病院の検査の基礎知識

CTやMRIなど患者負担の少ない画像診断の登場で髄液検査の出番は減少

脳室内や脳脊髄のくも膜と軟膜のあいだにある透明な液体のことを髄液といい、脳や脊髄はこの液体で満たされた空間に囲まれ、さらにその外側を覆う頭蓋骨や脊椎骨によって保護されています。脳へ運ばれた血液が、脳室内の脈絡叢(血管に富む房状のもので脳室に浮いている)分泌されて髄液となります。脳や脊髄に発生した異常はこの髄液に影響を与え、色調に変化が現れたり、液圧が上昇したりします。

髄液検査の画像です

そこで、この髄液を採取して調べて、脳や脊髄の病気や異状を判定するのが髄液検査です。しかし、CTやMRIなどが開発され、患者の苦痛もなく安全に頭蓋骨や背骨の内部まで映し出せるようになった近年では、この検査はあまり行なわれなくなってきました。

しかし、髄膜炎やくも膜下出血が疑われるがCTMRIでははっきりしないときや、さらに詳しく調べるために髄液検査を行ないます。最近は、髄液に含まれる成分を調べることによって、がんの脳転移の有無やその状態までも明らかにできるようになっています。

髄液検査はどのように行なうのか?
ベッドに横向きに寝て、できるだけ背中を丸めます。局所麻酔をして、後ろ腰のところから、第3、第4腰椎の間に針を刺し入れ、硬膜とくも膜を通してくも膜下腔に届かせ、その中にある髄液を採取します。局所麻酔をしていても、多少の痛みはあります。

検査結果の判定
くも膜下腔に針を刺し込んだら、まず液圧を測定します。液圧が高いときには、脳や脊髄の炎症、腫瘍、出血などが考えられ、髄膜炎では特に液圧が高くなります。

次に髄液を採取して、肉眼で色や浮遊物を調べます。健常な髄液は無色透明ですが、白っぽく濁っているときには、髄膜炎、黄色っぽいときには、出血が疑われ、くも膜下出血では真っ赤になります。

さらに含まれている成分を調べます。赤血球が多いときには脳や脊髄のどこかで出血、白血球が多いときには化膿性髄膜炎、リンパ球が増えているときにはウイルス性髄膜炎、ブドウ糖の値が高いときには細菌性髄膜炎で、低い時にはウイルス性髄膜炎や脳炎が、それぞれ疑われます。

タンパク質濃度が高くなると脳炎や髄膜炎など脳や脊髄の病気が考えられます。LDH(乳酸脱水水素)の値が高いと、がんが疑われます。

異常があったらどうするか?
脳や脊髄に病気や異常があるということですから、医師の指示に従ってCTやMRI、血液などの検査を受け、治療を進めます。

異常な場合に疑われること
くも膜下出血、脳や脊髄の損傷、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍、がんの脳や脊髄への転移など


 
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