病院の検査の基礎知識

膣口が細菌感染で赤く腫れ上がり、強い痛みが出るバルトリン腺炎

膣口の両側、つまり小陰唇の内側の下で開口している長さ2cm程度の分泌腺を「バルトリン腺」といい、性的興奮時に分泌液を出す働きを担っています。この分泌液が膣の分泌物と交わることで膣口周辺が潤い、セックスでペニスがスムーズに挿入できるのです。男性の方は、カウパー腺の女性版と考えるとわかりやすいかもしれません。

感染を再発する女性が多い

このバルトリン腺に細菌が感染して、局部が化膿で赤く腫れたり、ズキズキとした強い痛み、熱感といった炎症症状が現れるのが「バルトリン腺炎」です。バルトリン腺炎はセックスとの関連が深く、性成熟期の女性ならば年代を問わず発症します。

バルトリン腺炎を引き起こす原因の多くは大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などです。以前は淋菌による発症例が多かったのですが、近年はあまり見られなくなりました。そのほかクラミジアカンジダトリコモナスなども原因となります。

炎症が進行すると、分泌腺の開口部が詰まって、分泌液が体外に排出されずに袋が形成されることがあります(バルトリン腺胆胞)。この嚢胞の中で細菌が繁殖すると膿ができて赤く腫れ上がります(バルトリン腺膿腫)。腫れの程度は、小指の先くらいの大きさで済む人もいれば、ピンポン玉やゴルフボールのように大きく腫れる人もいます。

この段階になると痛みも強くなり、座ったり、歩いたり、セックスにも支障をきたすようになります。発熱を伴うこともあります。また、腫れた部分が破れて、膿が外に出てくることもあります。

医師による視診・触診だけでおおよその診断はつきますが、原因菌を突き止めるため、分泌液を綿棒で採取して培養する検査も行われます。化膿の前後によって治療法は異なります。化膿していない段階であれば、抗生物質の処方だけで治療が可能ですが、既に化膿を起こしている場合は、患部を切開して膿を出したり、注射器で膿を吸い出す処置が必要となります。

切開などで膿を出してしまえば、すぐに直りますが、バルトリン腺は菌が侵入しやすい場所にあるため、何度も再発を繰り返す人もいます。再発を完全になくすために、膿がたまらない手術、あるいはバルトリン腺自体を取り除く手術も選択肢としてはあります。ただし、摘出手術を行うと性的興奮時の分泌機能も失われるため、セックス時の痛みが強くなるリスクもあります。

治療後、また予防として日頃から心掛けたいのは、陰部を清潔に保つこと、不特定多数の相手とセックスをしない、コンドームを着用すること、などです。淋菌などが原因で発症した場合、パートナーの男性が感染していると、女性がせっかく治療を完了しても再発を繰り返す可能性があります。双方が医療機関を受診して、治療を並行して進めない限り、本当の意味で治療をしたことになりません。


 
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