5mm以下の早期のがんも発見できる上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
一般的に「胃カメラ」と呼ばれているもので、上部消化管X線造影検査(胃のバリウム検査)を行った結果、胃がんや潰瘍が疑われたときに行なう最終検査です。内視鏡には、従来から使われているファイバースコープと、近年開発された電子内視鏡があります。ファイバースコープは細くて柔らかいグラスファイバーを3万本ほど束にしたもので、医師が内部を直接覗き込んで使用します。
一方、電子内視鏡は細い内視鏡の先端に超小型テレビカメラ(CCD)を取り付けたもので、現在はこちらが主流となっています。テレビモニターに映像が映し出されますので、複数の医師が同時に病変を見て、診断・治療を行なうことができるというメリットがあります。
近年では、口の代わりに鼻からスコープを挿入する経鼻内視鏡が、患者への負担が少ない検査として注目されています。
上部消化管内視鏡検査で何がわかるのか?
上部消化管X線造影検査で食道や胃、十二指腸に疑わしい影が見つかった際、その部分の粘膜を直接観察できるため、病変の大きさや形、色、出血の有無までがはっきりとわかり、確定診断に役立ちます。
また、がんが疑われるときには、内視鏡先端部の装置を使って疑わしい組織部を採取し、生検(組織細胞診)を行なえば確実に診断できます。5mm以下の非常に早期のがんもこの内視鏡検査で発見が可能です。
近年、胃がんのリスク要因としてピロリ菌の感染が注目されています。ピロリ菌の検査方法は複数ありますが、内視鏡で採取した胃の組織の中に存在する細菌を培養して調べる「培養法」は、検査精度が最も高くなっていることから、今後、内視鏡の重要度はますます高くなると思われます。
上部消化管内視鏡検査はどのように行なうのか?
検査前に、唾液や胃液の分泌を抑える薬と、胃の運動を抑える薬を筋肉注射し、さらに喉をスプレーで麻酔します。まず、検査台に体の左側を下にして横になり、マウスピースを加えます。先端にレンズの付いた直径7mmほどのファイバースコープを挿入します。先端が喉を通るとき、一瞬息がつまる感じがありますが、通ってしまえばあとは苦痛になりません。
観察、生検(擦過)後、ファイバースコープを通して止血剤を胃の中に散布し、空気を吸引し、ファイバースコープをゆっくり抜いて検査は終了となります。時間はおよそ10〜15分、検査後20分くらいは安静を保ちます。
検査結果の判定
胃がんには、胃の粘膜がくぼんだ形(陥凹型)と、いぼ状に出っ張る形(隆起型)とがあり、また、がんの進行の程度のより早期がんと進行がんに分けられます。
陥凹型のがんがあると、不整形の白い苔のようなもの(白苔)や出血、ひだの乱れなどが内視鏡で観察できます。確定診断は採取した組織を顕微鏡で調べる生検によって下されます。
胃や食道に炎症や潰瘍(写真参照)が認められた場合は、それらを観察することによって、性質や広がり、出血部位などが分かり、治療方針を立てたり、治療効果を判定したりします。静脈瘤は主に出血しやすいかどうかを観察し、出血しそうなときには治療をします。
異常があったらどうするか?
正確な診断のため、上部内視鏡検査の際に採取した組織を用いて、生検が行なわれます。特にがんが疑われる場合は、生検が不可欠となっています。また、病名は確定しても、病変が組織のどの程度の深さまで達しているかは、内視鏡ではわかりません。そのため、超音波内視鏡検査などを行なって総合的に判断されます。
異常な場合に疑われること
食道炎、食道潰瘍、食道がん、胃炎、胃潰瘍、胃がん、食道・胃の静脈瘤、十二指腸潰瘍など