病院の検査の基礎知識

糖尿病予備軍を早期発見する手がかりにもなる血中インスリンの測定

インスリンとは膵臓のランゲルハンス島(β細胞)から分泌されるホルモンのことで、免疫活性インスリン(IRI)とも呼ばれています。ブドウ糖が細胞に取り込まれ、エネルギーを作るときに欠かせない重要なホルモンです。

血液中の濃度を測定します

健康なときはインスリンの供給と消費のバランスがとれていて、血糖は常に一定の濃度に保たれています。インスリンが不足したり、インスリン抵抗性が高くなると、糖分がエネルギーとして利用されなくなり、血糖値が上昇します。

血液中の免疫活性インスリンの量やブドウ糖負荷試験の結果などとあわせると、β細胞のインスリン分泌能力や、インスリンがどの程度作用しているか(インスリン反応)を知ることができます。

血中インスリン活性を調べると何がわかるのか?
糖尿病の検査法として代表的なものは血糖の検査ですが、甲状腺機能亢進症や肝臓病、副腎皮質ホルモン剤の服用などでも、血糖値が高くなることがあります。そのため、高血糖の原因が紛らわしい場合は、血中インスリン活性検査でほかの病気と鑑別します。境界型の糖尿病、つまり糖尿病予備軍を早期発見する手がかりにもなります。

糖尿病かどうかの判断が微妙な人に対する最終判断として、または糖尿病の人の治療方針を立てるための精密検査として行われます。

血中インスリン活性はどのように調べるのか?
ブドウ糖液を飲んで血糖値を調べるブドウ糖負荷試験の際に採血が行われますが、併せて血液中のインスリン濃度の変化を測定します。

基準値

  • 空腹時…15.1μU/ml以下
  • GTT30分値…0.5△IRI/△BS

ブドウ糖液を飲んで30分後のインスリン分泌状態が重視されます。30分後の血中インスリン濃度が飲む前に比べてどれだけ増加しているか、そしてそれは血糖の増加分と比較してどの程度かを調べて判定します。

検査結果の判定
空腹時が低値の場合は、1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)が、空腹時が正常でブドウ糖負荷試験の2時間値が低い場合には、2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)が考えられます。

肝硬変になると、インスリンの分泌量に変化がなくても、作用が低下して上昇することがあります。また、慢性膵炎などによる膵臓β細胞の障害や、糖尿病の進行でインスリン分泌量が低下すると低値となります。コルチゾール成長ホルモンの減少でも低値となります。

異常があったらどうするか?
高値でも低値でも、糖尿病の検査を行なう必要があります。糖尿病がないときには、考えられる病気についての検査を行ないます。

異常な場合に疑われること

  • 高値…2型糖尿病の一部、インスリンノーマ、肥満、肝疾患、クッシング症候群、末端肥大症、異常インスリン血症、インスリン自己免疫症候群など
  • 低値…1型糖尿病、2型糖尿病の一部、下垂体副腎機能低下症、膵炎、低血糖など

 
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