病院の検査の基礎知識

ABI・PWV検査は四肢の血圧を同時測定して、動脈硬化の程度を数値化

ABI検査とPWV検査は、手と足の血圧の比較や脈波の伝わり方を調べることで、動脈硬化の程度を数値として表したものです。この検査を行うことにより動脈硬化(血管の老化など)の程度や早期血管障害を検出することができます

ABI・PWV検査では、四肢の血圧を同時に測定します

ABI検査で何がわかるのか?
ABI検査(足関節上腕血圧比)は、足首と上腕の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算したものです。動脈の内膜にコレステロールを主成分とする脂質が沈着して内膜が厚くなり、粥状硬化ができて血管の内腔が狭くなる「アテローム動脈硬化」の進行程度、血管の狭窄や閉塞などが推定できます。

動脈硬化が進んでいない場合、横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると足首のほうがやや高い値を示します。しかし、動脈に狭窄や閉塞があるとその部分の血圧は低下します。こういった動脈の狭窄や閉塞は主に下肢の動脈に起きることが多いため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や閉塞の程度がわかります。CAVI(心臓足首血管指数)との同時測定により、大体の血管年齢がわかります。

PWV検査で何がわかるのか?
PWV検査(脈波伝播速度)は、心臓の拍動(脈波)が動脈を通じて手や足にまで届く速度のことです。動脈壁が厚くなったり、硬くなったりすると、動脈壁の弾力性がなくなり、脈波が伝わる速度が速くなります。

腕と足の4箇所のセンサー間の距離と脈波の到達所要時間を計測し、計算式(両センサーの距離÷脈波の到達所要時間)にあてはめて得られた数値が高いほど動脈硬化が進行していることを意味します。

ABI・PWV検査はどのように行うのか?
ベッドの上で仰向けになり、両側の腕と足首に、血圧計の帯(カフ)、心電図の電極、心音マイクを装着します。ABIとPWVを同時に測定し、その結果をコンピューターによって数値化します。所要時間は5分程度です。

検査結果の見方
ABIの測定値が0.9以下の場合は、症状の有無にかかわらず動脈硬化が疑われます
下肢の比較的太い動脈が慢性的に閉塞し、足が冷たく感じたり、歩くとお尻や太腿の外側などが痛む「閉塞性動脈硬化症(ASO)」が進行すると、足先が壊死してしまうこともあります。下肢血管エコー検査などを行って、動脈壁の状態をさらに詳しく調べる必要があります。

年齢によってもやや異なりますが、PWVの測定値が13.5以上の場合は、動脈硬化が進行しており、くも膜下出血や、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞などの病気にかかりやすくなっていますので、高血圧の人は積極的な治療が必要となります。

動脈硬化を原因として発症する病気とその自覚症状を表として掲載しています。下記の症状が現れた時は、既に病気が進行している状態ですので、早急に医療機関を受診しましょう。

血管の部位病名自覚症状
脳梗塞、脳出血手足の痺れや麻痺、眩暈、呂律がまわらない
心臓狭心症、心筋梗塞運動時の胸の圧迫感、痛み
腎臓腎硬化症血圧の上昇など
下肢閉塞性動脈硬化症歩行時の下肢の痛み、冷たさ
大動脈大動脈瘤、大動脈解離胸や腹部の痛み

血管年齢を若返らせるためには、禁煙、適度な運動、食生活の改善が重要

血管年齢は年齢に比例して高くなるのが普通ですが、実際の年齢よりも血管年齢が高い、すなわち血管が硬い場合、その原因としては、脂質異常症や糖尿病などによって血管そのものが硬くなる「器質的原因」と、高血圧、ストレス、喫煙などによって血管が一時的に硬くなる「機能的原因」の2つが考えられます。まずは、ご自身の原因が何なのかを把握することが大切です。

内臓脂肪を燃焼させます

血管の老化現象である動脈硬化の危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、ストレスなど、生活習慣と深いかかわりのあるものばかりです。したがって、生活習慣を改善できれば、血管年齢を若返らせることは十分可能です。すでに動脈硬化が進行している中高年の方でも、生活習慣の改善によって、心筋梗塞や脳梗塞の発症を防ぐことができます。

生活習慣の改善で大切なのは、禁煙、適度な運動、そして食生活の見直しです。タバコを吸うと血管の収縮するため、ヘビースモーカーの場合、1日中血管が縮んで血圧が上昇します。喫煙が血管を老化させる最大の要因は、活性酸素です。喫煙で大量に発生する活性酸素は血管を攻撃し、血液中に流れている悪玉のLDLコレステロールを酸化させ、動脈硬化を促進するのです。

次は運動を見てみましょう。血管の弾力性を保つためには、有酸素運動が有効とされています。有酸素運動には、ジョギング、ウォーキング、水泳、ゴルフ、エアロビクスなどが挙げられますが、一人で気軽に長期間続けられるのは、ウォーキングとジョギングです。

有酸素運動を行うとブラジキニンという物質が分泌されるとともに、一酸化窒素の生産も増加して血管が拡張します。その結果、血管の抵抗がなくなり、血液循環が改善されて、血圧が下がります。運動の時間は1回30分くらいで、週3回程度行うことが理想です。

食生活では、塩分、脂質、カロリーを抑えることができる「野菜中心・野菜優先」の食事がお勧めです。野菜中心・野菜優先の食事は、血管の老化の誘因となる食後の血糖値の上昇を抑えることができます。糖尿病とその合併症の予防には、血糖値のコントロールが欠かせませんが、野菜優先の食事は特に有効とされています。

主食であるご飯やパン、麺類、イモ類など、糖質の多い食事をとりすぎると食後に血糖値が急上昇します。しかし、野菜を先に食べると、野菜に含まれる食物繊維の作用により、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。

食物繊維は、人の消化酵素では消化しきれない性質があります。したがって、食物繊維の豊富な食品を食べると、消化吸収が遅くなります。そして、糖質の吸収も緩やかになるため、食後の高血糖を避けることができるというわけです。

近年、動脈硬化の進行を抑える栄養素として注目されているのが、イワシやサバなどの青魚に多く含まれているEPAとDHAという脂肪酸です。EPAとDHAは、血液を固める作用のある血小板の凝集を防いだり、余分なコレステロールや中性脂肪の代謝を促進します。さらに傷ついた血管の機能を回復し、柔らかくしなやかな状態に戻す働きがあるとされています。

実際、動脈硬化が進行した患者さんには、中性脂肪と悪玉のLDLコレステロールを低下させる目的で、青魚の油から精製された高純度のEPA製剤(エパデール:持田製薬)が投与されています。


 
Copyright 2023 病院の検査の基礎知識 All Rights Reserved.