病院の検査の基礎知識

便に混じって排泄される寄生虫の卵や幼虫を検出します

「寄生虫は過去のもの」と考えている人が多いようですが、そうとは言い切れないのが現状です。たしかに、回虫やコウ虫などの土壌感性性寄生虫疾患は、戦後激減しました。しかし、海外渡航者などが持ち帰る輸入寄生虫症や新しい寄生虫症は、現在増加の傾向を示しています。

アニサキス

寄生虫の多くは、食べ物とともに卵や幼虫の状態で人体に入りますが、これが体内に寄生し、卵やときには幼虫が、便に混じって排泄されます。これらを検出して調べるのが、寄生虫検査です。便を用いてそのなかの卵や成虫を検出する糞便検査、肛門に貼った特殊なテープを調べる方法や、血液で調べる免疫学的検査方法があります。

糞便検査
便の中に虫卵を排出する寄生虫は、便を顕微鏡で観察して、卵や虫体を検出します。このために行なうのが、直接薄層塗抹法や集卵法です。便を肉眼で観察して、寄生虫を認める場合もあります。ある種類の条虫がいると、便のなかに白い片節があったり、ぎょう虫なら表面に糸屑のような成虫が付着していることがあります。

セロテープ肛門検査法
ぎょう虫は夜中に肛門付近に産卵します。特殊なセロテープを肛門に貼って、これで採取した卵を顕微鏡で観察します。

免疫学的検査法
便のなかに寄生虫やその卵が認められない場合に有効なのが、血液で調べる免疫学的検査です。特異性という点で問題があるものの、血液か感染に対する体内の免疫反応を調べる方法です。

代表的な寄生虫と感染症状、検出方法

回虫
卵に混じった便に何らかで触れてしまい、口に入ることで感染します。数が多いと腹痛等の症状が現れますが、通常は症状はあまりありません。便を採取して調べれば虫卵が見つかります。

蟯虫(ぎょうちゅう)
夜間寝静まっている時間帯に肛門の周囲に産卵し、その部分を掻き毟った手で口に触れるなどして感染します。痒みが生じるため睡眠不足になることもあります。肛門の周囲にセロハンテープを押し付けて卵を採取します。

小学生の頃、朝の教室でテープを提出するのが、何故か恥ずかしかった記憶がありますが、小学3年生以下に義務付けられていたこの蟯虫検査も2015年度をもって廃止されることになりました。

アニサキス
寄生虫の感染の多くは、衛生環境が劣悪な開発途上国に発生していますが、刺身や寿司など生魚を使った料理を食べる機会が多い日本人に増えているのが、このアニサキス(写真参照)です。

サケ、サバ、サンマ、スケトウダラ、メバル、イカなどを介して感染し、針で刺したような激しい胃痛、腹痛、嘔吐を引き起こします。新鮮な魚を使った料理は美味しいですが、新鮮な魚ほど寄生しているアニサキスが生きている可能性も高くなります。

アニサキスの感染が疑われたら、胃の内視鏡検査を行いますが、稀に小腸などの胃以外の消化管に感染していることもあるため、採血をして抗体(アニサキスIgG・IgA抗体)を調べることもあります。

肝吸虫(肝ジストマ)
コイ科のモツゴを筆頭に、フナ、タナゴ、ワカサギなどの淡水魚のうろこに寄生しており、これらの魚を生で食べることで感染します。全身の倦怠感、食欲不振、胃の圧迫感、下痢などの症状が現れます。胆管で大量の虫卵が固まって胆石を形成することもあります。

肝吸虫の寿命は非常に長く20年を超えるものも少なくありません。放置していると、腹水や黄疸といった肝障害を引き起こしますので、治療が必要です。検査は便もしくは胆汁を調べます。

エキノコックス
主に北海道で見られる寄生虫で、キタキツネやペットとして飼っているイヌから感染して、肝臓に寄生します。人間が感染した場合は数年から10年以上の潜伏期間を経て、上腹部の不快感や痛み、全身倦怠感、黄疸などの症状が現れます。放置していると、病巣が脳や肺に転移することもあります。

エキノコックスの感染の有無は採血による抗体検査で調べます。感染部位の特定は、肝臓の超音波検査、CT(コンピューター断層法)、MRI(核磁気共鳴画像法)などで行います。


 
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