生活習慣病の有病者・予備群の減少を目指して導入された特定健診
メタボリックシンドローム(※内臓脂肪症候群)の要因となっている生活習慣を改善させ、高血圧や高脂血症、糖尿病などの有病者・予備群を減少させることを目的とした検査です。平成20年4月より、40歳から74歳までの被保険者と被保険者と被扶養者を対象に実施されます。
※メタボリックシンドロームは、肥満の状態にある人が高脂血症、高血糖、高血圧など複数の症状をあわせ持っている状態です。メタボの状態が長く続くと、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすリスクが高くなることが判明し、注目を集めています。
なお、日本動脈硬化学会など8つの学会は、2005年に下記のようなメタボリックシンドロームの診断基準を作成し、危険な動脈硬化疾患や生活習慣病を予防するための指標として発表しています。
メタボリックシンドロームの診断基準
- 腹部肥満…ウエスト周囲径:男性85cm以上 / 女性90cm以上
- 高脂血症…中性脂肪:150mg/dl以上、HDLコレステロール:40mg/dl未満の一方、または両方
- 高血圧…収縮期血圧:130mmHg以上、または、拡張期血圧:85mmHg以上
- 高血糖…空腹時血糖値:110mg/dl以上
1の腹部肥満に加え、2〜4の2つ以上にあてはまるものを、メタボリックシンドロームとします。なお、2004に行なわれた厚生労働省の調査によると、成人のメタボリックシンドロームは約1300万人、予備軍も含めると約2700万人という数にのぼっています。40〜74歳の男性では2人に1人がメタボリックシンドローム有病者か予備軍とされています。
特定健康診査の項目
質問表(服薬歴 / 喫煙歴等)
身体計測(身長 / 体重 / BMI / 腹囲)
理学的検査(身体検察)
検尿(尿糖 / 尿タンパク)
血圧測定
血液検査
- 脂質検査(中性脂肪 / HDLコレステロール / LDLコレステロール)
- 血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c)
- 肝機能検査(GOT・GPT / γ-GTP)
また、一定の基準の下、医師が必要と認めた場合には、 心電図検査、眼底検査、貧血検査(赤血球数 / ヘモグロビン量 / ヘマトクリット値)がそれぞれ実施されます。さらに、これらの健診結果により、特定保健指導を行います。内容は、受診者の状態に応じて、動機づけ支援(原則1回の指導)、積極的支援(3ヶ月から6ヶ月の継続的な指導)となっています。
メタボリックシンドロームを改善するためには、高エネルギー、高脂肪の食事を控え、運動に努めて、へそ周りのウエスト周囲径、つまり内臓脂肪を減らすことが重要です。幸い内臓脂肪は、皮下脂肪より減りやすく、ダイエット、運動療法の効果は比較的早くからあらわれます。
また、どれだけ減らさなければ意味がないという閾値(しきい値)もなく、1Kgでもウエスト1cmでも減らせば、減らしただけの効果があると言われています。
保健指導で生活改善を実施してメタボの予防・改善に活かす
特定健診では、内臓脂肪の蓄積度を腹囲で測定(ステップ1)し、血糖値、中性脂肪、血圧、喫煙歴(ステップ2)の結果から、リスク要因の数に応じて3つのランクに分けられて、ランクに応じた「保健指導」が実施されます。保健指導を実施する目的は、健診結果から体の状態を把握し、生活習慣病を予防・改善するため、従来の生活習慣を見直し、行動してもらうことにあります。
保健指導のランクはリスク要因が少ない順に「情報提供」「動機づけ支援」「積極的支援」があり、いずれも医師、保健師、管理栄養士などが行います。ランク1の「情報提供」は特定健診の受診者全員に行われるもので、検査数値の読み方と基準値、個人データがどのように推移(改善or悪化)しているのかが、図やグラフを交えてわかりやすく説明してあります。検査数値が正常範囲であっても、だんだんと異常値に近づいているなら要注意です。
また、食生活と運動におけるエネルギーバランスの改善方法、地域のスポーツクラブの紹介、生活習慣病に関する情報なども健診結果とともに配布で冊子されたり、パソコンやスマホを通じて閲覧できるところもあります。
ランク2の「動機づけ支援」の対象となるのは、問診表や健診結果から現在の生活習慣の改善が必要と判断される人、すなわちメタボリックシンドローム予備軍の人です。動機づけ支援では、「生活指導」のほか、モチベーションを持って生活習慣の改善に取り組めるように支援をおこないます。
「動機づけ支援」からは面接があり、運動、栄養などの生活化習慣の改善に必要な提案、今後6ヵ月間の行動目標や行動計画の作成支援などが行われます。そして6ヵ月後には、目標達成状態、生活習慣の改善がみられたかどうかを指導者(医師、保健師、管理栄養士)と一緒になって評価します。
ランク3の「積極的支援」は、既にメタボリックシンドロームの人が対象となっており、初回時に面接で生活習慣の振り返り、生活習慣を改善することで得られる健康面のメリットの理解、行動目標の作成など1人20分以上の個別指導、または1グループ80分以上のグループ支援が行われます。
「動機づけ支援」は原則として支援回数は1回ですが、「積極的支援」では、行動計画の実行の度合いによって専門職からアドバイスをもらったり、栄養・運動などの実践的な指導を受けたり、面接による中間評価を行うなどの継続的な支援を3ヶ月間にわたって複数回、受けることができるのが特徴です。そして、6ヵ月後に目標達成、生活習慣の改善に関する評価が行われます。