狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患の検査で、一般的に実施されているのは負荷心電図検査ですが、偽陽性など診断のグレーゾーンが大きく、虚血(組織に血流が足りなくなった状態)があるかどうかを最終的に確定するのが難しいという欠点がありました。
そこで、これまでは患者さんにPCI(カテーテルを使って狭窄または閉塞した冠動脈を開き、血行を再建する手術)を実施するかどうかを判断するために、心臓カテーテルを使った冠動脈造影検査が行なわれてきました。この検査は患者さんへの体の負担も大きく、入院が必要ですが、血管の鮮明な画像が得ることができますので、冠動脈の度の部分に、どの程度の狭窄があるかがはっきりとわかります。
しかし、最近の大規模な調査では、形として狭窄が見られても、心筋の虚血はなく、狭窄もそれ以上進まず安定しているタイプが多く、こういう狭窄部分をPCIで広げても、予後の改善は見られないという結果が出てきました。そのため現在のガイドラインでは、狭窄があっても虚血のないものはPCIをしないことになっています。
こうしたガイドラインの下で、PCIの適応を判断する検査法として最重視されるようになったのが心筋血流SPECT(単一光子放射型断層撮影装置)です。
標識として放射性同位元素(RI)を付けた薬剤を静脈注射し、一定時間後に心筋内のRIが放射するγ(ガンマ)線をガンマカメラで検出して断層画像化します。
血流が正常な部分にはRIが集積し、虚血部分にはRIの集積が少なくなるので、その差で虚血部分がどこかを診断することができます。負荷心電図と心筋血流SPECTで診て、虚血がなければ、経過観察をします。この方法だと、患者さんに負担の大きい冠動脈造影検査を省くことができるというメリットがあります。
またPCIの実施後に心筋血流SPECTで再検査をすれば、治療の結果、心筋の血流が正常になったかどうかを確認することも可能です。このように狭心症、心筋梗塞の診断、治療の多くの局面で欠かせない役割を担っています。2000年以降は進化した心電図同期心筋血流SPECTが普及してきています。