病変の形状や大きさ、表面の色、出血の様子もわかる大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入し、大腸の粘膜に生じた病変を直接観察する検査で、下部消化管内視鏡検査とも呼ばれています。同時に生検用の組織を採取したり、ポリープ(組織が一部突出・隆起したものの総称)を切除したりすることもあります。近年は、内視鏡を挿入せずにCTで撮影し、画像を3D化する仮想内視鏡検査(大腸3D-CT検査)も登場しています。
大腸内視鏡検査で何がわかるのか?
調べられる範囲は、直腸から盲腸に至る大腸全体で、粘膜に生じた炎症や潰瘍、ポリープやがん、憩室などがわかります。見つかる主な病気は注腸X線検査と同様ですが、病変の形状や大きさだけでなく、表面の色や模様、出血の様子なども詳しく観察できます。また、病変を見つけたら、生検のために組織を採取し、ポリープであればその場で切除(ポリペクトミー)できます。
大腸ポリープには、いくつかの組織タイプがあり、その代表は「腺腫」と呼ばれるものです。良性ですが大腸がんの多くはこの腺腫から発生するとされ、前がん病変と考えられてます。
大腸内視鏡検査は、この大腸ポリープ(腺腫)を発見に最も有効な検査で、観察するだけでなく、その場で切除・治療も出来る点も大きなメリットです。
大腸内視鏡検査はどのような検査か?
通常、検査の前日までは普通に食事をし、当日、下剤として、腸から吸収されない電解質液を飲みます。腸の中を洗い流すようなもので、肛門から出てきる液が透明になってから検査を始めます。
検査を受けるときは、お尻の部分に穴の開いた専用の検査着に着替えます。内視鏡を入れる前の処置は、検査を行う施設によってさまざまで、腸の動きを抑える抗コリン薬の注射は、行う施設も行わない施設もあります。苦痛を防ぐ麻酔の仕方も、局所麻酔(ゼリー剤)を用いる施設もあれば、全身麻酔と潤滑剤を用いる施設もあります。
こうした前処置をしたうえで、内視鏡を肛門に挿入します。直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸の順に大腸の粘膜の具合を詳しく観察していきます。疑わしい場所は、生検のために組織を採取します。
大腸内視鏡って苦痛はないの?
検査中の苦痛が心配になる方も少なくないかと思います。最近の内視鏡は改良がなされ、挿入しやすくなりましたが、苦痛なく盲腸にまで到達する技術を内視鏡医が身につけるには相当の経験が必要です。苦痛を全く感じないまま数分で検査が完了する場合もあれば、かなり熟練した内視鏡医でも、深部に挿入するだけで30分もかかる場合もあります。
検査に手間取ったり、苦痛を感じやすい人の傾向としては、大腸が長い人、過去に腹部手術を受けたことがあって大腸に癒着がある人などが挙げられます。
検査結果の判定
大腸がんは、粘膜にこぶ状の膨らみがみられ、出血をともなう場合があります。進行すると内腔が狭くなってしまいます。ポリープの場合はいぼ状の茎のある突起がみられます。潰瘍性大腸炎は、粘膜に出血をともなう炎症が広がっていて、上皮のはがれたところに潰瘍がみられます。クローン病は大腸の粘膜に潰瘍が広がり、大腸壁に深い溝や穴がみられます。
異常があったらどうするか?
生検の結果、大腸がんがあることがわかれば、がんの大きさや広がりなどと合わせて検討し、治療方針が決められます。大腸ポリープはその場で切除することになりますが、繰り返し発生するので、年に一回は内視鏡検査を受けるようにします。潰瘍性大腸炎やクローン病は、観察結果を参考にして治療方針が決められますので、それに従って治療を進めます。
異常な場合に疑われること
大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、アメーバ赤痢、大腸結核、細菌性腸炎、クローン病など