体液中のイオン濃度を測定し、バランスの崩れを調べて体内の障害を診断
人間の体の約60%は水分で、この水分は細胞内液や血漿などの体液として存在します。体液はさらに、水に溶けて電気を通すミネラルイオンである電解質(ナトリウムイオンや塩素イオンなど)と、水には溶けるが電気は通さない非電解質(ブドウ糖や尿素など)とに区分されますが、ここで検査の対象としているのは前者、つまり電解質です。
それぞれの電解質はバランスをとりながら、人間が生きていくうえで欠かすことのできない重要な役割を果たしています。列挙すれば、「ナトリウム」はからだの水分を調節する働き、「カリウム」は筋肉や神経に関係のある働き、「カルシウム」は骨や歯の形成、神経刺激の伝達、血液の凝固に関係した働き、「クロール」は体内に酸素を供給する働き、を担っています。
電解質を調べると何がわかるのか?
体液中のイオン濃度を測定し、バランスの崩れを調べて体内の障害を診断します。陽イオンと陰イオンは、バランスを保ちながら体液中に存在し、血液の浸透圧を保っており、病気になるとこのバランスが崩れ、体内が酸性になったり(アシドーシス)、アルカリ性になったり(アルカローシス)します。
また、体内の水分量の調節は腎臓が担っているため、腎障害の疑いがあるときにも実施されます。高血圧治療用のカリウムを大量に排泄させる利尿剤を飲んでいる人にもこの検査が必要です。
電解質はどのように検査するのか?
採取した血液を分析器で調べます。
電解質イオンの基準値(イオン選択電極法)
- ナトリウム(Na)…135〜150mEq/l
- カリウム(K)…3.5〜5.0mEq/l
- カルシウム(Ca)…9〜11mEq/l
- クロール(Cl)…95〜108mEq/l
異常があったらどうするか?
血清中の電解質の濃度に異常がある場合は、重い病気にかかっていることが多く、大部分は入院治療となります。また、偏食による異常値なら、食事内容を改善する必要があります。拒食症の場合には、精神科医に相談して治療を受けなくてはなりません。
電解質イオンの濃度のバランスは滅多に崩れるものではありませんが、一度崩れたら生命も危険な状態に陥りますから、すぐに専門医による治療が必要です。
異常な場合に疑われること
- ナトリウムが高値…糖尿病性昏睡、脱水症、クッシング症候群など
- ナトリウムが低値…急性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、心不全、甲状腺機能低下症、アジソン病、糖尿病性アシドーシスなど
- カリウムが高値…急性腎不全、慢性腎不全、アジソン病など
- カリウムが低値…呼吸不全症候群、アルドステロン症、クッシング病など
- カルシウムが高値…悪性腫瘍、多発性骨髄腫、副甲状腺機能亢進症など
- カルシウムが低値…腎不全、副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症など
- クロールが高値…脱水症、腎不全、過換気症候群など
- クロールが低値…アジソン病、慢性腎炎、肺気腫など