病院の検査の基礎知識

PET検査の4つの利点

近年、PET検査が「がん」の検診や診断の切り札として注目されるようになっていますが、それはPETが従来の検査方法にはなかった以下の4つの特性(利点)を持ち合わせているからです。

一回の検査で全身を調べることができる
CTやMRIでは、まず頭部、消化器など身体のどの部位に病巣があるかの見当をつけてから、その部分だけを撮影します。つまり、疑わしい部位が最初にわかっていないと、ターゲットを設定しにくいという欠点があります。これに対して、PETでは検査薬を注射し、薬が体内の隅々にまで行き渡るのを待って、PETスキャナで全身を撮影できるため、1回の検査で全身をチェックすることができます。

また、一度の撮影で全身を検査できるため、がんが周辺の臓器に広がったり、移転していた場合でも見落とすことなくとらえることができます。そのため、PET検査はがんのステージ(進行度)を診断し、適切な治療計画を立てる目的として、あるいはがんの再発を監視する目的で行われることもあります。

患者さんの身体的な負担が少ない
PET検査の手順は、注射した検査薬が全身に行き渡るのを1時間ほど安静にして待った後、検査台で横になってPETスキャナで30分間撮影するだけですので、患者さんの身体的な負担はほとんどありません。また1回で完了する検査ですので、何度も通院する手間もかかりません。

また、放射線の被曝について心配される方も少なくないと思いますが、一回あたりの被爆量は、胃のX線撮影のおよそ半分となっており、この量は人間が日常生活で、自然界から受ける被爆の量とほぼ同等です。つまり、PET検査はほとんど人体に害がないと考えてもらって問題ありません。

ミリ単位のがんの発見も可能です
従来の画像検査では、一般的に検出されるがんの大きさは1cm程度からといわれています。しかし、多くのがんの場合、1cmになるには10〜20年かかり、1cm以上の大きさになると、増殖速度が上がるため、がんが小さいうちに発見することが重要となります。PETは、細胞の活動レベルを指標に病巣を見分ける検査なので、形態から異常を発見するCTやMRIより小さな病巣(条件が揃えば5mm程度)を発見しやすくなります。

腫瘍が良性か悪性かを識別できます
悪性の腫瘍である「がん」は増殖力が強いため、正常な細胞に比べて3〜8倍ののエネルギー源(ブドウ糖)を必要とします。PETは、ブドウ糖に似た糖に放射性物質を合わせた「FDG」という検査薬の取り込み量から細胞の活動レベルを判別するので、この特性を生かして、腫瘍が良性か悪性かを識別することができます。ただし、PET検査の弱点も存在しますので、決して万能ではないということを知っておく必要があります。

PET検査の弱点:部位によっては病巣の発見が困難な場合も

PET検査の利点では、CTやMRIなどの画像検査に比べて優れた点を4つ紹介しましたが、決して万能であるということではなく、他の検査と同様に弱点があります。

具体的には「PETだけでは病巣の正確な位置がわかりにくい」、「部位によっては病巣を発見しにくい」、「がんの種類によっては発見が困難」の3点を挙げることができます。

PETだけでは病巣の正確な位置がわかりにくい
CTやMRIなどの画像検査と異なり、PETは細胞の活動度を画像化するものなので、映し出される画像がどうしてもピントのぼけた写真のようになってしまうという弱点があります。
そのため、異常が発見されても、正確な位置を把握し、治療を行うためには精密な形を映し出すCTやMRIの併用が必要となります。近年はPETとCTの検査を同時に、しかも短時間(15分)で行なうことができるPET-CTという機器も登場し、導入を進める医療機関も増えてきています。

部位によっては病巣を発見しにくい
PETは、ブドウ糖に似た糖に放射性物質をつけた「FDG」という検査薬がどの程度取り込まれるかによってがんを調べますが、ブドウ糖を大量に消費する脳や心臓、検査薬が対外へ排出される腎臓や膀胱など、がんでなくても検査薬が集まってしまう場所があります。

これらの場所のPET画像は色が濃くなって映し出されるので、周辺部位にがんがあったとしても発見するは困難となります。また、炎症が行っている場所も検査薬の取り込み量が多くなってしまうので、胃炎などが起こる胃なども、がんを判別するのは難しくなります。

がんの種類によっては発見が困難
細胞内にがん細胞が高密度に詰まっていれば、組織全体のFDGの取り込み量が多くなるので、発見は容易ですが、がん細胞が広い範囲にわたって存在している場合は低密度となるため、FDGの全体的な取り込み量が少なくなり、見落としやすくなってしまいます。

また、がん細胞の中には正常細胞と形や機能が似ているものがあります(高分化がん)。例えば、高分化型の乳腺がんや肺腺がんでは、FDGの取り込み量も多くないので、PET検査では発見にくくなります。また、原発性の肝臓がんも酵素の関係でFDGが集まりにくく、PETが苦手ながんとして知られています。


 
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