止血作用を担う凝固因子の働きを調べるプロトロンビン時間
血液中にあって止血作用を担う凝固因子のはたらきを調べる検査です。血液凝固因子にはいくつか種類がありますが、そのうちのプロトロンビンと呼ばれる因子を中心に調べるもので、この因子は止血作用において中核的な役割を果たしています。
出血を止めるときは血管壁の穴に血小板がとりついて血栓をつくりますが、この血栓はそのままでは壊れやすいため、いわば糊のようなはたらきをする線維素・フィブリンという物質がくっついて、血栓をより強力に固めます。このフィブリンは血液凝固因子のフィブリノーゲンが変化してできるもので、この変化にプロトロンビンが関わっています。
出血があると、まず肝臓でプロトロンビンが産生され、血管へ送られます。止血作用の途中で、プロトロンビンはほかの血液凝固因子の助けを借りてトロンビンという物質に変化し、このトロンビンがフィブリノーゲンをフィブリンに変えるのです。
プロトロンビン時間を調べると何がわかるのか?
12ある血液凝固因子のうち、血管内で働くもの(内因系)と血管外で働くもの(外因系)がありますが、プロトロンビン時間は外因系の凝固因子の異常を見つけるために行なわれる検査です。
外因系の凝固因子はたん白で、肝臓で合成されます。そのため、肝硬変や肝臓がんなどにより、肝臓のたん白合成能力が低下すると、プロトロンビン時間は長くなるので、肝機能検査の一つとしても測定されます。
心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症、心臓弁膜症、心臓のバイパス手術の時には、抗凝固剤を用いますが、過剰に投与すると血液が固まらなくなってしまい、危険が生じます。そのため、抗凝固剤をどの程度使用したらいいかを調べるための指標としても用いられています。
プロトロンビン時間はどのように測定するのか?
採取した血液の血漿部分に試薬(クエン酸ナトリウム)を入れ、37度の水槽中で凝固するまでの時間を計ります。秒単位のため、数値が狂いやすく、普通は3〜4回繰り返して検査します。
播種性血管内凝固症候群(DIC)では短時間で変動するため、連日調べます。
検査を受けるときの注意
心臓病などの血栓症予防のために抗凝固剤を服用していると、凝固時間が延長しますから、あらかじめ申し出ててください。
基準値
血液が凝固するまでの時間が、10〜13秒なら正常です。
検査結果の判定
15秒以上かかると明らかに異常で、まず第Z因子欠乏異常症などの先天的な病気が考えられます。その場合はさらに、因子一つ一つについて免疫学的な検査をしなければなりません。
また、血液凝固因子のうち第[因子を除く全ての因子は肝臓でつくられているので、肝炎や肝硬変など肝細胞障害の疑いもあります。さらに、心不全、悪性腫瘍、ビタミンK欠乏症、プロトロンビン欠乏症(血液凝固に異常のある病気)などでも凝固時間の延長がみられます。
異常があったらどうするか?
活性化部分トロンボプラスチン時間など、ほかの血液凝固に関する検査を受けます。心臓や脳の病気の抗凝固剤が異常値の原因なら、治療のためなので、心配いりません。
肝硬変などの肝臓病の場合には、ほかの肝機能検査の結果とあわせて診断を下し、その治療にあたります。ビタミンK欠乏症は危険ですからすぐに入院して、その原因を確かめなければなりません。
異常な場合に疑われること
急性肝炎、劇症肝炎、肝硬変、閉塞性黄疸、心不全、悪性腫瘍、ビタミンK欠乏症、プロトロンビン欠乏症、播種性血管内凝固症候群(DIC)など