PEMの登場で医師の読影技術に左右されずに高精度の乳がん診断が可能に
女性のがん部位別罹患率1位の乳がんは若い世代にも増えています。乳がんを発見するための検査としては、乳房を専用の装置で挟んだ状態でX線撮影を行うマンモグラフィー、乳房に探触子(プローべ)をあて、超音波の反響を映像化してモニターに映し出す乳腺超音波(エコー)検査などが一般的に行われていますが、2011年に国内で導入されて以来大きな注目を集めているのが、PEM検査(乳房専用PET)です。
PEMもPET検査と同じく、がん細胞が増殖に必要とするブドウ糖の量が正常細胞よりも多いという特徴を利用した検査方法です。
ブドウ糖に似た放射性薬剤(FDG)を静脈に注射し、薬剤ががん細胞に集中するところを画像化することで、がんの有無は勿論、その悪性度やどれくらい転移しているのかも把握することができます。
通常のPET装置よりも小さながんを検出できるのが、PEMの大きな特徴の一つで、1cm未満のがん検出率は25%から63%に向上しました。マンモグラフィーが5mm以上の腫瘍を発見するのに対し、PEMはがん細胞ができ始めの段階である1.5mmという微小な腫瘍も発見することができます。
PEMもマンモグラフィー検査と同様に乳房を専用の機器で固定して撮影を行いますが、乳房にかかかる圧は約1/3に軽減されていますので、痛みや苦痛はほとんどありません。
昔に比べて乳がん患者さんに若年化の傾向が見られる今日では、一番多い患者さんの年齢層は40歳代となっています。この年代の方の乳房は乳腺が多く存在しているため、マンモグラフィー検査ではがんが隠れてしまうケースがあるため、医師や放射線技師の経験と技術の差が診断の精度を左右するという課題がありました。PEMならそういう心配もありません。
PEMは2013年7月から保険適用となったため、これから全国の医療機関に広く普及していくものと思われます。乳がんは1箇所だけに発症するのではなく、同時多発していたりもう一方の乳房にも発症していることもあります。PEMは対側乳房も含めて広範囲の撮像が可能です。
ただし、PEM単独で完全な画像診断ができるというわけではなく、マンモグラフィーやMRIと互いに補い合う相補的なものです。PEMでは、乳房の炎症や一部の良性腫瘍でもFDGの集積がみられます。また、組織型によってはFDGの集積が低いためがんの検出ができない場合もあります。
従来のマンモグラフィーや超音波検査、MRIなどとPEM検査を併用することにより、より精度が高く的確な乳がんの診断が可能となります。