肺胞におけるガス交換機能を調べる動脈血ガス分析
肺には大別して二つの機能があります。口や気管を通じて空気の出し入れをする換気機能と、血液との間で酸素や炭酸ガスのやり取りをする呼吸機能です。前者を調べる場合は肺機能検査を行い、後者を調べるときには動脈血ガス分析を行います。
気管は二つに分かれていて左右の肺へ入り、肺の中で枝分かれを繰り返しながら、気管支枝から細気管支へといったように次第に細くなって、その先端は肺胞という袋がいくつもついています。
一方、心臓から出た肺動脈は肺の中で気管支と同じように枝分かれをして最後は毛細血管となり、一つ一つの肺胞の表面を網の目のように取り巻いています。血液はこの毛細血管を通る間に肺胞から酸素を受け取り、肺胞の中へ炭酸ガスを捨てます。これが血液ガス交換の仕組みです。
肺炎や胸膜炎が起こると、このガス交換に支障をきたして、血液中の酸素や炭酸ガスなどの濃度が適正でなくなってしまうことがあります。そこで動脈血ガス分析の検査では血液中に含まれているこれらの成分の濃度を調べ、そうした病気の診断に役立てます。
動脈血ガス分析はどのように行なうのか?
細い注射針を使って手首の橈骨(とうこつ)動脈、鼡径部の大腿動脈、腕の上腕動脈などから血液を採取します。採血した動脈血液を10分以内に血液ガス自動分析装置(上の写真参照)にかけて分析します。
血液ガスの基準値
- pH(水素イオン濃度)…7.35〜7.45
- PaO2(酸素分圧)…80〜100mmHg
- PaCO2(二酸化炭素分圧)…35〜45mmHg
- SaO2(酸素飽和度)…95%以上
検査結果の判定
pHが7.45以上のときには、アルカリ血症(アルカレミア)と呼ばれ、こうした病態をアルカローシスといいます。原因として、嘔吐などによって胃液が減少する酸喪失、利尿薬の乱用、バーター症候群やアルドステロン症などの腎臓・内分泌疾患などが考えられます。
一方、pHが7.35以下の状態は酸血症(アシデミア)で、こうした病態をアシドーシスといいます。原因として、下痢や糖尿病性アシドーシス、尿細管性アシドーシスなどがあります。
重症の敗血症などの場合にも、乳酸が体内に蓄積した結果、高度の代謝性アシドーシスにいたることもあります。
動脈の中の酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下になった状態、あるいは二酸化炭素分圧(PaCO2)が45mmHg以上になった状態を呼吸不全といいます。
異常があったらどうするか?
呼吸機能異常は、肺活量測定なども総合して診断します。異常があれば、胸部X線検査や胸部CT検査、超音波検査、気管支内視鏡検査など、詳しい呼吸器の検査が呼吸器科で行われます。
代謝性アシドーシスを放置すると、小児では成長発達障害がみられます。また、年齢に関わらず高度のアシドーシスが持続すると、さまざまな臓器のはたらきが障害されます。低酸素血症が進行すれば、生命維持自体が危険になります。
動脈血液ガス分析で異常値が続くのは、何らかの重篤な病気を発症していることを意味しています。早期に適切な治療を受けることが大切です。
異常な場合に疑われること
低酸素血症、高炭酸ガス血症、呼吸不全、アシドーシス、アルカローシスなど