ガストリンはゾリンジャー・エリソン症候群の診断に欠かせません
胃腸、肝臓、胆のう、膵臓などの機能を調節する消化管ホルモンは約35種類知られていますが、その代表的なものがガストリンです。ガストリンは胃の出口に近い幽門洞(十二指腸とつながる部分)や十二指腸の粘膜の中にあるG細胞と呼ばれる細胞から分泌されています。
ガストリンには胃の分泌機能を刺激する作用があり、胃粘膜の中に分布する壁細胞に働いて胃酸の分泌を促します。すると、胃酸がG細胞に作用してガストリンの分泌を抑制するように働き、そのバランスによって胃酸が適度に分泌されるように調節されているわけです。
逆に、食べ物が胃の前庭部という出口に近い部分を広げるような刺激や、食べ物の中のアミノ酸、アルコールなどの化学物質による刺激があったり、さらに、胃の中のpHが上昇してアルカリに傾いたりすると、ガストリンの分泌が刺激され、壁細胞から胃液が分泌するように調節されます。
血中のガストリンを調べると何がわかるのか?
膵臓や十二指腸、胆管にガストリンを分泌する腫瘍ができるゾリンジャー・エリソン症候群を診断する際に必ず行なわれます。ガストリンが異常に分泌されて極端な過酸の状態になり、胃や十二指腸に消化性潰瘍ができます。治療を行ってもまた多数の潰瘍が再発するという厄介な病気です。
したがって、治療しても治りにくい消化性潰瘍がある場合に、それがゾリンジャー・エリソン症候群なのかどうかを確認するために欠かせない検査となっています。
そのほか、ガストリンが高値を示す病気には萎縮性胃炎、胃潰瘍、悪性貧血などがあり、低値の場合にも一種の胃炎や悪性貧血が考えられます。悪性貧血は、高ガストリン血症が誘因となって起こります。血液学的な検査でも診断は可能ですが、その原因である胃粘膜の萎縮を証明するために、ガストリンの検査が必要となります。
ガストリンはどのように検査するのか?
早朝の空腹時に採血して血液中のガストリンを測定します。通常の血液検査と同じ要領ですので、特に注意することはありません。
基準値
40〜140pg/ml
異常があったらどうするか?
高値の場合はゾリンジャー・エリソン症候群が疑われますが、その診断にはガストリン分泌腫瘍の存在を確認するための腹部CT検査、十二指腸の内視鏡検査、血管造影が必要となります。
腫瘍が確認された場合は、手術による摘出が行なわれます。腫瘍が小さいために上記の検査で発見できない場合は、プロトンポンプ阻害剤を用いて胃酸の分泌を抑える治療を行ないます。
異常な場合に疑われること
- 過酸…ゾリンジャー・エリソン症候群、慢性腎障害、副甲状腺機能亢進症、糖尿病など
- 低酸…萎縮性胃炎、胃潰瘍、悪性貧血など