病院の検査の基礎知識

脳の病気の検査の一覧

脳にはたくさんの血管があり、脳細胞は、これらの血管から酸素や栄養素を供給されています。これらの血管のどこかが詰まったり出血したりして、脳の組織の一部に障害が起こり、半身麻痺などの症状が現れる病気を、脳血管障害といいます。

脳の病気の検査について

脳卒中は、脳血管障害が突然起こる場合で、発症のしかたによって、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などに分けられます。脳血管性痴呆も、脳血管の血液の流れが悪くなって、痴呆症状が現れてくるものです。ほかに、頭を打ったあと1〜3ヶ月してから、血腫(出血したあとにできた血液のかたまり)が脳を圧迫して、頭痛や手足の麻痺などの症状が現れてくる慢性硬膜下血腫などの病気があります。

  • 頭部CT…X線撮影し、頭蓋骨の中を5mm〜1cm間隔の輪切りにした画像で映し出します。
  • 頭部MRI…CTでは写せない小さな脳梗塞や、脳幹部の病変をはっきりととらえます。
  • 頭部MRA…くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤のスクリーニングとして行われます。
  • 頭部血管造影…造影剤を注入してX線撮影し、動脈、静脈、毛細血管の異常を観察します。
  • 3D-CTA(三次元脳血管造影)…脳の血管を立体構造として三次元に描き出します。
  • 神経超音波検査…超音波の性質を利用して、脳や頚部の血管や血流の状態を調べます。
  • SPECT・PET…脳の断面の血流状態がよくわかり、虚血領域を確認することができます。
  • 脳波検査…頭皮の電気的な変動を頭部の電極でとらえ、増幅し、波形として記録します。
  • 髄液検査…針を刺して、脊髄液を採取して調べ、脳や脊髄に病気や異常を判定します。
  • アミロイドイメージング…アルツハイマー病の原因物質されるアミロイドの沈着をみます。

神経超音波検査とは?

神経超音波検査とは、一定方向に強く放射され直進性が高いという超音波の性質を利用して、脳や頚部の血管や血流の状態を調べる検査のことです。
脳血管の状態を観察することによって、脳血管閉塞・狭窄や、脳血管の動脈硬化性変化がわかり、また、血管を詰まらせる血栓などの塞栓物質を検出できます。
検査方法は、頚部血管超音波法と経頭蓋超音波(ドプラー)法の2種類があります。

経頭蓋超音波法

これらの検査方法は、患者に苦痛を与えない安全で手軽な検査で、頚部または側頭部にプローブ(超音波発信器)を押し当て、血管壁、血流の様子を画像化します。検査時間は数分から30分です。

頚部血管超音波法
主に頚動脈硬化を調べる検査法です。頚部にプローブをあてて検査します。
頚部は、心臓から脳あるいは脳から心臓へと巡る血管の通り道です。もしその通り道が狭くなったり、血液中に血のかたまり(血栓)などが混じっていたりすると、脳や心臓の血管を詰まらせる危険性があります。

この検査法では、断層画像をとることができるため、血管壁内の状態、血管表面の状態、血管内腔の状態を見ることができ、動脈硬化を視覚的にとらえ診断することが可能です。
頚部神経超音波は、高血圧や高脂血症、糖尿病、肥満を有する人や、その境界値にいると考えられる人に対して、脳および心臓疾患の発症予防や動脈硬化判定に有用です。

経頭蓋超音波法
こめかみや側頭部にプローブをあてて、頭蓋骨の中にある脳血管の太さや血液の速度、また、脳に運ばれて脳血管を詰まらせている微小な塞栓物質(HITSまたはMES)がないかを調べます。
閉塞や狭窄、逆流がないかがリアルタイムでわかり、くも膜下出血の患者で血管攣縮が起こっているかどうかの判定にも役立ちます。

異常があったらどうするか?
脳や頚動脈の血管狭窄や血栓などの塞栓物質があれば、脳血管閉塞、脳血管狭窄、動脈硬化症などが疑われますので、頭部MRA(MRアンギオグラフィー)、頭部血管造影などのさらに詳しい検査が必要となります。

異常な場合に疑われる病気
脳血管閉塞、脳血管狭窄、脳血管の動脈硬化性変化、心筋梗塞など

SPECT・PETとは?

SPECTとは、シングル・フォト・エミッションCTの略語で、体内に注入したRI(放射性同位元素)の分布状況を断層画面で見る検査のことです。
体内から放出される放射線の分布をコンピュータで画像化する際、検出器の前にコリメーターという器具を置き、体の周りを回転させて断層画面を作成します。
SPECTは、従来のCTでは表わせなかった血流量や代謝機能の情報が得られるため、とくに脳血管障害や心疾患の診断で威力を発揮します。

SPECT検査における脳の断層画面です

一方、PETはポジトロン・エミッション・トモグラフィーの略語で、ポジトロンCTともいわれる核医学診断装置のことです。その原理は、陽電子(ポジトロン)放出アイソトープというものを体内に注入すると、体内の陰電子と結合して消滅放射線(γ線)を発生する性質を利用して、それを検出器で測定し、コンピュータで処理して断層画像化するものです。

PETで使用されるRI(放射性同位元素)は、炭素、酸素、フッ素、窒素などの生体中に存在する元素なので、SPECTよりもなおいっそう代謝などの様子を正確に把握でき、がんなどの進行度の診断などに優れた能力を発揮します。

そのほか、脳の内部のブドウ糖やアミノ酸の代謝、酸素の消費量の変化を調べて、脳機能の障害部位を診ることができます。PETは、脳疾患の病態解明や微小な腫瘍の発見には現在最も有効とされています。
さらに、神経伝達物質とその受容体(レセプター)を測定することで、精神病の病態の解明にも役立つなど、その威力が、今後益々期待されています。
ただし、高額な設備投資が必要なため、PET検査を受けることができる医療機関が限られている点がネックとなっています。

SPECT・PET検査で何がわかるのか?
脳の断面の血流状態がよくわかり、血液が流れていない虚血領域を確認することができます。
また、PETではほかの画像診断では見つからない小さながんの発見が可能です。
これにより、初期の脳梗塞やその他の脳血管障害、一過性脳虚血発作、完全回復性脳卒中、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳腫瘍などが診断でき、脳神経外科や神経内科での治療方針の決定に役立ちます。

SPECT・PETはどのような検査か?
検査着に着替えてRI検査室に入り、ベッドに横になって、静脈からRI(放射性同位元素)を注入します。体を回転しながら、シンチカメラで撮影します。
検査時間は、脳の撮影だけだと30分程度で済みますが、全身を撮影する場合は数時間かかることもあります。注射をするときに痛みがあり、長時間ベッドで横になっているのでその痛みもあります。

異常があったらどうするか?
ほかの検査データや、CT検査MRI検査などの画像診断ととも対比して診断がなされ、治療方針が決定します。

異常な場合に疑われる病気
脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、脳血管奇形、てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、狭心症、心筋梗塞、各臓器のがんなど

頭部CT検査とは?

頭部CT検査とは、頭部をX線撮影し、それをコンピューター処理して、頭蓋骨の中の様子を5mm〜1cm間隔の輪切りにした画像を映し出す検査です。
CTには、造影剤を使わないで撮影する「単純撮影」と、造影剤を使って撮影する「造影撮影」があり、造影剤を血管内に投与することで、脳の腫瘍や梗塞部位の周辺には、不規則な円状の増強効果が認められるようになります。

頭部CTの画像

従来のCT装置は、X線管球のあるガントリー内へベッドを少しずつスライドさせてはいったん止め、X線照射をしていましたが、最近ではX線管球自体を螺旋状に回転させるヘリカルCTという装置も用いられています。
ベッドを止めず、一定時間で速やかにスライドさせれば撮影できるので、検査時間は従来に比べて大幅に短縮、患者の負担も軽減されます。

従来の輪切りではスライス間に情報が抜けることがありますが、ヘリカルCTでは連続した情報で確認できます。さらに任意の部分の断面画像を容易に得たり、高精度の三次元画像(立体画像)まで得られるようになっています。

頭部CT検査で何がわかるのか?
脳の先天性の病気(水頭症など)の診断、外傷による頭蓋内の血腫の大きさや場所、脳腫瘍の大きさや場所、種類、良性か悪性か、脳血管障害(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、微小梗塞など)の場所や傷害範囲がわかります。
また、くも膜下出血の原因となる動脈瘤を発見することもできます。

頭部CT検査はどのような検査か?
単純撮影と造影撮影の両方を行なうのが一般的です。検査着に着替え、検査台に仰向けに寝ます。ガントリーと呼ばれる丸いドーム状の中へ体をスライド移動し、頭部にX線が照射されます。
最初に単純撮影を行ない、次に造影剤(ヨード剤)を2分くらいかけて点滴静注し、造影撮影を行ないます。検査にかかる時間は30分前後ですが、同じ姿勢をじっと保たなければならず、多少苦痛です。
CT検査でのX線の被爆量は問題なく、月に2〜3回の繰り返し検査も可能です。

検査結果の判定
脳に出血があると画面に白い影が映り、出血の範囲がわかり、出血部位も推定できます。脳梗塞の場合には、梗塞や周りのむくみの部分は黒っぽく映し出されます。くも膜下出血では、くも膜のしたに広がった血液が白い像として映り、出血の原因となった動脈瘤の場所も推定できます。また、脳腫瘍は白っぽい像が映りますが、造影撮影するとその影が増強されます。

異常があったらどうするか?
必要に応じて、さらに頭部MRI検査頭部血管造影検査眼底検査などを受け、治療方針に従って治療や処置を受けることが大切です。

異常な場合に疑われる病気
脳梗塞(脳塞栓、脳血栓)、脳出血、脳腫瘍、脳動脈瘤、外傷による脳挫傷や血腫、水頭症など

頭部MRA検査とは?

磁気共鳴という物理現象を応用して体内の水素原子核からの信号をとらえ、頭部の断面を画像化する検査法を頭部MRI(磁気共鳴画像診断)といいます。
この原理を利用して、頭部の血管の様子を詳しく立体画像化しようというのが頭部MRA(磁気共鳴血管造影)です。コンピュータグラフィックの進歩により、画面上で方向を変えて三次元に画像を表示することが出来ます。
脳ドックでは、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤のスクリーニング(ふるいわけ)検査としてよく用いられています。

頭部MRA

「血管造影」という名前がついていますが、この検査では造影剤の必要ありません。また、頭部CT検査と異なり、X線による被爆の心配もありませんので、まったくの無侵襲(からだを傷つけない)で脳の血管の状態を知ることができます。

頭部MRA検査はどのように行なうのか?
MRI装置を設置した特別な検査室で行ないます。ベッドに横たわった受診者の頭部を、ガントリーという大きな筒状の装置の中へ移動させ、そこに強力な磁気をあてます。
耳元で「ゴンゴン」と工事現場を髣髴とさせるような金属コイルの振動音がしますが(耳栓は全く役に立ちません)、痛みもなく、短時間で終了します。

検査結果の判定
血流の閉塞や狭窄などの異常がみられる場合、脳動脈瘤や閉塞性動脈疾患、脳動脈奇形などの脳血管障害が疑われます。MRAだけでは細い血管までは判別しにくいので、確定診断のために、造影剤を用いる頭部血管造影3D-CTA(三次元脳血管造影)が行われることもあります。
歌手の徳永英明さんが発病された「もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)」もこの検査を受けることにより、脳底部の異常血管網を確認することできます。

なお、脳血管障害(脳卒中)は高血圧、心臓病、糖尿病といった全身の病気や代謝異常が危険因子になりますので、頭部MRIやMRAによる検査で異常が認められないだけでは、不十分ともいえます。
脳ドックにより、脳血管障害の予防や脳腫瘍の早期発見などを目指すのであれば、それらの疾患をスクリーニングする血液検査や心電図検査眼底検査などが最低限必要となります。

異常な場合に疑われる病気
脳動脈瘤、脳梗塞、脳動静脈奇形、もやもや病、閉塞性動脈病変など

頭部血管造影検査とは?

頭部血管造影検査とは、頭部の血管にX線を透さない造影剤(ヨード系薬剤など)を注入してX線撮影し、動脈、静脈、毛細血管の異常を観察する検査です。頭部アンギオグラフィーとも呼ばれています。
デジタルサブトラクション血管造影(DSA)という装置を用いると、血管だけがよりくっきりと浮き上がって見え、鮮明な写真を得ることができます。

頭部アンギオグラフィー

動脈に瘤(こぶ)ができている動脈瘤や、先天的に動・静脈間が毛細血管を経ないで直接繋がっている脳動静脈奇形の診断に重要な検査です。これらはいずれも、くも膜下出血の原因になります。くも膜下出血や脳出血による出血部位の判定、また脳腫瘍の存在なども診断します。
なお血管の検査は、この検査よりも、頭部CTやMR(頭部MRI頭部MRAなど)が主体で行なわれていますが、現在でも、開頭手術の術前検査として重要な役割を担っています。

頭部血管造影検査で何がわかるのか?
くも膜下出血の原因となる動脈瘤や脳動静脈の奇形などの手術の前に、その状態を詳しく観察したり、脳腫瘍の手術前に、腫瘍の近くを重要な血管が通っていないか、腫瘍に血管が食い込んでいないかなどを調べます。
また、バイパスを観察したり、動脈硬化で細くなった血管がどの程度血液を通しているのかなどを調べるうえで欠かせない検査です。

頭部血管造影検査はどのような検査か?
動脈にカテーテルいう細い管を挿入して、その先端を脳の近く(頚動脈や椎骨動脈)まで進め、造影剤を注入し、X線撮影します。カテーテルを挿入する場所は腿の付け根の鼠径部ですが(セルジンガー・カテーテル法)、首筋の頚動脈や腕の上腕動脈に直接針を刺して注入する方法(直接穿刺法)もあります。

この検査を受けるには入院が必要で、前日に入院します。検査当日の朝は絶食し、血液一般検査、ヨード剤に対するアレルギー検査など手術に必要な検査を行ないます。検査の30分前に鎮静剤を注射します。

検査着に着替えて検査室(アンギオルーム)に入り、カテーテルを挿入する場所の体毛を剃り、消毒をします。局所麻酔をして切開を加え、カテーテルを挿入します。
カテーテルを挿入するときに軽い痛みがあり、造影剤を注入すると頭の中が熱くなってきますが、一時的なものなので心配はいりません。検査時間は1〜2時間です。

カテーテルを抜いた後は止血のために15分くらい圧迫を続け、止血したら絆創膏で止めます。
さらに、止血を確実にするために砂袋をのせ、約6時間ベッドで安静にします。完全に止血したことを確認して初めて歩行が許されます。
検査だけであれば翌日には退院できますが、多くの場合、検査結果に基づいて治療方針を立てたり、何らかの処置や治療が必要となりますので、検査結果の出る数日後まで入院することになるでしょう。

検査結果の判定
脳血管が浮かび上がったX線造影写真が得られ、脳動脈瘤や脳梗塞、脳動静脈奇形、脳腫瘍、脳内血腫など脳血管障害がよくわかります。

異常があったらどうするか?
検査の結果は脳外科医によって検討され、治療方針や、薬の処方決定、手術の準備などが行なわれます。

異常な場合に疑われる病気
動脈瘤、脳梗塞、脳の動脈硬化、脳動静脈奇形、脳腫瘍、脳内血腫など

脳波検査とは?

脳はその活動にともなって常に微弱な電波を出し続けており、それは頭の表皮上におけるわずかな電位差(電流は電位の高いほうから低いほうへ流れる)となってあらわれます。その電気的な変動を頭部に付けた電極でとらえ、増幅し、波形として記録するのが脳波検査です。

頭部に電極を取り付けます

脳波検査で何がわかるのか?
けいれんを起こしたとき、意識障害がみられるとき、症状には出ない軽い意識障害をみつけようとするとき、てんかんが疑われるときなどに行われ、脳腫瘍などの診断にも有用です。脳死判定の際にも用いられています。

頭部CT検査頭部MRI検査などの結果とあわせて診断され、脳腫瘍やけがによる脳障害(脳挫傷)であれば、CTに映りますが、真正てんかんであればCTに異常はみられません。
脳出血や脳梗塞ではCT検査などで十分に診断が付くので、脳波検査が行なわれることはほとんどありません。

脳波検査はどのような検査か?
シールドルームという電気的に隔離された部屋で行なわれます。最近は手軽に運べる携帯型の脳波計も開発されていて、普通の病室や手術室などどこでも測定することができます。ベッドに仰向けに寝て、頭に十数個の電極をペースト(糊)で取り付けます。安静にしていて、目を開いたとき、目を閉じたとき、深呼吸をしたときなどの脳波を調べます。てんかんなどでは光や音の刺激を与えたり、薬物を投与して測定します。また、睡眠中の脳波を測定することもあります。

検査時間は準備を含めて約30分ですが、他の検査も行なうと2時間くらいかかることもあります。検査だけなら通院で受けられます。

検査結果の判定
脳波はその波長によって、δ波(デルタ波)、θ波(シータ波)、α波(アルファ波)、β波(ベータ波)の4つに分類されます。成人の場合、安静にして目を開いているとベータ波が、目を閉じているとアルファ波があらわれ、熟睡しているとデルタ波が出てきます。
もし、覚醒しているにもかかわらず、デルタ波やシータ波があらわれる場合は、脳の機能が低下していると考えられ、てんかん、脳腫瘍、脳挫傷などが疑われます。

異常があったらどうするか?
脳神経科や脳外科の専門医が、頭部CTとそのほかの検査とあわせて、総合的に診断を下すことになります。

異常な場合に疑われる病気
てんかん、脳腫瘍、脳挫傷、脳出血、脳梗塞、肝性昏睡、薬物中毒による意識障害など


 
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