病院の検査の基礎知識

妊娠中の検査(母体と胎児の発育をチェック)

妊娠中は定期的に検査を受けて、母体の健康状態と胎児の発育を調べてもらいます。この定期健診は、妊娠初期から6ヶ月までは4週間に1回、妊娠7〜9ヶ月は2週間に1回、妊娠10ヶ月からは週に1回の頻度で受けます。

母体と胎児の検査について

健診には毎回行う検査と、母体の病気のチェックや、妊娠に合併しやすい病気などを早期に発見するための各種の検査があります。定期健診は予定通りに必ず受け、健診予定日の前であっても異常を感じたらすぐに受診しましょう。毎回必ず行われる母体と胎児の検査は以下の通りです。

体重測定
体重の異常な増加は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の兆候である場合があります。また妊娠中に太りすぎると難産になる可能性があります。

血圧測定
妊娠高血圧症候群などの有無を調べます。妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)がみられる状態で、たんぱく尿を伴うこともあります。

母体の血管が収縮し、胎盤への円滑な血流が阻害されるため、胎児の発育に必要な十分な酸素、栄養が送られなくなるリスクが出てきます。また、母体への影響としては、けいれん発作や肝機能の低下、出産前に胎盤が剥がれてしまう常位胎盤早期剥離のリスクもあり大変危険です。

妊娠高血圧症候群は一旦発症すると、妊娠中に治ることはないので、悪化させないための予防と早期発見が肝心です。そのため妊婦検診の定期的な血圧測定と尿たんぱくの検査は重要となります。

子宮底長の測定
子宮底長とは恥骨から子宮底までの長さで、胎児の発育の目安になります。

腹囲の測定
へその高さの位置で子宮の大きさを測ります。脂肪のつき方によって差が大きく、これだけでは胎児の大きさは判定できません。

尿検査
尿中にたんぱくや糖が出ていないかどうかを調べます。

浮腫検査
脚を指で押してむくみをチェックします。妊娠後期はむくみが起きやすく、あまりひどい場合は妊娠中毒症の恐れがあります。

内診
子宮筋腫や卵巣の腫れ、子宮口の硬さや開き具合などを調べます。毎回行わない場合もあります。

妊娠中の検査(合併症や感染症)

胎内感染する恐れのある病気や、自覚症状のない病気などを調べる検査です。血液検査の場合は、1回の採血で複数の検査結果が得られます。検査の種類によって同意を求められることもありますが、受けるようにしましょう。

妊娠中の検査について

血液型検査
分娩時に多量の出血をした際の輸血に備えたり、胎児との血液型不適合の有無を確認するための検査です。ABO式とRh式の検査を行います。

貧血検査
ヘモグロビン(血色素)やヘマトクリット(赤血球の容積率)などを測定し、貧血がないかどうかを調べます。貧血検査は、初期移行も必要に応じて行われます。

梅毒血清検査
母体が梅毒に感染していると、流産、早産などを招いたり、先天性梅毒児が生まれる可能性があります。「梅毒は過去の病気」というイメージは誤りで、近年の感染者数は増加傾向に転じています。

母親の梅毒が胎児に影響を及ぼすのは妊娠4ヶ月以降ですので、それまでに感染に気付いて治療すれば心配要りません。妊婦さんは、妊娠初期の段階で必ず梅毒の検査が行われます。

風疹抗体検査
妊娠初期に風疹に感染すると、胎内感染を起こして「先天性風疹症候群」の赤ちゃんが生まれて、難聴や白内障などの障害が残ることがあります。血液検査によって抗体がないことがわかったら、妊娠中の感染に十分注意します。

B型・C型肝炎抗原検査
B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスの有無を調べます。陽性の場合は出産時に新生児に感染する恐れがあるので、精密検査が行われます。

トキソプラズマ抗体検査
トキソプラズマは、胎盤を通して胎児に感染する恐れがあります。陽性の場合は、妊娠中から治療を行います。

クラミジア検査
性器クラミジア感染症性感染症の一種で、病気が進行すると不妊症、前期破水、早産などの原因になるほか、低出生体重児が生まれやすくなったり、分娩時に母体感染して赤ちゃんが結膜炎や肺炎を起こすことがあります。血液中の抗体検査や子宮頚管内擦過による抗体検査が行われます。

妊娠中の検査(必要に応じて受ける項目)

腹部エコーの様子

超音波検査
画像での診断により、婦人科系の病気の有無や胎児の発育状態、骨盤位、多胎児、形態異常の有無など多くの情報が得られます。妊娠初期は経膣超音波検査といって、膣にプローブを挿入しますが、中期以降は腹部にプローブを当てる方法で検査を行います。

胎児胎盤機能検査
妊娠10ヶ月以降に行う検査で、胎盤の機能が低下していないかどうかを、尿中のホルモンや血液中に放出される特殊なたんぱくから調べます。

胎児心拍陣痛検査
分娩監視装置を使い、40分ほどかけて胎児の心拍数と胎動、子宮収縮を調べる検査です。経過が順調であれば36週以後に行います。胎児の心拍数の変動パターンから、胎児が元気かどうかを測定します。

X線検査
必要に応じて、腹部、胸部、骨盤のX線検査をします。腹部は胎児に形状の異常が疑われる場合に、胸部は結核感染の疑いがある場合に行われます。
骨盤の検査は、骨盤と児頭の大きさが合わない、あるいは骨盤の形状異常が疑われる場合に行い、分娩方法の参考にします。

甲状腺機能検査
甲状腺の機能に異常がないかどうかを調べる検査です。血液検査によって甲状腺ホルモンの量を測定します。

心電図
母体に心疾患があると疑われる場合は、病気を特定するために心電図検査を行います。

膣分泌培養検査
おりものの量が多い、おりものが生臭い、外陰部のかゆみが強い場合などに、細菌検査を疑って行う検査です。なかにはB型溶血性連鎖球菌(GBS)のように、破水や新生児の髄膜炎の原因になるものもあるので、おりものやかゆみなどの自覚症状があれば、検査を受けましょう。


 
Copyright 2023 病院の検査の基礎知識 All Rights Reserved.