狭心症や心筋梗塞、虚血性心臓病の診断と治療に用いられます
心臓の周囲を取り巻いている動脈を冠動脈といい、心臓の筋肉に酸素や栄養を運ぶ重要な役割を果たしています。冠動脈造影検査とは、カテーテル検査のひとつで、カテーテル(細い管)を挿入して造影剤で左右の冠動脈を造影して血管の状態を調べたり、血管を広げるための治療などを行ないます。
冠動脈造影検査で何がわかるのか?
冠動脈の動脈硬化が進行すると、血管の内腔が狭くなったり(狭窄)、狭窄した血管に血栓が詰まって、心筋に十分な酸素や栄養が届かなくなります。すると、心筋の一部が壊死してしまい、狭心症や心筋梗塞を引き起こしてしまいます。
狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患がある場合、冠動脈造影によりX線を透過した画像がモニターに映し出されるので、画像を見ながら血管の狭窄や閉塞の状態、血管の流れを確認し、必要があれば治療が行なうことができます。
最近は冠動脈造影をマルチスライスCTでおこなえるようになりました。腕の静脈に造影剤を注射し、64列CTで心臓を撮り、その後画像処理で冠動脈を描出します。検査時間は10秒間息を止めるだけですが、どちらの検査でも副作用として放射線被爆と人によって起こりうる造影剤アレルギーがあります。
冠動脈造影検査はどのように行なうのか?
検査目的と治療の一環として行なわれる場合があります。検査前日あるいは当日入院で、2〜3日間の入院が必要です。検査を受ける前には胸部X線検査、心電図検査で全身の異常をチェックしておく必要があります。
また、血液の凝固機能を調べるために出血時間やプロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、血小板数などの血液検査も行なわれます。さらに、ヨード系造影剤へのアレルギー病歴の有無も確認されます。
手術着に着替え、検査台に仰向けになり、カテーテルを挿入する部位を消毒します。
最近は、とう骨動脈からカテーテルを挿入する(ソーンズ法)ことが多いですが、ときには上腕動脈や大動脈を穿刺してカテーテルを挿入する(ジャドキンス法)こともあります。
カテーテルを上行大動脈から左心室、冠動脈入口部まで送り込み、造影剤を注入して、冠状動脈を映し出します。穿刺する部位には局所麻酔を行ないますので、カテーテルを挿入するときには痛みはありませんが、造影剤を挿入するときには熱く感じられます。検査時間は1〜2時間です。
冠動脈造影で行なわれる治療
カテーテルを用いた冠動脈血管形成術は、カテーテルで病変部位に治療器具を進め、病変部の血管を広げたり形成したりする治療です。冠動脈血管形成術には、以下のようなものがありますが、バルーンとステントによる治療が中心となっています。ときに、ローターブレーターやDCAなどが行なわれることもあります。
バルーン
先端にバルーン(風船)のついたカテーテルを冠動脈内に進め、病変部でバルーンを膨らませて血管を広げます。最近では、バルーンで血管の内腔を拡張した後、病変部が再狭窄するのを防ぐためステントを使用することが多くなっています。
ステント
ストントとは冠動脈内に留置して、血管を内側から支えたり、広げたりする金属製の管です。
ステントはバルーンで覆われた状態で病変部までカテーテルで運ばれ、病変部でバルーンを膨らませてステントを広げ、血管内に留置されます。
ローターブレーター
バルーンなどで拡張が難しいかたい病変などに使用されます。高速回転するドリルで、正常な血管壁を傷つけないようにして、かたい動脈硬化病変を削り取っていきます。
DCA(方向性アテレクトミー)
血管の内腔に進めたカテーテルの先端の、窓のような穴が開いた金属性の筒の中を、カッターが回転しながら前後に動き、窓の中に入る動脈硬化病変を削り取る治療です。
異常な場合に疑われること
狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤など