病院の検査の基礎知識

大腸がんは検診を毎年受けることで死亡率を下げることができます

国立がん研究センターが発表した「がん統計予測」によると、2015年に新たに大腸がんの診断された人数(罹患数)は135,000人、死亡者数は50,600人となっています。がんの発生部位別で見ると、大腸がんは罹患数で第1位、死亡数は「肺がん」に次いで第2位となっています。死亡数は過去20年で2倍近く増加していることから、遠くない将来に死亡数でも第1位になると予測されています。

食生活と関係の深いがんです

大腸がんの発症率は、男女ともに40〜50歳代から増加をはじめ、加齢とともに上昇していきます。大腸がんの危険因子としては、野菜不足・高脂肪の食生活、過度の飲酒、肥満、運動不足などが挙げられます。また日本人は穀物を中心とした食生活を送ってきた影響により、欧米人に比べて腸が2〜3mほど長くなっており、それに比例して腸に腫瘍などの病変が起こるリスクも高くなっているとされています。

大腸がんは、早期に発見できれば、内視鏡や手術による切除で、そのほとんどが治癒できます。仮にがんが進行した状態で発見されても、その程度が軽い場合や、肺や肝臓に転移が見つかっても手術で切除可能な状態であれば、治ることも少なくありません。

早期に発見できれば多くは治癒が可能な大腸がんですが、自覚症状が現れないことが多いため、40歳を過ぎたら毎年「大腸がん検診」を受けて、便潜血検査を行うことが大切となります。厚生労働省による研究では、過去1年間に大腸がん検診を受けたグループは、検診を受けなかったグループに比べて大腸がんによる死亡率が約70%低下したという報告がなされています。

しかし、大腸がん検診の受診率が未だに低く(2013年の受診率は37.9%)、大きな課題となっています。自治体による大腸がん検診の無料クーポン券の配布や啓発活動によって、受診率は毎年増加しているものの、国の「がん対策推進基本計画」が目標とする50%の到達にはまだ時間がかかりそうです。

大腸がん検診で行われる「問診」、「便潜血検査」、検査結果が"陽性"だった場合に実施する精密検査の内容は以下の通りです。

問診
便秘・下痢を繰り返す、便に血が混じっている、便が鉛筆のように細くなっている、といった大腸がんを疑わせる症状がないかを医師が直接尋ねます。大腸がんの中には、遺伝的な要因で発生するものがあるため、両親、祖父母など、近い血縁者に大腸がんになった人がいないかも尋ねられます。

便潜血検査
いわゆる「検便」です。大腸がんがあると、便が腸内を進むあいだにがんの組織と擦れあって血液が付着します。そこで、採取した便に薬品を加えて調べることで、肉眼では確認できない大腸からの微量な出血を検出するのです。

自宅のトイレでできる検査

他の検査方法と異なり食事制限の必要もなく、自宅のトイレで排便をして採取し、専用の容器に入れて提出するだけでいいので、心身の負担がなく手軽に行えるのがメリットです。検査精度を高めるために、2日連続で便を2回採取する「2日法」を採用するのが一般的です。

大腸がんと診断される人の約50〜75%は、この便潜血検査で発見できるといわれています。ただし、痔、潰瘍性大腸炎、クローン病などによる出血でも検査結果が陽性となることがあるので、陽性反応がでたからといって、必ずしも大腸がんと診断されるわけではありません。

逆に陽性反応が出ても、「どうせ痔に決まっている。精密検査を受ける時間がもったいない」と自己判断をして、医療機関の受診機会を逃してしまう人もいます。陽性反応の結果通知を受け取ったら、必ず大腸内視鏡検査注腸エックス線検査などの精密検査を受けましょう。なお、大腸がん検診の検査結果は、検診を受けてから1か月以内に主に文書で通知されます。

大腸内視鏡検査
先端にCCD(映像を取り込む半導体素子)とライトを取り付けた内視鏡を肛門から挿入して、大腸の中を観察する検査で、5mmほどの小さながんを発見することができます。必要に応じて、がんやがんが疑われる病変の一部を採取して顕微鏡で調べたり、早期のがんならば、内視鏡の先端にある鉗子(かんし:ハサミのこと)で切除することも可能です。

大腸の中に便が残っていると、大腸の隅々を観察できないので、検査前日か当日に下剤を飲んで、大腸を空っぽにする必要があります。なお、大腸内視鏡検査は、検査を行う医師の経験や技術、受診者の体調等により苦痛を感じることがあります。検査中に具合が悪くなったら、我慢せずにその旨を医師に伝えてください。

注腸エックス線検査
肛門から細い管を入れて、そこから造影剤(バリウム)と空気を送り込み、大腸の中をX線撮影する検査方法です。大腸の粘膜壁全体にバリウムが付着することで、腸壁の凹凸、腸が狭くなっている場所が写ります。がんの位置や大きさ・形などを判断するのに適しています。

大腸の中に便が残っていると正しい診断の妨げになるので、検査前日に下剤を飲んで、腸内を空にします。またX線撮影の直前には、食物を移動させるための腸の収縮運動(蠕動:ぜんどう)を止める目的で、抗コリン剤という薬剤を注射します。

自治体が実施する大腸がん検診は、40歳以上の方を対象としていますが、@家族に大腸がんになった人がいる、A高脂肪、低繊維質の食事が多い、B運動不足、C日常的に便秘、D仕事で座る時間が長い、などが該当する方は、40歳以下でも大腸がんのリスクが他の人に比べて高いので、最寄りの医療機関や定期健診で便潜血検査を受けたり、あるいは人間ドックのオプションとして大腸内視鏡検査を追加するのもよいでしょう。


 
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