血清中のCKに変化がみられた場合は、筋肉や脳の異常が特に疑われます
クレアチンキナーゼ(CK)は酵素の一種で、筋肉細胞におけるエネルギーの代謝に関連した重要なはたらきをしています。心筋や骨格筋、平滑筋などに多く含まれているほか、脳細胞にも含まれています。一方、臓器や血球などの細胞にはほとんど含まれていません。したがって、血清中のCKに変化がみられた場合は、筋肉や脳の異常が特に疑われます。
CKには3種類からなるアイソザイム(酵素としてのはたらきは同じだが、分子構造などが異なる酵素群)があります。このうちCK1はとくに脳や脊髄に多く、CK2は心臓に、CK3は骨格筋に多いというそれぞれの特徴があります。CK全体の濃度を測定するとともに、これらアイソザイムの特長を生かして、異常の種類を詳しく診断することもよく行われているところです。
クレアチンキナーゼ(CK)はどのように測定するのか
血液を採取し、クレチンリン酸と酵素の入った試薬と比色計を用いて測定します。筋肉運動をすると、筋肉からクレアチンキナーゼが血液中に漏れ出て上昇し、24時間前後でピークとなり、3〜4日後にもとに戻ります。したがって、検査を受けるときは、4日前ごろから激しい運動は控えてください。検査当日の飲食は普通にとってかまいません。
クレアチンキナーゼの基準値(比色法)
- 男性…40〜200IU/l
- 女性…30〜120IU/l
クレアチンキナーゼは、筋肉の量と比例するため、男性は女性と比較して20〜30%高値になります。女性の場合は、朝から夕方にかけて数値が上昇しやすく、妊娠後期と出産前後にやや高めになります。男女とも、高齢になるとだんだん低くなってきます。
そのほか、筋肉注射、筋電図、血管などに注射をする検査、生検、心臓穿刺、手術の後などには、クレアチンキナーゼはやや高値を示します。測定法は比色法のほかにも、UV法などいろいろあり、測定法によって基準値が異なりますので、複数の医療機関での検査結果を比較する場合は気をつけてください。
検査結果の判定
クレアチンキナーゼの値は急性心筋梗塞や発作性心室頻拍症、狭心症、心筋炎など循環器系の疾患で上昇します。また、神経筋疾患、特に筋ジストロフィーでは著しい高値を示します。筋肉の病気が特定できない場合は、甲状腺の病気も考えられます。甲状腺機能低下症では高値、甲状腺機能亢進症では低値になります。
異常があったらどうするか
軽度の上昇であれば、臨床的診察や筋電図検査、筋肉組織片を調べる生検などの結果を参考にして、診断を確定します。狭心症や心筋梗塞の検査では、クレアチンキナーゼの測定値とともに発作から何時間後に測定したかも、診断する上で重要です。一般に心筋梗塞の場合、クレアチンキナーゼはほかの酵素より速く増加し、正常に戻るのも早いからです。
また、狭心症の場合には、心電図や心臓超音波、心筋シンチグラフィーのほか、赤沈、GOT、GPT、LDH(乳酸脱水素酵素)などの検査による経過観察が必要になります。
狭心症発作後、心電図にも異常が無く、クレアチンキナーゼが境界値か、それ以上であれば、軽い心筋梗塞と考えて、それに準じた対策が採られます。
狭心症は、早期に適切な治療を受ければ予後は良好です。急性心筋梗塞は、血管が詰まったあとで心筋が完全に壊死するまでに、治療を開始することができるかどうかが重要となります。そのため早期診断による治療が必要となります。近年では、心筋細胞の壊死により血液中に漏出したタンパク質「トロポニン」の増加を薬剤で調べる心筋梗塞マーカー検査も登場し、注目されています。
異常な場合に疑われること
- 高値…急性心筋梗塞、心筋炎、筋ジストロフィー、多発性筋炎、甲状腺機能低下症など
- 低値…甲状腺機能亢進症、結合織疾患、高ビリルビン血症など