病変の一部や細胞を採取して、悪性か良性かを判別します
一般的な健康診断で実施されることはありませんが、婦人科検診やレディースドックなどでは、必ず実施される項目です。そもそも、細胞診とは、体内に病変部が見つかった場合、その細胞が悪性か良性かを見分けるために行なわれる検査で、病変部の一部や細胞を採取して、この細胞を染色して正常なものと比較することによって診断を行なう検査のことです。
婦人科における細胞診は、子宮膣部のびらん面やその周囲の細胞を綿棒やスパーテル(木へら)で擦り取り、ガラス板に塗布して、パパニコロウ染色と呼ばれる専用の染色(各細胞に色を付けて見やすくします)を行なって顕微鏡で観察します。細胞診は痛みは全くなく、数秒で終わります。
また近年、増加傾向にある子宮体がんの細胞診では、子宮の内部へ届く専用の細長い器具を入れて細胞を採取します。子宮頸部の管状部分が狭い方(未産婦の方、閉経後の方など)の場合は、器具を挿入する際に多少痛みを感じることもあります。
検査を受けるときの注意
月経時に検査を行なっても、細胞の採取がきちんと行なわれていれば良性・悪性の判定はつきますが、出血が多い場合は、細胞の採取そのものが上手くいかないことが多くなります。
また赤血球に紛れて疑わしい細胞が隠れてしまうこともあり、異型細胞を採取し損ねる可能性も出てきますので、月経が終わった後に検査を受けるとよいでしょう。
検査結果の判定
細胞診の結果は日本では下記のようなTからXまでの数字で分類されています。
- T…正常です。
- U…異常細胞を認めるが良性です。
- V…悪性を疑うが断定できない段階です。
- Va…悪性を少し疑います。軽度・中等度異形成を想定します。このクラスから5%程度にがんが検出されます。
- Vb…悪性をかなり疑います。高度異形成を想定します。このクラスから50%程度にがんが検出されます。
- W…きわめて強く悪性を疑います。上皮内がんを想定します。
- X…悪性です。浸潤癌(微小浸潤癌を含む)を想定します。
異常があったらどうするか?
子宮頸部の細胞診でVa〜bの場合は、コルポスコープ診(膣拡大鏡検査)を行い、子宮頸部異常病変の存在部位や異常の程度を把握し、前がん状態やがんと思われる部位の一部を採取する生検(バイオプシー)を行なって確定診断をつけます。がんの場合は、進行期を判断したり、生殖器以外に転移していないかを調べるために内診、直腸診、超音波検査、CTやMRIなどの画像検査、膀胱鏡検査、大腸鏡検査などを行ないます。
一方、子宮体部の細胞診でVa〜bの場合は、子宮内膜組織診という生検をおこないます。最近では診断のために経膣超音波検査を行ない、内膜が厚い場合には子宮体がんを疑います。
超音波検査は痛みなどは全くなく、内膜細胞診の器具が入らない、子宮口が閉鎖した閉経後の患者さんの場合に特に有用です。また、子宮の奧を詳しく調べるため、子宮鏡(ヒテロスコープ)を用いて、病変やその広がりを観察する場合もあります。
近年では、子宮がんの治癒率が非常に良好になってきており、Va〜bの段階(上記の細胞診の判定基準です。がんの進行ステージではありません)で発見できれば、ほとんどは治癒できます。
一方では難治性の進行がんも依然として存在しますので、罹患率が上昇する30歳以降は年に一度は子宮がん検診を受けるようにしましょう。
異常な場合に疑われること
子宮体がん、子宮頸がん、子宮内膜症、子宮筋腫など