骨密度の測定法:閉経後の女性に多い骨粗鬆症の検査
骨に含まれるカルシウムなどの量を骨量(骨密度)といい、骨の強度を表す重要な指標となっています。骨密度が低下すると、骨の中はスカスカの空洞が多くなるため、ちょっとした転倒などで骨折しやすくなります。これが「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」です。
骨の強度には、骨密度だけでなく骨質(骨の質)も重要なファクターとなります。カルシウムが骨質の高い骨をつくるために必要なことは有名ですが、骨中のコラーゲンの量や質も大切です。加齢に伴って、骨に微細なヒビができたり、骨の成分が劣化したりして、骨質が低下すると、骨折しやすくなります。
私たちの骨は、古い骨を溶かす「骨吸収」とそれに替わる新しい骨を作る「骨形成」によって健康な状態が保たれています。このプロセスを「骨代謝」といいますが、骨代謝には女性ホルモンであるエストロゲンが深く関係しています。
そのためエストロゲンが低下する閉経後の女性は骨密度が低下して骨粗鬆症のリスクが上昇します。日本では60歳代で約30%、70歳代で約50%の女性が骨粗鬆症を発症しており、この数字は同世代の男性の約3倍となっています。
エストロゲンの欠乏は骨粗鬆症の大きな要因ですが、その他にも加齢、遺伝的な体質、過度のアルコール摂取、運動不足なども一因と考えられています。その他、糖尿病や関節リウマチ、甲状腺機能亢進症など、他の病気やステロイド剤などの薬が要因となって発症することもあります。
骨粗鬆症は初期の段階では自覚症状に乏しく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病と同じように無症状のまま進行することから「沈黙の疾患」とも呼ばれています。進行すると軽い転倒でも骨折する危険性が出てきます。
また、背骨が圧迫されて潰れる「圧迫骨折」を起こすと、背中や腰が丸くなったりします。若い年代の骨折と異なり、高齢者の骨折は寝たきりの原因となり、認知症にもつながりかねません。
骨粗鬆症は骨密度と骨折の有無によって診断されます。骨密度の測定方法としては、主に以下の3つが行われていますが、自治体が実施している骨粗鬆症検診(40、50、55、60、65、70歳の女性が対象)では、特殊な施設を必要としないこと、短時間で検査が行えること、放射線被爆の心配がなく妊娠中の人も受診が可能などの理由で超音波(QUS)による測定が多く行われています。
DXA法(Dual-energy X-ray Absorptiometry:デキサ法)
2種類のX線を骨に照射し、骨と他の組織との吸収率の差で骨密度を計算します。一般には代謝が盛んな脊椎の一部、腰椎で骨量の変化を測定しますが、大腿骨、手の骨をはじめ、ほぼ全身の骨密度を測定が可能です。
MD法
手の第2中指(甲側)の根元の骨と厚さの異なるアルミニウム板をX線で同時に撮影して、骨とアルミニウムの濃度を比較する方法です。DXAに比べて安価かつ簡便な測定法ですが、感度が低いというデメリットもあります。
超音波法(QUS)
超音波の伝わる速度と減衰率で骨密度を測定する「超音波骨密度測定装置」を利用します。主にかかとの骨を対象としています。足のサイズに合わせて測定位置が調整できる製品や、かかとの幅を自動計測してそれを元に超音波の速度を調整する機能を持った製品なども登場しています。
骨粗鬆症の判定は、個々の年齢に関係なく、どの年代も同一の基準で行います。骨折がない場合、骨密度の数値が成人(20〜44歳)平均値の70%未満で「骨粗鬆症」となり、70〜80%は「要注意」となります。
骨密度の検査は上記の骨粗鬆症検診のほか、人間ドックなどでも実施しており誰でも受診が可能です。しかし、現在の医療保険制度では、骨粗鬆症を疑わせる症状のない人が「骨粗鬆症が不安だから」とか、「骨密度を測ってみたい」という理由だけで、近くの病院の整形外科に行って骨密度の検査を受けることはできません。腰や背中の痛み・曲がり、背が低くなるなど、骨粗鬆症が疑われると医師が判断した時に初めて行われます。
骨密度を正常に保つための基本は「食事療法」と「運動療法」です。骨粗鬆症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウム、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、ビタミンKです。適度に日光に当たることで骨の吸収を良くするビタミンDが活性化されるため、運動は日中のウォーキングなどが最適です。下半身の筋力をつけることで転ばない体作りにもつながります。
骨粗鬆症が進行している場合には、骨折を予防するため、個人のの状態に合わせてビスホスホネート製剤、SERM(選択的エストロゲン受容体調節剤)、カルシトニン、活性型ビタミンD3、ビタミンK2、カルシウム製剤、女性ホルモン製剤などが選択されます。
健康で丈夫な骨を作るために欠かせないカルシウム、ビタミンD、ビタミンK
骨の主成分であるカルシウムは、神経伝達をコントロールしたり、筋肉の弛緩・収縮、ホルモン分泌を調整するなど多くの役割を担っているため、カルシウムが不足すると、骨粗鬆症だけでなく身体にさまざまな変調をもたらします。
厚生労働省では、成人男性は毎日700〜800mg、成人女性は毎日650mgのカルシウムを摂取することを推奨していますが、骨粗鬆症の予防や改善のためには、カルシウムを毎日800mg摂取することが必要とされています。カルシウムは日本人が必要量を摂取できていない唯一の栄養素で、平均摂取量は1日500mgとなっています。
牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品は吸収率の高いカルシウム源ですし、豆腐やおから、納豆などの大豆製品、イワシやシシャモ、ウナギなどの魚も多くのカルシウムを含んでいます。
骨の成分には、カルシウムが多いことは広く知られていますが、カルシウムは体内で吸収されにくいため、いかに効率よく吸収させるかが重要となります。そのポイントととなるのがビタミンDです。
体内に取り入れられたビタミンDは、肝臓や腎臓で活性型ビタミンDに変わるのですが、この活性型ビタミンDが腸からのカルシウムの吸収量を高めてくれます。このビタミンDが不足していると、カルシウムをどんなに摂取しても十分に吸収されないのです。
ビタミンDを豊富に含む食品は、イワシやサンマ、サバ、メザシなどの青魚です。青魚はカルシウムも多いので、丈夫な骨を作るためには大変効率の良い食品といえます。
またビタミンDは食べ物からの摂取以外にも、紫外線を浴びることで皮膚で合成されます。紫外線と聞くと、女性はシミ・ソバカス、日焼けがどうしても気になって直接日光に当たることを避けがちです。自転車等で外出する際には、長袖+手袋+サンバイザーを着用している方も少なくないと思います。
しかし、顔と腕を1日15分日光にあてることで、1日に必要なビタミンDが合成されるとされていますので、せめて腕だけでも日光に当たるようにしましょう。
骨にはタンパク質が多く含まれていますが、カルシウムの骨への沈着を促進したり、カルシウムが骨から流出するのを抑えたり、骨の石灰化を助けるタンパク質にオステオカルシンがあります。
このオステオカルシンの成熟に必要となるのがビタミンKです。そのため、ビタミンKが不足すると骨が脆くなり、骨折しやすくなってしまいます。ビタミンKにはK1とK2の2種類があり、ビタミンK1は、緑黄色野菜や海草に豊富に含まれており、ビタミンK2は納豆などのなどの発酵食品に多く含まれています。