病院の検査の基礎知識

ホルモンの分泌具合で、甲状腺の働きと異常(亢進症と低下症)がわかる

喉仏(甲状軟骨)の下の気管の外側についている甲状腺から分泌されるホルモンのことで、エネルギー代謝を調節する重要なホルモンです。甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の作用によって、その分泌が促進されます。

甲状腺

このホルモンが過剰になったり、不足したりすると、甲状腺ホルモンにも過剰や不足が見られるようになります。この検査では、これらのホルモンの分泌機能に異常がないかを調べます。

甲状腺ホルモンは体内のタンパク質合成やエネルギーの代謝、酸素消費などの能力を高める作用があり、その種類はT4(サイロキシン)とT3(トリヨードサイロニン)に分かれます。

しかし、血液中のT4、T3はタンパク質と結合しており、ホルモンとしては作用しないため、逆にタンパク質と結合していないFT4(遊離サイロキシン)、FT3(遊離トリヨードサイロニン)も測定します。

甲状腺ホルモンを調べると何がわかるのか?
甲状腺ホルモンの分泌を見ることによって、甲状腺の働きと異常(亢進症と低下症)がわかります。バセドウ病などに代表される甲状腺機能亢進症は甲状腺腫(喉仏の下が膨張する)で発見されることが多く、暑がり、動悸、原因不明の体重減少、倦怠感、月経異常などの症状が現れます。一方、甲状腺機能低下症ではむくみや便秘、食欲不振、寒がりなどの症状が現れます。

これらの甲状腺の病気が疑われる場合に、甲状腺ホルモンを検査します。また、健康診断などで血液中のコレステロール値心電図に異常がみられた場合にも、甲状腺検査が行なわれる場合があります。

甲状腺ホルモンはどのように検査するのか?
血液を採取して調べます。妊娠中の場合は、数値が変動するのであらかじめ申し出てください。

基準値

  • T4(サイロキシン)…4〜12μg/dl
  • T3(トリヨードサイロニン)…0.7〜2.1ng/dl
  • FT4(遊離サイロキシン)…0.9〜1.9ng/dl
  • FT3(遊離トリヨードサイロニン)…2.5〜4.5pg/dl
  • TSH(甲状腺刺激ホルモン)…0.3〜3.7μU/dl

検査結果の判定
T4、T3が高値の場合は甲状腺機能亢進症が、T4、T3が低値の場合は甲状腺機能低下症が疑われます。必要に応じて、甲状腺組織を採取する生検やシンチグラフィー、X線CTなどの検査も行い、それらの結果を組み合わせて診断が行なわれます。

異常があったらどうするか?
甲状腺ホルモンの測定により、甲状腺機能亢進症あるいは低下症の診断ができたら、ただちに治療を開始します。一般的に、甲状腺機能亢進症の治療では抗甲状腺剤を服用しますが、薬の副作用や甲状腺の腫れなどがある場合には、手術や放射性ヨード剤による治療を行ないます。甲状腺機能低下症を治療するときは甲状腺ホルモン剤を服用します。これらの疾患はともに慢性病ですので、治療は長期に及びます。

異常な場合に疑われること

  • T4、T3が高値…甲状腺機能亢進症(バセドウ病、プランマー病)、亜急性甲状腺炎、TSH産生腫瘍など
  • T4、T3が低値…甲状腺機能低下症(粘液水腫、クレチン病、橋本病)、ヨード欠乏症など

 
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