急性心筋梗塞や不安定狭心症などによる心筋へのダメージを早期発見
心臓の筋肉に栄養を送る冠動脈が脂質で詰まってしまう心筋梗塞は、突然死の原因で最も多く、年間5万人もの方が亡くなっています。早急に診断し、治療することが重要ですが、精密検査では心臓の血管に細い管を入れる冠動脈造影を行なうため、体への負担が大きく、手軽にはできないという問題がありました。
そこで近年注目されてきたのが、血液を採るだけで検査できる「心筋梗塞マーカー」という診断法です。心筋細胞の壊死により血液中に漏出したトロポニンの増加を薬剤で調べます。トロポニンとは、心筋細胞の筋原繊維を形成する収縮タンパクで、トロポニンT、IとCからなります、これら3つのうち、臨床的に測定されるのはトロポニンTとIの2つです。
心筋梗塞マーカー検査で何がわかるのか?
トロポニンは心筋の構成成分であるため、これが血液中に出現するということは、急性心筋梗塞や不安定狭心症などによって、心筋がダメージを受けていることを意味します。
従来から測定されているクレアチンキナーゼやLDH(乳酸脱水素酵素)などの酵素やミオグロビン(筋肉ヘモグロビン)は、心筋の他に骨格筋にも多量に存在するため、これらが血中に認められた場合には、心筋の傷害ばかりでなく、骨格筋の傷害かを鑑別する必要があります。
一方、トロポニンが認められた場合は、ただちに心筋が傷害されたと判定でき、特異性が極めて高い検査といえます。
また、トロポニンは急性心筋梗塞発症後、数時間で血液中に出現し、2週間ほど高値が持続します。このため、症状がはっきりせずに検査が遅れてしまった場合にも陽性を示し、心筋の障害を診断できます。
異常があったらどうするか?
トロポニンが陽性反応を示した場合は、下記の心疾患が疑われますので、心電図検査、心臓超音波、心筋シンチグラフィーなどを行なって、心臓の状態をさらに詳しく調べていきます。
異常な場合に疑われること
急性心筋梗塞、心筋炎、狭心症など