感染後も無症状のまま進行するC型肝炎を調べるHCV抗体検査
HCVとは、肝炎ウイルスの一つであるC型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus)のことです。HCVに感染しても、C型慢性肝炎や肝硬変の初期では自覚症状がなく、肝機能も正常のことがほとんどですが、血液中にHCV抗体がつくられます。この検査では、採血をして血清中のHCV抗体を測定することによりC型肝炎の感染の有無を調べることができます。
C型肝炎は進行が遅く、感染後10〜20年たってから発病します。急性肝炎では症状が現れず、気付かない人が大勢います。その後、ほとんどの人が、ウイルスが排除されないまま無症候性キャリア(体内にウイルスがいるが障害が見られない状態)や慢性肝炎に移行します。国内にはC型肝炎ウイルスのキャリアは約200万人いるとされています。
気付かないうちに病気が進み肝硬変になると、10年後には70%の人が肝臓がんになるというデータがあります。C型肝炎ウイルスに感染している人は、感染していない健康な人に比べて、肝臓がんの発症リスクが700〜800倍も上昇するとされています。
20年ほど前までは注射針の共用や輸血用血液で大勢の人が感染した経緯があるので、1992年以前に輸血を受けた人は、症状の有無に関わらず検査を受けたほうがよいでしょう。
近年では、輸血時のHCV検査が行なわれているので、輸血によるC型肝炎は減少しています。C型肝炎ウイルスの感染ルートはB型肝炎ウイルスと似ています。異なる点は、B型肝炎ウイルスはセックスでの感染も多いため、STD(性感染症)として問題となっていますが、C型肝炎ウイルスはセックスでの感染リスクはそこまで高くないということです。ただし、無防備なセックスは禁物です。
HCV抗体はどのように検査するのか?
血液を採取して調べます。スクリーニング検査では、HCV抗原は測定せず、HCV抗体を測定して感染の有無をチェックします。検査当日の食事は普段どおりにとってもらってかまいません。
基準値
陰性(-)なら正常です。しかし、抗体は感染後1ヶ月で血液中に現れるため、感染直後は陰性でも、1ヶ月後に陽性となることがあります。
検査結果の判定
HCV抗体が陽性の場合は、現在または過去のウイルス感染を示しており、ウイルス遺伝子の検査(HCV-RNA定性検査)で、キャリアかどうかを調べます。さらに、持続感染の有無を調べるために、HCVコア抗体検査を行なう場合もあります。
異常があったらどうするか?
AST・ALT(GOT・GPT)、コリンエステラーゼ(ChE)などの血液検査を行ない、肝機能障害がないかどうかを調べます。肝機能障害があり、HCV抗体が陽性ならC型肝炎が考えられます。
その場合は、腹部超音波や腹部CT、腹腔鏡検査、肝生検などの精密な検査を行ない、肝硬変に進行していないかどうかを調べます。肝硬変になっていれば、3ヶ月ごとに超音波検査は欠かせません。
日常生活では、カミソリやタオルを共用しない、乳幼児に口移しで食べ物を与えないなど、他人への感染を防ぐ注意が必要です。C型肝炎は、治ったように見えても再発することがあるので、病状が回復しても年に1回は検査を受ける必要があります。
異常な場合に疑われること
C型肝炎(急性・慢性)、肝硬変、肝臓がんなど