スマホ等の携帯端末の普及に比例して、ドライアイの患者が急増中
ドライアイとは、眼の表面が乾燥してゴロゴロし、目やに、目のかすみや疲れ、充血するなど、さまざまな症状が出る状態のことをいい、パソコン作業などに従事する人に多く見られます。画面を見つめているときは、まばたきの回数が減るだけでなく、眼球表面から蒸発する涙の量も多くなり、目が乾燥します。コンタクトレンズを長時間使用していても同様の状態になります。
そのほかシェーグレン症候群(目や口腔内が乾燥する自己免疫疾患)やスティーブンス・ジョンソン症候群(角膜が上皮化して皮膚のようになる)なども涙液の分泌障害が起こり、重度のドライアイから視力障害を引き起こすこともありますから、以下のような検査を受ける必要があります。
シルマー試験
シルマー試験とは、涙の量を調べる検査のことで、規格に合った細い濾紙を下眼瞼(まぶた)の中央と耳側1/3位置の中間に引っ掛けて、5分間で濾紙がぬれる長さを測定します。
10mm以上が正常、5mm以下はドライアイの可能性が強くなります。似た検査に、綿糸を用いる方法もあります。
涙液層破壊時間(BUT)
目の表面を覆っている涙が、どのくらいの時間で乾燥し始めるかを調べる検査です。
フルオレセインという色素を点眼し、細隙灯顕微鏡で青色光を用いて目の表面を観察すると、涙に混ざった色素が黄色に見えます。
まばたきを止めて、真っすぐ正面を見ていると、しだいに目の表面が乾いて色素が消える部分が出現します。この時間をBUT(Tear Break Up Time)と呼び、10秒以上が正常、5秒以下ならドライアイの可能性が高くなります。
生体染色検査
目の表面が非常に乾燥すると、黒目の表面(角膜)や白目の表面(結膜)に障害を起こします。特殊な色素を点眼して細隙灯顕微鏡で観察すると、障害を生じた部分が染まって見えます。色素には、前述のフルオレセインや、ローズベンガルという濃いピンク色の色素を用いることもあります。
全身検査
涙の量が非常に少ない場合や、同時に唾液が少なく口の中が乾くといった症状がある場合は、シェーグレン症候群の可能性があるので、血液検査を行なう必要があります。
CRP、赤沈値亢進など炎症反応が陽性であり、高ガンマグロブリン血症が認められた場合は、本症が強く疑われます。また、赤血球も白血球も減る傾向にあり、貧血および白血球減少症は約30〜60%の頻度でみられています。
上記の検査で異常がみられた場合
まばたきの回数が減るために起こるドライアイの場合は、人工涙液やヒアルロン酸配合の点眼薬で涙を補います。市販の目薬を頻繁に使用すると、涙の成分を流してしまったり、分泌量が逆に減ってしまうことがあります。また、含まれている防腐剤によって角膜の表面が余計に傷んで、症状を悪化させる恐れがありますので注意しましょう。
人工涙液を点眼しても自覚症状に改善が見られない場合は、涙が排出される涙点(上涙点・下涙点)にシリコン製のプラグ(涙点プラグ)を挿入して、涙の排出を軽減します。涙には細胞成長因子であるタンパク質やビタミンなどの重要な成分を含んでいます。
これは人工涙液では補うことはできません。涙点プラグを挿入することで、栄養を含んだ自分の涙で眼を潤すという点で優れた治療法といえます。涙点プラグは、安全に挿入でき涙点の測定から挿入まで短時間でできますので外来での処置が可能です。保険が適用されますので、費用は3割負担の方で3500円くらいが一般的です。
ドライアイと診断された人やコンタクトレンズを装用している人は、意識的にまばたきの回数を増やすようにしましょう。疲れや乾きなどの自覚症状を感じたら、ディスプレイから視線をはずして、しばらく目を休ませたり、遠くをみるようにするとよいでしょう。