病院の検査の基礎知識

他の肝機能検査に比べて異常に敏感なコリンエステラーゼ(ChE)

コリンエステラーゼ(ChE)は体内ではたらく酵素の一種です。コリンエステルという物質をコリンと酢酸に分解することによって、たんぱくをつくりだしています。ChEには2つの種類があり、一つは赤血球や筋肉、神経組織の中に含まれていて(真性)、もう一つは血清や肝臓、膵臓、腸、肺などに含まれています(偽性)。健診などでは肝機能検査の一つとして、この偽性ChEを測ります。

急激な上昇では、ネフローゼ症候群が疑われます

コリンエステラーゼ(ChE)を調べると何がわかるのか?
コリンエステラーゼはアルブミンと同様に肝臓だけで産生されているので、両者の値はほぼ平行して変動します。また、プロトロンビン時間とも一致します。コリンエステラーゼは、ほかの肝機能検査に比べていち早く異常値を示すので、これらの検査値とあわせてみることによって、肝臓の障害されている程度がわかります。したがって、慢性肝炎や肝硬変などの慢性の肝臓病の経過をみていくうえで、とても重要な検査となっています。

脂肪肝やネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病、原発性肝がんなどの場合は数値が上昇しますので、これらの病気を調べる際にも有用です。

コリンエステラーゼ(ChE)はどのように検査するのか?
血液を採取して、自動分析器で測定します。測定法により基準値が異なります。日内変動や運動の影響はありませんが、睡眠薬や緑内障治療薬(降眼圧薬)、抗血栓剤などでは数値が下がるので、あらかじめ申し出てください。

基準値
測定法によって基準値や単位が異なりますので、異なる医療機関で受けた検査結果を比べる場合は、単位に注意しましょう。個人差が極めて大きいのが特徴ですが、同一個人では安定しています。

  • フェノールレッド法…0.6〜1.2ΔpH
  • ブチリルチオコリン法…1900〜3800IU/l
  • ベンゾイルコリン法・・・1100〜1900IU/l

検査結果の判定
コリンエステラーゼ(ChE)は肝臓で産生されているので、ChE値が基準値を下回っている場合は、急性・慢性肝炎、劇症肝炎などが疑われ、著しく低いときは肝硬変や転移性肝がんが疑われます。

逆に、急激に増加した場合はネフローゼ症候群の疑いがあり、高値のときはそのほか甲状腺機亢進症、脂肪肝、高血圧症、糖尿病などが疑われます。

異常があったらどうするか?
低値を示したときが重要で、肝細胞での合成能力下低下していることを反映しています。肝臓病であれば、GOT・GPTγ-GTPA/G比ICG試験などの血液検査や、尿ウロビリノーゲン腹部超音波検査腹部CT検査腹腔鏡検査肝生検などを行なう必要があります。

肝硬変では、コリンエステラーゼが正常に回復する望みはありません。また、消耗性疾患(悪性腫瘍末期、低栄養)でも低値になるため、これらの鑑別、確定診断のための検査も重要になります。

異常な場合に疑われること

  • 低値…肝硬変、急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、悪性腫瘍など
  • 高値…ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病、脂肪肝など

 
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