病院の検査の基礎知識

尿沈渣によって腎臓や尿路系の病気の種類や部位を推測できます

尿沈渣(にょうちんさ)とは、尿を遠心分離器にかけたときに沈殿してくる赤血球や白血球、細胞、結晶成分などの固形成分のことをいいます。これらを顕微鏡で観察し、尿沈渣の数の増加や有無を調べて、腎臓などの異常の診断や病状の経過観察を行います。この検査は、尿タンパク尿糖尿潜血などの定性検査で陽性(+)と出たときに行なわれます。

顕微鏡での拡大図です

尿沈渣でわかること
この検査は腎臓や尿路系の病気の診断に重要です。尿が腎臓でつくられ尿路や膀胱を通過して排出される間には、剥がれ落ちたりして混入するものを調べることで、腎臓や尿路系の病気の種類や部位を推測することができます。

どのように検査を行なうのか?
採取した尿を5分間ほど遠心分離機にかけると、尿の液状成分と固形成分とが分離します。この固形成分を顕微鏡で観察すると、赤血球や白血球、尿酸結晶、細胞、細菌などが見えます。顕微鏡の一視野の中にあるこれらの数をそれぞれに数えて、生常時より増加していないか、あるいは生常時ならみられないものが見えていないかを調べます。

基準値

  • 赤血球…1視野に1個以内
  • 白血球…1視野に3個以内
  • 上皮細胞…1視野に少数
  • 円柱細胞…1視野に陰性(-)
  • 結晶成分…1視野に少量

検査結果の判定
健康な人でも、赤血球やその他の固形物がごくわずかは見られますが、数が多い場合に、どこにどのような異常があるかがわかります。赤血球や白血球は出血があると考えられ、白血球が多い場合には炎症が起こっていると考えられます。

上皮細胞は粘膜などをつくっている細胞で、炎症があると剥がれ落ちて、尿中に増えます。円柱細胞は腎臓の尿細管を鋳型にしてできたもので、尿細管に異常があると考えられます。結晶は尿酸などの成分が多いために固まってできます。

異常があったらどうするか?
赤血球や白血球は体調の変化などにより一時的に多くなることがあるので、正確な診断のためには必ず再検査を行ないます。その結果、再び異常値が出て感染症が疑われれば、細菌培養検査で原因となっている菌を調べます。

その他の異常値では、おもに腎臓内科や泌尿器科で尿中成分の定量検査、尿素窒素クレアチニン電解質などの血液検査、超音波検査、X線CT検査、腎盂(尿路)造影腎生検などの詳しい検査を受けます。また、結晶成分が多く肝炎や黄疸が疑われる場合は肝機能検査、痛風が疑われる場合は代謝機能検査が内科で平行して行なわれます。

異常な場合に疑われること
それぞれの成分が多いときに考えられる病気は以下の通りです。

  • 赤血球…急性糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、腎腫瘍、腎結石など
  • 白血球…腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎など
  • 円柱細胞…慢性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群など
  • 上皮細胞…膀胱炎、尿道炎など
  • 結晶成分…腎結石、急性肝炎、閉塞性黄疸、痛風など

 
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