病院の検査の基礎知識

嫌なニオイの原因は、デリケートゾーンで繁殖している雑菌の老廃物です

ある男性誌(20〜30代が中心読者層)が実施したアンケートによると、約80%の男性が「彼女のデリケートゾーンのニオイが気になったことがある」と回答しています。

パートナーも臭いを気にしています

彼女に直接、「最近、お前のアソコ(デリケートゾーン)臭いよ」と伝えたことのある男性の割合は10%以下でしたが、セックスの時の彼の態度がなんとなくいつもと違うことで、「ひょっとして…私のアソコって臭いの!?」と察して、それ以来セックスに対して臆病になり、彼氏との関係がギクシャクしてしまった人も少なくないでしょう。

また生理中やおりものが多い日は、デリケートゾーンの臭いが気になってスカートやショートパンツが履けなくなったり、外出そのものが億劫になってしまうということも…。トイレでパンツを下ろした時に「モワモワッ!」と悪臭が漂ってきた日なんかは、混雑時の電車、エレベーター、カラオケなどの狭い空間に入るのが怖いですよね (>_<)

悩みの性質上、家族や友人に相談しにくいということもあり、香り付きのパンティーライナーを使ったり、体臭を抑えるサプリメントをコッソリ飲んでみたり、セックスの前にシャワーを浴びてから、ダメ押しにデオドラントスプレーも使うなど、ニオイに対して一人でさまざまな試みをしているようです。

ニオイの原因は、デリケートゾーンで繁殖している雑菌が出す老廃物です。雑菌が繁殖するためには、まずエサとなる栄養が不可欠ですが、デリケートゾーンにはタンパク質が豊富なおりものをはじめ、尿、汗、垢、経血などが存在しています。

またデリケートゾーンにはアンモニア臭の汗を出す「アポクリン腺」という汗腺が密集しているため、汗から嫌なニオイが発生するだけでなく、汗に含まれているアンモニアや皮脂などが雑菌にとって格好の栄養となってしまうのです。

さらに雑菌が繁殖する条件として、"高温多湿"な環境も重要なポイントとなりますが、デリケートゾーンは下着、おりものシート、パンスト、ジーンズなどで通気性が失われて、蒸れやすい状態になっています。つまり、デリケートゾーンは常に清潔に保っていないと、雑菌は簡単に繁殖してしまうのです。

石鹸やビデで洗いすぎると、膣内の善玉菌も洗い流してしまいます

注意が必要なのは、清潔を意識しすぎるあまり、デリケートゾーンを「これでもか!」と念入りに洗っている女性が非常に多いということです。バスタイムに石鹸で洗うのはもちろん、勤務先や外出先のトイレのウォシュレット、あるいは携帯用のビデを頻繁に使用している方もいます。

石鹸の使いすぎで症状が悪化

しかし、念入りに洗って悪臭が完全に消えた、あるいは和らいだという方はごく少数ではないでしょうか? 逆に、おりものが臭い、おりものの量が増えた、膣内が乾燥する、セックスの時の痛みが我慢できない…などの症状が顕著になってきたケースのほうが多いと思います。

デリケートゾーンを「清潔にしなきゃ!」という考え方は正しいのですが、ゴシゴシ洗うのはむしろ逆効果なのです。体の中には「善玉菌」と「悪玉菌」が存在することは広く知られていますが、膣の中にも「デーデルライン桿菌」という善玉菌がいて、膣内を酸性に保ち、細菌の感染からブロックしてくれているのです。

膣を過剰に洗浄すると、膣を守ってくれているこの善玉菌まで流してしまうことになり、自浄作用が損なわれてしまうのです。その結果、膣内は炎症を起こしやすくなり、おりものが増加したり、悪臭がするようになるのです。

そして、悪臭が気になり膣を過剰に洗浄する→善玉菌の減少→自浄作用の低下→雑菌が増殖して炎症を起こす→臭いがますます強くなる→臭いが気になって念入りに洗う…という悪循環に陥ってしまうのです。

膣内の炎症が骨盤内にまで拡がると、骨盤内はうっ血状態となり、おりものの更なる増加にくわえて、腰痛や下腹部痛などの症状もでてきます。ここまで症状が悪化した場合は、婦人科でおりものの検査を受けることをお勧めします。

「アソコが生魚のように臭い」場合は、細菌性膣炎の可能性が高く、単に悪臭が強い(生臭くはない)場合は膣トリコモナス症などの性病の可能性も考えられます。どちらの場合もメトロニダゾール(商品名はフラジール:塩野義製薬)という効果の高い抗菌薬がありますので、医師が必要と判断した場合はこの薬が処方されるはずです。

膣カンジダ症は、おりものが多いという点では細菌性膣炎や膣トリコモナス症と共通しており、また強いかゆみを伴うという点でも細菌性膣炎と似ていますが、悪臭はほとんどありません。自己判断で膣カンジダと決めつけて、以前処方してもらった治療薬(膣錠やクリーム)を使用するのはNGです。

「デリケートゾーンの臭いが恥ずかしい!」からといって婦人科を受診する前にシャワーで洗ったり、香りつきのスプレーを使用したりするのは、普段の状態がどうなっているのかを医師が正しく診断できなくなる恐れがあります。その時間帯のいつもの状態、服装で受診しましょう。

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上記のように性病が原因の場合、婦人科での治療が必要となりますが、デリケートゾーンの臭いの大半は「汗とムレ」や「膣内環境の悪化」によって雑菌が異常に繁殖したことが原因です。ではどのようなケアをすればいいのでしょうか?

ぬるま湯で優しく洗う

お風呂で洗うときは、外側(外陰部)についた尿や汗、便の汚れをお湯で優しく流す程度にしておきましょう。私たちが思っている以上にお湯の洗浄力は強いので、これで充分なのです。それでも臭いが気になる人は、低刺激性の固形石鹸をしっかり泡立てて、指の腹を使ってゆっくり優しく洗うとよいでしょう。

雑菌の栄養となる恥垢(ちこう:分泌物が腐敗してできた垢)は、大陰唇と小陰唇の間にある溝の部分に溜まりやすいので、この部分は特に意識して丁寧に洗いましょう。

市販されている多くの石鹸やボディソープに含まれる「界面活性剤」は刺激が強すぎるので、膣内の炎症などのトラブルの原因となることがあります。また、外陰部の皮膚は刺激に対して敏感なので、擦りすぎると色素沈着による「黒ずみ」の原因となるので注意しましょう。

最近はデリケートゾーン専用の石鹸を使用する女性も増えていますが、もっと優しく膣内をケアしたい方には、膣内を洗浄するジェルが安心です。石鹸は、その殺菌力で直接、雑菌をやっつけるのに対し、洗浄ジェルは、膣本来の自浄作用を取り戻すことで、雑菌の繁殖を抑えることを目的としています。したがって、膣内のちょっとした環境変化に敏感な女性でも、無理なく以前の健康な状態を取り戻すことができます。

日常生活では、汗や尿、おりもの、経血、蒸れによる雑菌の繁殖を防ぐために、清潔な下着を毎日身につけるようにしましょう。高温多湿の夏場は特に蒸れやすいので、下着やナプキンは汚れてなくてもこまめに交換することが大切です。ショーツは通気性が良い綿素材のものを選び、下半身を締め付けるジーンズやストッキングは避けた方がベターです。

ビデは経血で皮膚がかぶれたり、かゆくなったりする生理の終わり頃に1回使う程度にとどめておきましょう。


 
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