中性脂肪が高いと心筋梗塞や脳血管障害の原因となります
中性脂肪(TG:トリグリセリド)とは、体内にある中性脂質、リン脂質、糖脂質、ステロイドの4種類の脂質の一種です。中性脂肪は、砂糖などの糖質(炭水化物)、動物性脂肪を主な原料として肝臓でつくられます。食事でこれらを多く摂りすぎると、皮下脂肪の主成分として蓄積されます。
人間の体が活動するとき、第一のエネルギー源となるのはブドウ糖ですが、不足してくると、貯蔵されていた脂肪が分解されて再び血液中に放出されてエネルギーとして使われます。
しかし、血液中の中性脂肪やコレステロールが増えすぎる(脂質異常症)と、動脈硬化の危険が高まります。日本人の場合は、心筋梗塞の人のコレステロール値はそれほど高くなく、中性脂肪が高値を示す例が多いといわれています。
中性脂肪で何がわかるのか?
中性脂肪が余分になり血液中に増加してくると、動脈硬化を進める一因になります。そのため、中性脂肪の測定は、動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)を予防するために重要です。中性脂肪の値が高い場合には動脈硬化の危険度が高く、低い場合には栄養障害やそれを引き起こす病気が考えられます。
中性脂肪はどのように検査するのか?
血液を採取して調べます。酵素の試薬を使って検出します。
基準値と変動の範囲
中性脂肪の基準値30〜149mg/dlですが、一回だけではなく複数回の測定を行なったほうがよいでしょう。中性脂肪値は食後30分ぐらいから上昇し始め、4〜6時間後に最も高くなります。測定する時間によっても変動が大きいため、検査は早朝空腹時に行ないます。
検査結果の判定
日本人間ドック学会の判定基準では、中性脂肪値が150〜249mg/dlの場合は、要経過観察、250mg/dl以上の場合は、精密検査または治療が必要だとしています。
中性脂肪値が高いのは脂質異常症(旧名:高脂血症)です。中年以降の男性でこの病気と診断される人の4割は、中性脂肪値の異常高値によるもので、たいてい肥満がみられます。
中性脂肪だけでなくコレステロール値も高い場合は、動脈硬化症、糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群などが疑われます。
中性脂肪値が1000mg/dl以上の場合は、急性膵炎を起こしやすいので治療が必要です。中性脂肪が低値の場合は、肝臓病、アジソン病、甲状腺機能亢進症などが疑われます。
異常があったらどうするか?
中性脂肪値が高値を示す人の大半は、肥満や食べすぎ、運動不足、飲酒によるものです。この状態が続くと、心筋梗塞、脳血管障害など、動脈硬化症の病気の原因になりますので、中性脂肪を家庭でコントロールすることが大切です。
飲酒している人は禁酒するか、週2回程度に節酒します。肥満や運動不足の人は、運動する習慣をつけ、脂肪や糖質(炭水化物)の多い食事を控えるなどといった努力で、たいてい改善できます。正しい食事療法を行なうだけでも、中性脂肪を約30%も減らすことができますので、頑張りましょう。
異常な場合に疑われること
- 高値…脂質異常症、糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、肥満、肝障害など
- 低値…甲状腺機能亢進症、肝臓病、アジソン病、栄養障害など
中性脂肪を下げるために大切な運動と食生活のポイント
運動は、大きく分けると「無酸素運動」と「有酸素運動」の2つがあり、メタボ改善やダイエットに有効としてテレビや雑誌等で紹介されているのは、「有酸素運動」のほうです。
有酸素運動とは、呼吸によって酸素を取り込みながら時間をかけて、ゆっくりと力を出す運動のことです。具体的には、早足による散歩、ジョギング、サイクリング、水泳などが該当します。
有酸素運動を行うと、まず血流がよくなります。血流がよくなると、リポタンパクリパーゼという酵素が筋肉内で活発に働いて、中性脂肪を運んでいるリポタンパクが分解されやすくなるため、中性脂肪が下がります。
中性脂肪が下がると、善玉のHDLコレステロールが増えます。さらに運動を続けると、徐々に悪玉のLDLコレステロールが減り、総コレステロールも低下することが分かっています。
そのほか、有酸素運動には、血行をよくすることで血圧を下げる効果もありますし、インスリンの働きをよくして糖尿病も改善してくれます。有酸素運動を行うことで、脂質異常、高血圧、糖尿病といった動脈硬化の危険因子が改善されますので、心筋梗塞や脳卒中などの予防にもつながります。
ただし、有酸素運動は短期間に集中しておこなっても効果は薄く、定期的に長期間続けないと効果が期待できません。1日に合計30分〜60分程度の運動を、可能ならば毎日、少なくとも週3回くらい行うのが理想的です。なお、持病がある方は運動を開始する前に、必ず主治医に相談してください。
食生活では、動物性脂肪が多い食品(牛や豚の脂身、ベーコン、ハム、ソーセージ、チーズ、バター、生クリームなど)や糖質(炭水化物)を摂り過ぎないことが大切です。
糖質には、パン類や麺類、ご飯、イモなどに含まれるデンプンをはじめ、お菓子などに含まれているショ糖(砂糖)、果実に多く含まれているブドウ糖や果糖などがあり、いずれも肝臓で脂肪酸に作り変えられ、中性脂肪の原料となります。
このなかで注意が必要となるのは、デンプンなどに比べて体内での分解吸収が早く、中性脂肪に合成されやすい砂糖、果糖、ブドウ糖です。砂糖は1日50g以上摂取すると、中性脂肪の数値が上昇することがわかっています。清涼飲料(スポーツドリンクも含む)や炭酸飲料、ジュース類は500mlのペットボトル1本に砂糖が20〜50gも入っていますので、これらを飲む機会が増える夏場は気をつけましょう。
中性脂肪を下げるために積極的に食べたいのが、アジ、イワシ、サバ、サンマ、マグロなどの青魚です。これら青魚の油には、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。
このEPAとDHAには、肝臓での中性脂肪の合成を抑えて、血中の中性脂肪を減らす作用があります。そのうえ、血液を固める働きのある血小板が凝集するのを防ぐため、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となる血栓ができるのを予防してくれます。
国内の医療機関でも、動脈硬化の進行した患者さんの中性脂肪を下げる治療薬として、イワシのEPAから精製した「エパデール(持田製薬)」というEPA製剤が使用されています。
EPAとDHAには酸化しやすいという欠点があるため、魚を選ぶ際には鮮度がいいものを選びましょう。また魚の頭の部分に多く含まれているので、切り身よりも尾頭つきの方が効率よく摂取できます。