大腸がんやポリープのスクリーニングに有効な便潜血反応
口から食道、胃腸を経て肛門まで続く長い消化管のどこかに出血があると、便に血液が混じります。出血が多ければ見るだけで判断ができますが、出血が微量だと肉眼ではわかりません。そこで、採取した便に試薬を混ぜ、その変化で血液の混入判定を行なう検査が便潜血反応です。
従来は、血液中のヘモグロビンが酵素の働きで青く発色することを利用した、化学的潜血反応が行なわれきました。しかし、この方法は、食物中の動物の血液や野菜の成分などでも反応する(偽陽性)ため、食事制限が必要で、判定精度に問題がありました。最近では、人のヘモグロビンだけに反応する免疫学的潜血反応という方法と併せて行なわれ、偽陽性は少なくなっています。
便潜血反応で何がわかるのか?
消化器にがんや潰瘍などの消化器病がある場合には、しばしば出血をして便に血が混じるため、便に混じった血液を検出することによって消化器の病気を見つけることができます。特に、大腸がんやその前駆症である大腸ポリープのスクリーニング(ふるいわけ)検査として重要で、大腸がん検診の際に実施されます。近年では、より精度が高い仮想内視鏡検査も注目されています。
便潜血反応はどのような検査か?
検査方法には以下の2種類があります。
化学的潜血反応
便に試験紙をつけて変色具合で判定します。しかし、肉や魚、緑黄色野菜などを食べると偽陽性(±)となりやすいため、検査前は食事内容が制限されます。また、貧血治療用の鉄剤などによっても陽性の反応が出てしまいます。主に胃などの上部消化管の出血を調べるための検査です。
免疫学的潜血反応
ヘモグロビンに対する抗体を使用して潜血の有無を調べます。食事制限はありませんが、胃や食道からの微量出血だと、陰性になるケースもあります。この方法は、下部消化管の出血の検出に向いています。とくに大腸がんのスクリーニング(ふるいわけ)検査として広く用いられており、連続2日検査すれば、進行がんでは90%、早期がんでは50%が発見できるという報告があります。
異常があったらどうするか?
陽性のとなったときは、主に消化管の潰瘍やポリープ、がんからの出血を疑います。たとえば胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃ポリープ、大腸ポリープ、胃がん、大腸がんなどです。ただし、しかし、消化管出血がなくても鼻血や歯茎の出血、痔などの影響で陽性となる場合もあります。
再検査をして再び陽性となったときは、大腸内視鏡検査、胃部X線検査や上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)などさらに詳しい検査を行なって、病気の位置や種類、程度などを確認しなければなりません。
異常な場合に疑われること
食道や胃の静脈瘤、食道がん、胃がん、胃潰瘍、大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室、直腸がん、痔、胆石、すい臓がん