病院の検査の基礎知識

「胃がんリスク検診」として活用されるペプシノーゲン

ペプシノーゲン(PG)は、胃粘膜から分泌されるペプシンの前駆物質のことで、血清中に含まれています。ペプシノーゲンは、胃酸の働きによってタンパク質を分解する酵素ペプシンになります。胃のどの辺りで分泌されるかにより、ペプシノーゲンTとUに分類されます。

検査は簡単

ペプシノーゲンを調べると何がわかるのか?
血液中のペプシノーゲンのUに対するTの割合を調べると、胃粘膜の萎縮の広がりとその程度、胃液の分泌機能、胃粘膜の炎症の有無が分かるほか、胃がんのスクリーニング検査として有用であることが明らかとなり、注目されています。「血液検査による胃がん検診」とも呼ばれています。

また、ピロリ菌に感染していると高値を示し、除菌されると正常値(T値70以上、かつT/U比3以上)になるので、除菌治療の効果を判定するのに役立つと期待されています。

ただ、ペプシノーゲンT/U比にも欠点はあり、萎縮と関係なく発症する未分化型腺がんや、間接X線法では容易に診断できる進行がんが逆に見逃されると言われています。そこで近年では、ペプシノーゲンT/U比でスクリーニング(ふるいわけ)を行ない、陽性になった人は上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)による精密検査を受け、陰性者は従来の胃X線検査を受けるという方法が最適であると考えられています。

横須賀市(神奈川県)や三鷹市(東京都)などの一部の市区町村では、ピロリ菌の抗体検査とペプシノーゲンを調べて、胃がんのリスク分類(A・B・C・D群)を行い、「要精密検査」と判定を受けた人だけが内視鏡検査を受ける「胃がんリスク検診」を一部公費負担して実施しています。この検査方法は、通称「ABC検診」とも呼ばれています。

市区町村が実施する検診ではなく、最寄りの医療機関でも胃がんリスク検診を受けることができます。検査費用(2,500〜5,000円)は健康保険が適応とならないため、全額自己負担となります。

ペプシノーゲンはどのように検査するのか?
採血した血液を測定用キットで調べます。血液を数cc採取するだけの非常に簡便な検査です。

検査を受けるときの注意
胃や十二指腸の疾患が強く疑われる症状(みぞおちの痛み、嘔吐、血便、体重減少など)では、この検査を受けずに、最初から上部消化管内視鏡検査などの精密検査を受けた方がよいでしょう。また、胃酸分泌抑制剤の中で、プロトンポンプ阻害剤を内服中の人は、ペプシノーゲンが高値になりますので、この検査は適していません。

陰性と陽性の判定基準
検査の数値によって、陰性・陽性は次のように分類されます。

  • 陰性…T値70以上かつT/U比が3以上。
  • 陽性…T値70未満かつT/U比が3未満。
  • 中等度陽性…T値50未満かつT/U比が3未満。
  • 強陽性…T値30未満かつT/U比が2未満。

検査結果の判定
陽性であれば胃粘膜に萎縮があると考えられ、萎縮性胃炎、胃がんが疑われます。ただ、この検査だけで、胃がんと判定することはできないので、胃X線検査上部消化管内視鏡検査などの画像診断との併用が基本になります。一方、陰性でその数値が高い場合には、胃液の分泌が多いと考えられ、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、ピロリ菌の感染が疑われます。

異常な場合に疑われること
胃がん、萎縮性胃炎、ピロリ菌感染、胃・十二指腸潰瘍など


 
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