病院の検査の基礎知識

頭部MRAは脳動脈瘤のスクリーニング(ふるいわけ)として有用

磁気共鳴という物理現象を応用して体内の水素原子核からの信号をとらえ、頭部の断面を画像化する検査法を頭部MRI(磁気共鳴画像診断)といいます。この原理を利用して、頭部の血管の様子を詳しく立体画像化するのが、頭部MRA(磁気共鳴血管造影)です。コンピュータグラフィックの進歩により、画面上で方向を変えて三次元に画像を表示することが出来ます。脳ドックでは、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤のスクリーニング(ふるいわけ)検査として行われます。

頭部MRA

「血管造影」という名前がついていますが、この検査では造影剤の必要ありません。また、頭部CT検査と異なり、X線による被爆の心配もありませんので、まったくの無侵襲(からだを傷つけない)で脳の血管の状態を知ることができます。

頭部MRA検査はどのように行なうのか?
MRI装置を設置した特別な検査室で行ないます。ベッドに横たわった受診者の頭部を、ガントリーという大きな筒状の装置の中へ移動させ、そこに強力な磁気をあてます。
耳元で「ゴンゴン」と工事現場を髣髴とさせるような金属コイルの振動音がしますが(耳栓は全く役に立ちません)、痛みもなく、短時間で終了します。

検査を受けるときの注意
被曝の心配はありませんが、強い磁場の中に入りますので、妊娠している可能性のある方は検査を受けることはできません。また、ペースメーカー、人工関節、手術用クリップなど体内に金属が入っている方は、検査ができない場合がありますので、あらかじめ申し出て下さい。

検査結果の判定
血流の閉塞や狭窄などの異常がみられる場合、脳動脈瘤や閉塞性動脈疾患、脳動脈奇形などの脳血管障害が疑われます。MRAだけでは細い血管までは判別しにくいので、確定診断のために、造影剤を用いる頭部血管造影3D-CTA(三次元脳血管造影)が行われることもあります。歌手の徳永英明さんが発病された「もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)」もこの検査を受けることにより、脳底部の異常血管網を確認することできます。

なお、脳血管障害(脳卒中)は高血圧、心臓病、糖尿病といった全身の病気や代謝異常が危険因子となりますので、頭部MRIやMRAによる検査で異常が認められないだけでは、不十分ともいえます。

脳ドックで脳血管障害の予防や脳腫瘍の早期発見などを目指すのであれば、それらの疾患をスクリーニングする血液検査や心電図検査眼底検査などが最低限必要となります。

異常な場合に疑われること
脳動脈瘤、脳梗塞、脳動静脈奇形、もやもや病、閉塞性動脈病変など


 
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