝臓がんの患者の血液中に多く出てきます。
  • CA19-9…膵臓がん、胆道がんで高い陽性率を示す腫瘍マーカーです。
  • アミラーゼ…膵炎やすい臓がんの腫瘍マーカーとして有効です。
  • リパーゼ…アミラーゼと似ていますが、より膵臓に特異的な変動を示します。
  • エラスターゼ1…早期の膵臓がんで数値が上昇するため、スクリーニングに有用です。
  • 十二指腸液検査…肝臓、胆嚢、胆管の異常、胆嚢の濃縮力、胆石の有無がわかります。

 
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