クレアチニン(Cr)の数値を見れば、腎臓の機能低下の程度を把握できます
筋肉運動のエネルギー源となるアミノ酸の一種クレアチンが代謝されてできた物質です。尿酸や尿素窒素と同様に老廃物のひとつです。クレアチニンは腎臓の糸球体で濾過されますが、尿素窒素とは違って尿細管ではほとんど再吸収されずに、尿中に排泄されます。
クレアチニンを調べると何がわかるのか?
クレアチニンは、腎臓が正常にはたらいていれば、尿として体外に排泄されます。つまり血液中のクレアチニンが多いということは、腎機能が障害されているということになります。
この検査は簡単なうえに、腎臓以外の影響は受けにくいので、腎機能、腎糸球体機能のスクリーニング(ふるいわけ)や経過観察のための検査として行なわれています。
クレアチニンは、筋肉の病気を調べるときにも検査されます。筋肉内で合成されるクレアチニンの量は筋肉の量に比例するため、筋ジストロフィー症などの筋肉の萎縮する病気があるときは低値になります。
しかし、クレアチニンは腎機能(糸球体濾過率)が50%以下になるまでは上昇しないため、軽度の腎機能障害の判定には適当とはいえません。そこで診断にあたっては腎糸球体機能の変化をさらに正確に測定するクレアチニン・クリアランスを行ないます。
クレアチニンはどのように検査するのか?
血液を採取し、酵素を利用した試薬を加え、比色計で色の変化を調べます。食事については制限などはありませんが、検査前日からは激しい運動などは控えてください。
基準値の範囲
- 男性…0.65〜1.09mg/dl
- 女性…0.46〜0.82mg/dl
クレアチニン値は筋肉量に比例するので、一般に女性より男性のほうが10〜20%高値になります。年齢による変動はほとんどありません。高齢者では年齢とともに腎糸球体濾過率が低下しますが、筋肉量を減少するため、ほぼ一定になります。
検査結果の判定
血液中のクレアチニンの数値が高いのは、腎機能が低下していることを示唆し、低い場合は、筋肉に関わる異常を想定します。日本人間ドック学会の判定基準では、男性が1.2〜1.3mg/dl、女性が0.9〜1.0mg/dlは、場合により経過観察が必要とされています。一般に中程度の腎不全では1.5mg/dlを超え、重症では2.4mg/dl以上になります。そして、クレアチニンの値が5mg/dlを超えると回復は難しくなり、10mg/dlが人工透析を始める一つの目安となります。
クレアチニンと尿素窒素は、腎機能が50%前後まで低下しないと高値を示しません。数値に異常があればなんらかの疾患が進行していることが考えられますので、すぐに原因究明を行なうことが必要です。その意味では、境界域でも危険な数値と考えた方がよいでしょう。
異常があったらどうするか?
異常値の原因となっている病気を確定するため、PSP排泄試験、電解質測定、フィッシュバーグ濃縮試験、クレアチニン・クリアランス、腎盂造影、X線CT、腎生検などの検査が行なわれます。
原因となる病気の確定診断がついたなら、治療を開始します。腎不全で老廃物が血液中にたまると、心臓麻痺、腸閉塞、昏睡などの危険性がある尿毒症を起こします。特に急性腎不全の場合は、クレアチニン値が一定以上になると人工透析の必要性も考慮に入れなければなりませんので、迅速な対応が必要となります。腎盂腎炎や腎臓結石の場合、治療によって利尿が進めば、クレアチニン値は間もなく回復します。
日常生活では、塩分やタンパク質の摂取を制限する食事、適度な運動を心がけるとともに、肥満、高血圧、脱水などの憎悪因子を避けるようにしましょう。また、慢性腎疾患ではクレアチニン値を月1〜2回測定し、さらに糸球体濾過率を推定するために、クレアチニン・クリアランスを半年ごとに調べるとよいでしょう。
異常な場合に疑われること
- 高値…急性・慢性腎炎、腎不全、尿毒症、腎盂腎炎、腎臓結石、肝硬変、心不全など
- 低値…筋疾患(筋ジストロフィー)、尿崩症など