病院の検査の基礎知識

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晩婚化による初産年齢の上昇で重要性が増す「ブライダルチェック」の内容

女性の晩婚化がすすむなか、初産を迎える年齢も上昇しており、2013年では30.4歳(厚生労働省の発表データより)となっています。晩婚化で問題となるのは、「不妊症」です。不妊治療は数年単位で行うことも珍しくなく、同じ原因であっても、年齢が進むにつれて治療に要する時間も長期化する傾向にあります。長引く不妊治療で心身を疲弊してしまう夫婦もいれば、治療が実を結んだ場合でも、年齢的に第二子は諦めなければならないこともあります。

結婚式の花嫁

こうした状況の中、結婚前の女性に注目されているのが、"結婚するパートナーへのエチケット"、"結婚前のカップルの新常識"とも言われている「ブライダルチェック」です。ブライダルチェックとは、ご自身の体がいつでも妊娠できる状態にあるのかを確認する、婦人科検診の一つです。

子宮や卵巣に異常があると、妊娠自体が困難になりますし、クラミジアや淋病などの性感染症(STD)に感染していると、不妊症の原因となったり、お腹にいる赤ちゃんにも産道感染し、流産や死産につながることもあります。

子宮や卵巣の異常、性感染症は進行しないと自覚症状に乏しいことも多く、症状が現れてから婦人科を受診したのでは、「自然妊娠は難しい」ということにもなりかねません。そこで結婚前に婦人科でブライダルチェックを受けることで、妊娠・出産に支障をきたす病気がないかを確認、もしくは早期発見・治療をして、元気な赤ちゃんを授かりましょう、というわけです。

以前は認知度が低いうえ、"健康を証明することでお嫁さんとして価値を上げる"など、本来の趣旨が誤解されることもあったブライダルチェックですが、近年では"自分やパートナー、将来の赤ちゃんの健康のために受ける"という認識が広まってきており、多くの女性がブライダルチェックを受診しています。

ブライダルチェックの検査内容は、通常の婦人科検診の検査項目に加えて、HIV感染症淋病性器ヘルペス梅毒などの性感染症の検査を行います。さらには風疹B型肝炎C型肝炎、貧血、肝臓や腎臓の機能などを調べます。

婦人科の女性医師に相談

では具体的な手順を簡単に見ていきましょう。まず、問診で初経の年齢、生理日、生理痛や不正出血、おりものの異常の有無などを尋ねます。他の診療科における問診と異なり、婦人科ではその性質上、答えるのが恥ずかしいと感じる質問もありますが、いずれも正しい診断に必要な質問です。

続いて内診で視診を行います。この視診は外陰部を洗浄しながら、外陰部や膣に異常がないかを確認するもので、例えば性器ヘルペスや尖圭コンジローマなどの性感染症に感染していると、外陰部に潰瘍やイボができているので見るだけでわかります。

膣鏡

次に上の写真のように、鳥のくちばしのような形をした膣鏡(クスコ)と呼ばれる器具を膣内に入れて、膣のびらん(ただれ)の状態、ポリープの有無、出血がある場合はその程度を診ます。

膣鏡は受診者の体格に合わせたサイズのものが選択されますので、緊張で体に力を入れたりしない限り、痛みを感じることはありません。

その後、おりものを採取して、顕微鏡検査や培養検査をします。これでクラミジアや淋病、膣カンジダ症膣トリコモナス症などの性感染症や、膣炎などの病気が発見できます。

おりものを採取した後、今度は綿棒で子宮頸管を軽くこすって分泌物を採取します。これで子宮頸がんが疑われる細胞があるかどうかを調べます。ほかに、女性ホルモンの割合、膣の細胞の成熟度(女性ホルモンの分泌が正常かどうか)などもわかります。

次に無菌手袋をした指(人差し指と中指)に潤滑剤を塗って膣内に挿入し、もう片方の手で軽く腹部を押さえます。子宮を両側から押すことで、子宮の位置、大きさ、硬さに異常はないか、痛み(子宮内膜症)や腫瘍の有無などを把握することができます。異常がなければ、内診で痛みを感じる人はほとんどおらず、時間も3分程度で済みます。

内診の際、内診台の腰の部分はカーテンが引かれており、医師と受診者は顔を合わせないようになっています。これは受診者である女性の羞恥心を和らげるための配慮ですが、逆に「医師の姿が見えないと、何をしているのかわからなくて不安になる」という方もいます。カーテンの開閉は希望に応じて自由に行えますので、安心してください。

次にエコー検査(超音波検査)を行います。エコー検査とは、体内から戻ってくる超音波の反射波を画像に映して診断に利用するものです。ブライダルチェックで行うエコー検査は「経膣エコー」といい、プローブと呼ばれる超音波診断装置を膣内に入れて、膣内から子宮や卵巣を撮影します。

子宮や卵巣の形や位置を観察することで、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫、卵巣の癒着の有無などがわかります。エコー検査は、患者さんも子宮や卵巣の様子をリアルタイムで観察しながら、医師の説明を聞くことができるのが大きなメリットです。エコー検査はX線を使用しないので、放射線の被曝も心配ありません。

最後に血液検査を行います。採血は、HIV、クラミジア、梅毒、風疹、B型肝炎、C型肝炎などの感染症や、母子ともに影響を及ぼす、重い貧血がないかを確認する目的で行います。

おりもの、膣分泌物、血液検査は結果が出るまでに数日かかりますが、ブライダルチェックの検査自体は15分程度です。ただし、上記の検査項目はあくまでも基本項目ですので、乳房検診(マンモグラフィーや乳腺エコー)などが加わっているコースを受診すると検査時間はそれだけ長くなります。

ブライダルチェックで見つかる頻度が高いのは、性感染症のクラミジアです。クラミジアは女性の感染者の約80%は自覚症状がなく、放置していると、感染が長期化して不妊や子宮外妊娠の原因となるため注意が必要です。実際、不妊の原因が性感染症である場合、その原因として最も多いのが、このクラミジアとなっています。

ブライダルチェックの費用はいくら? いつ頃受けたらいいの?

気になるブライダルチェックの費用(料金)ですが、受診する婦人科や検査項目によって差はあるものの、だいだい3万円〜5万円となっています。結構なお値段ですよね。これはブライダルチェックは健康な人が受ける検査のため、健康保険が適用されずに費用が全額自己負担となるためです。

検査に保険は効かない

ブライダルチェックを受ける時期ですが、結婚式の直前に受診すると、治療を要する病気が見つかった場合に大変です。結婚式の6ヶ月から3ヶ月前ぐらいに受けるようにすれば、もしもの時でも慌てずに治療に臨むことができるでしょう。また、経血の影響で検査精度が下がることも考えられますので、生理中の受診は止めておくのが無難です。

ブライダルチェックを受ける際の服装ですが、上着は採血の際に袖をたくし上げられるものを選びましょう。また内診台では下着を脱ぐ必要があるので、腰回りを覆い隠せるロングスカートならば羞恥心をいくらか軽減することができます。検査の際にまれに出血することがあるので、日頃使用しているナプキンを1枚持参しておくと安心です。

これまで婦人科を受診することがなかった女性は、ブライダルチェックを機会にかかりつけの婦人科医を見つけておけば、いろいろな相談がしやすくなります。

例えば、結婚式や新婚旅行に生理が重なるため、生理日をずらしたい場合や、当分は避妊したいとか、逆にハネムーンベビーが欲しい場合の相談、さらに結婚後の家族計画など、いろいろな相談にのってもらえます。そういった意味でも、ブライダルチェックを受けておくことは大きな意味があります。

なお、不妊の原因の約半分は男性にあるため、男性もブライダルチェックを受けて、精子の通り道に障害を引き起こす性感染症(クラミジアや淋病など)の有無、精子の状態を調べてもらうのが理想です。

女性に比べてまだまだ認知度も低く、検査を受けている男性は少ないのが現状ですが、近年はカップルがペアでブライダルチェックを受けることができる婦人科も増えてきています。


 
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