LDL(悪玉)コレステロールは動脈硬化を引き起こす強力な危険因子です
コレステロールはLDL、HDL、VLDLの3つの成分に分かれますが、LDLは、肝臓でつくられたコレステロールを各臓器に運ぶ働きをしている低比重リポたんぱくのことです。細胞内に取り込まれなかった余剰なコレステロールを血管内に放置し、動脈硬化を引き起こす原因となります。
動脈硬化とは、血管の弾力が失われて硬くなり、血管の内側の壁にさまざまな物質が溜まって狭くなり、血液が流れにくくなる状態のことをいいます。放置していると心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす危険性があります。この動脈硬化の最大の危険因子となるのが、一般的に「悪玉」と呼ばれているLDLコレステロールなのです。
LDLコレステロールで何がわかるのか?
総コレステロールが高い場合、そこに含まれるHDLコレステロールが高いため、LDLコレステロールが正常域でも脂質異常症と指摘されることがあります。しかし、実際には動脈硬化を促進するのはLDLコレステロールですから、正確に脂質異常症を判定するには、総コレステロールの値よりもLDLコレステロールを測定することが大切です。
なお、動脈硬化に関係が深いことから、40歳から70歳を対象として実施される特定健診でも必須検査項目の一つとなっています。
LDLコレステロールの算出方法
LDLコレステロールの数値は、健診や人間ドックの結果表に最初からが記入されているため、被験者の方がご自身で計算する必要はありませんが、以下のような式で求めることもできます。
注:ただし中性脂肪が400mg/dl以上の場合は、この式はあてはまりません。
基準値と変動の範囲
LDLコレステロールの基準値は、一般男女で60〜139mg/dlですが、閉経後の女性の基準値は、70〜159mg/dlと高めに設定されています。異常値と判断されるLDLコレステロールの値140mg/dlは、総コレステロールでは220mg/dlに相当すると覚えておくとよいでしょう。
検査結果の判定
高値でも低値でも原因となる病気がないかを調べますが、健診で「異常」と指摘される人の多くは数値が基準より高い人です。なかでも多いのが、LDLコレステロールと中性脂肪が一定の基準よりも高い「脂質異常症(旧名:高脂血症)」という病気です。
LDLコレステロールや中性脂肪の数値が高い状態のまま放置していると動脈硬化を招き、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など重大な病気のリスクが高まります。
既に狭心症や心筋梗塞を起こしたことがある人は、再発予防のために100r/dL未満を、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)がある人は120r/dL未満、高血圧、長年の喫煙、高齢などのリスク要因を抱えている人は140r/dL未満を目標として、食事や運動などの生活改善に努める必要があります。
異常な場合に疑われること
- 高値…脂質異常症、動脈硬化、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群
- 低値…肝硬変、甲状腺機能亢進症など
LDLコレステロールを下げるには、食生活の改善と適度な運動が大切です
LDLコレステロールの値が140mg/dl以上の場合は、生活習慣の改善が必要です。食事では、動物性脂肪の多い肉類は控えるようにして、代わりに不飽和脂肪酸(DHAやEPA)を豊富に含むイワシやサンマ、サバ、カツオ、マグロなどの青魚を積極的に食べるようにしましょう。
野菜や海藻、きのこ類に含まれる食物繊維は血中コレステロールを低下させる作用がありますので、外食が多い方はサラダをサイドメニューとして加えるとよいでしょう。果物も食物繊維が豊富ですが、果糖が含まれているため、食べ過ぎると中性脂肪の数値が上昇する恐れがあります。
また、動脈硬化を促進させる喫煙は控え、適度な運動を心がけましょう。適度な運動は血液の循環を良くして、善玉コレステロールを増加させます。運動なら何でもよいというわけではなく、体内に酸素を取り入れながらゆっくりと力を出す「有酸素運動」、例えばウォーキングやジョギング、水泳などを継続的に行うことが効果的です。
運動は継続的に行うことが大切で、一般的に3日以上間隔があいてしまうと効果を実感することは難しいとされています。また1回に長時間の運動をすることも、心臓や関節に大きな負担をかけることになります。運動後に全身が軽く汗ばむ程度の負荷を目安として、まずは30分程度のウォーキングからスタートしてみましょう。
喫煙は悪玉のLDLコレステロールと中性脂肪を増加させ、善玉のHDLコレステロールを減らすため、喫煙習慣のある人は動脈硬化のリスクが大きく上昇します。動脈硬化は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、くも膜下出血など命を左右する重大な病気の引き金となります。健診でLDLコレステロールが高いと指摘された人は、禁煙の必要があります。
食生活の改善や継続的な運動でもLDLコレステロールの数値が下がらない場合は、医師の指導の下、コレステロールの合成や吸収を抑制するお薬(製品名:メバロチン、リピトール、ゼチーアほか)による治療を行います。
なお、女性ホルモンのエストロゲンにはLDLコレステロールの上昇を抑える働きがありますが、閉経後はエストロゲンが不足するため数値が急上昇することがあります。その結果、本人が知らない間に動脈硬化が進行していることがあるので、閉経後の女性は要注意です。