病院の検査の基礎知識

乳幼児の呼吸器症状に気を付けたいRSウイルス感染症

小さな子供の間で毎年秋から春にかけて流行する感染症には、インフルエンザロタウイルス、そしてRSウイルスがあります。インフルエンザは、毎年どのタイプが流行するのかを新聞やニュースで見聞きしたり、予防接種を受ける人も多いですし、ロタウイルスも保育園の集団感染が毎年のように報道されているため、小さなお子さんがいる家庭ではその認知度もかなり高くなっています。

咳による飛沫感染

一方、RSウイルス感染症は成人や年長児の症状こそ軽症で済むものの、乳幼児の致死率はインフルエンザよりも高いとされており、さらに有効な治療薬やワクチンもないのですが、ほとんどの人に認知されていません。

国立感染症研究所の発表によると、2015年の年間累計感染者数は、感染が大流行して過去最高を記録した2014年を上回るペースで増加しており、10月中旬の時点で既に5万6000人を突破しています。

RSウイルス自体は非常にありふれた存在で、日本も含めた全世界の子供のほぼ100%が2歳までに初感染するとされています。そして、感染後も有効な抗体が作られないため、年齢に関係なく再感染・発症を繰り返します。

主な感染経路は、咳やくしゃみをした際の飛沫に含まれるウイルスを吸い込む「飛沫感染」となっていますが、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れる「接触感染」もあります。

RSウイルスに感染すると、2〜8日間の潜伏期間を経て、発熱や鼻水といった風邪とよく似た症状が現れます。ほとんどは2〜3日で自然に治ります、

しかし、RSウイルスに初めて感染した乳幼児のおよそ3割は、激しい咳、喘鳴(ゼーゼーという呼吸音がする)、呼吸困難などの症状が現れます。生後数週間から6か月未満の乳児や低出生体重児、心臓や肺に基礎疾患がある場合、無呼吸発作、急性脳症、肺炎、細気管支炎などの合併症を引き起こすリスクが高くなります。

インフルエンザのような高熱が出ないこともあり、感染に気付かず見過ごされて重症化するケースもあります。子供の呼吸が浅く早くなったり、急にぐったりするようになったら、早急に医療機関を受診しましょう。

小さな子供だけでなく、高齢者も注意が必要です。一般に年長児以降の年齢に達すると、再感染しても鼻風邪くらいの症状しか現れず自然に治りますが、高齢者で入院治療が必要な症例の場合、インフルエンザと同じくらいの致死率があります。

RSウイルス感染症の症状は風邪に似ているため、自分では「最近冷え込んでいるから風邪を引いたかな」程度の認識しかなくても、実はRSウイルスに再感染していて、知らないうちに赤ちゃんを感染させていることがあります。

したがって、乳幼児に日常的に接している人(親、兄弟、保育所の職員など)は、普段から石鹸あるいはアルコール系消毒剤による手洗いを念入りに行いましょう。乳幼児が触れる機会の多いおもちゃ、ベッドの手すりなどはアルコールで消毒することも有効です。咳やくしゃみがでるときは飛沫感染を予防するためにマスクを着用しましょう。


 
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