病院の検査の基礎知識

貧血など、血液をつくるもとが関係している病気の診断に欠かせません

赤血球は骨髄でつくられますが、血液中に入る前にいくつかの段階を経ます。網状赤血球とは、成熟した赤血球の一段階前の未熟な状態のものをいいます。色素で染めて顕微鏡で観察すると、RNAという物質が網目状に見えるのでこのように呼ばれています。
赤血球の寿命は約120日ですが、網状赤血球は2日以内に成熟した赤血球になります。

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網状赤血球数を調べると何がわかるのか?
網状赤血球は、赤血球の骨髄での産生状態を表すので、貧血など、血液をつくるもとが関係している病気を調べるためには欠かせません。また、抗がん剤や放射線療法の副作用で造血機能の低下が起こることもあるので、それを調べる上でも役立ちます。

網状赤血球数はどのように検査するのか?
以前は、採取した血液を一滴だけガラスの上に採り、色素で染色して、顕微鏡で見ながら赤血球1000個中に網状赤血球がいくつあるかを数えていました。しかし、最近では網状赤血球数を計測できる自動血球計数器で測定することが多いです。検査当日の朝、絶食する必要はありませんし、そのほかの制限もありません。

基準値
網状赤血球数の測定値は、赤血球数に対する比率(%)で表し、基準値は0.5〜1.5%です。
また、骨髄での造血能力を知るためには、網状赤血球数の絶対数も把握する必要があります。
具体的な数字で見てみると、比率が同じ1.0%でも赤血球数が500万/μlの場合では5万/μlですが、250万/μlの貧血状態では2.5万/μlで、造血能力は半分になり、相対比率だけでは正しく把握できないこともあるためです。

網状赤血球の絶対数の基準値は、男性が8000〜11万/μl、女性は8000〜12.5万/μlで、自動血球計数器では比率と絶対数が同時に測定できるようになっています。

検査結果の判定
網状赤血球数が増加している場合は、骨髄で赤血球がさかんに作られていることを示しています。
例えば、赤血球が破壊(溶血)されて貧血が起こっているときは、それを回復させようと、骨髄で赤血球数の産生が増すとともに、網状赤血球も増加します。ですから、溶血性貧血では網状赤血球数が6〜7%と著しく増加します。

赤血球が出血で減った場合も、それを補うために骨髄で赤血球を作るので、網状赤血球が増えることがあります。また、巨赤芽球性貧血や骨髄異形性症候群のように、骨髄で母細胞が壊される病気でも増加を示します。

一方、網状赤血球数が減少している場合は、骨髄での造血機能が低下していることを示しています。最初に疑われる病気は再生不良性貧血ですが、急性白血病や抗がん剤治療の後で骨髄機能が弱っている場合などでも減少することがあります。

異常があったらどうするか?
一般に貧血があってもこの測定値が高いほうが治りやすいとされていますので、数値が低値のほうが注意が必要です。血小板数白血球数骨髄穿刺などのさらに詳しい検査を行なって、病気を診断し、専門的な治療を受けましょう。
なお、溶血性貧血や出血では、骨髄の造血能力が抹消血の網状赤血球数に反映されるまでにおよそ1週間かかりますので、この時期に再度検査する必要があります。

異常な場合に疑われること

  • 高値…溶血性貧血、鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血など
  • 低値…再生不良性貧血、骨髄線維症、急性白血病など

 
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