病原微生物(病原体)が体内の臓器や組織に侵入して増殖し、生態に何らかの反応を引き起こすことを感染といいます。その結果起こってくる病気を感染症といいます。また、感染しても、発病しないことがあり、これを不顕性感染といいます。
感染症の原因となる病原体は、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、原虫、寄生虫などで、細菌には一般の細菌、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチア、スピロヘータなどが含まれます。
感染経路には、病原体を保有する人や動物、土壌などから直接感染する場合と、空気、水や食べ物、ほかの動物を介して、間接的に感染する場合があります。
- 赤沈…赤血球沈降速度の略で、主に炎症をともなう病気の有無や程度がわかります。
- CRP(C-反応性タンパク)…炎症の早期診断、病気の経過観察に役立ちます。
- ASO検査…高熱や関節痛を起こす病原菌として知られている溶連菌の有無を調べます。
- 細菌検査…臓器の分泌液や血液などから、病気の原因となっている細菌を検出します。
- HBs抗原・抗体…B型肝炎ウイルス感染の有無や、その程度を知ることができます。
- HCV抗体…C型肝炎の感染の有無を調べることができます。
- 結核菌検査…塗沫・培養検査で痰に結核菌が確認されるかどうかを調べます。
- ウイルス抗体価検査…体内に生じる抗体を検出して、ウイルス感染の有無を調べます。
- 腸管出血性大腸菌O157…出血性の腸炎を起こす細菌で、食中毒の原因にもなります。
- ヘリコバクター・ピロリ菌…胃の粘膜に感染するグラム陰性棹菌です。
- 梅毒血清反応…妊婦検診や献血、手術の前後などにも必ず行なわれます。
- HIV抗体検査…エイズウイルスに感染しているかどうかがわかります。
- 寄生虫検査…テープで調べる方法や、血液で調べる免疫学的検査方法があります。
- クラミジア検査…核酸増幅法(PCR法、LCR法)などを用いて検出します。
- ブライダルチェック…結婚前に受ける検診で、妊娠や分娩に影響する疾患を調べます。
ヒトや家畜の腸管に存在する細菌のひとつが大腸菌です。大腸菌のなかには、急性の胃腸炎や下痢を起こすものがあり、特に腸管出血性大腸菌O157(O157)は出血性の腸炎を起こす毒性の強い細菌です。
O157に感染すると、激しい腹痛と下痢を起こします。最初は水のような下痢ですが、ひどくなると腸管から出血して鮮血便となります。発熱をともなわないのも特徴です。
集団食中毒の原因菌となることが多く、子供や高齢者の場合は重症化しやすく、生命に関わることもあるので注意が必要です。
O157は75度以上で1分以上過熱すると死滅するので、食中毒の起こりやすい季節には加熱調理を心がけましょう。
腸管出血性大腸菌O157はどのように検査するのか?
検査方法には、便を培養して調べる方法(培養)と、O157が産生している細胞変性毒素のベロ毒素(VT)を免疫学的に検出する方法(ベロトキシン)があります。
便から菌が検出できるのは、下痢が始まってから5日程度なので、それを過ぎた場合には血清抗体価検査が必要となります。
検査結果の判定
O157が検出された場合は、O157がベロ毒素を産生しているかどうかの検査も必要です。
O157だからといって、全ての菌がベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌だとは限らないからです。
症状がないにもかかわらずベロ毒素を産生する菌であることが確認された場合、こうした人を「無症状病原体保有者」といい、本人に症状がなくても、他の人にうつす可能性があります。
そのため、感染症の法律上は、患者と同様に便の検査でベロ毒素産生菌が陰性になるまでの間は飲食物の製造や飲食物に直接接触するような業務につくことが制限されます。
異常があったらどうするか?
O157の感染が確認され、下痢症がある場合は、安静、水分の補給、消化しやすい食事の摂取に気をつけます。症状が重い場合は、輸液(点滴)を行います。
止痢剤(下痢止め)の使用は、毒素の排泄を遅らせることになるので使用しません。
また、抗菌剤の使用については賛否両論があり、医師の判断のもとで慎重に使用する必要があります。
下痢が長引いたり、激しい腹痛、血便、尿量が少ない、浮腫、出血斑、頭痛、傾眠傾向(眠りたがる)のような症状が認められる場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)の合併が疑われます。
溶血性尿毒症症候群とは、5歳以下の子供や高齢者に発症しやすい急性腎不全のことで、破砕状赤血球を伴った貧血、血小板減少、腎機能障害を3大特徴とする生命に関わる重篤な病態です。
溶血性尿毒症症候群が疑われる場合、尿タンパクや尿潜血反応を調べる尿検査、赤血球数や白血球数、血小板数を調べる血液検査、LDHや血清ビルビリン値を調べる生化学検査、そのほかクレアチニンやGOT・GPTなどの検査を行ないます。
溶血性尿毒症症候群の場合は、すぐに入院した上で、状態を見ながら輸血、血小板輸血、血しょう交換、人工透析などを行う必要があります。
異常な場合に疑われる病気
出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群(HUS)など
O157の感染を予防するためのポイント
- O157は75度以上で1分以上過熱すると死減します。調理するときは、十分加熱しましょう。
- 食品の調理に当たっては、手や調理器具は十分に洗いましょう。
- 調理器具は食品ごとにこまめに流水で洗い、熱湯をかけておきましょう。洗浄した後でしっかり乾燥させましょう。
- 生野菜は流水でよく洗って、肉は火を十分に通して食べましょう。衛生的に扱われているお刺し身やお寿司は安全です。
- 調理した食品は早めに良べましよう。冷蔵庫に入れ低温で保存する場合も、冷蔵庫を過信しないようにしましょう。
赤沈とは赤血球の沈降速度を測定する検査で、一般に血沈とも呼ばれています。
血液を細長い管に入れ、固まらないように抗凝固材を加えてから管を立てておくと、やがて赤い赤血球が下へ沈み、上澄みのような透明の血漿が上に残ります。液の上端から赤と透明の境界線までの長さが赤血球の沈んだ距離に相当し、1時間にどれくらい沈んだかをみます。
赤沈(血沈)で何がわかるのか?
主に炎症をともなう病気の有無や程度がわかりますが、異常がなくても異常値を示すことがあり、逆に、明らかに病気であるのに正常値になることもあるため、この検査だけで診断を下すことはできません。また、特定の病気を診断するという性格のものでもありません。
検査の手順が非常に簡単な上、さまざまな病気のときに異常値を示すことから、本格的な検査に入る前の、早期に異常を発見するため、あるいはあらかじめ異常個所などをチェックしておくためのスクリーニング(ふるい分け)検査としてよく用いられます。
赤沈(血沈)はどのような検査か?
血液を採取して行なわれます。採取した血液に抗凝固剤を混ぜてガラス管に入れ、1時間後に赤血球が何mm沈んだかを計ります。
基準値とその範囲
- 男性…1〜10mm(1時間後)
- 女性…2〜15mm(1時間後)
変動範囲は個人差もありますので20mm以内であれば、あまり問題にはなりません。
ただし、女性では軽い貧血があるときや妊娠後期、生理時に沈降が進み、やや高値になります。
検査結果の判定
異常とみなされるのは男女とも20mm以上です。
軽度の亢進(20〜50mm)で考えられるのは、気管支炎、肺結核初期、貧血などです。
中程度(50〜100mm)の場合は、悪性腫瘍、肺炎、肺結核、肝硬変、血友病などが考えられます。
100mm以上の高度亢進では、白血病などの血液系統の悪性腫瘍、腹膜炎の疑いがあります。
異常があったらどうするか?
虫刺されやちょっとした外傷でも異常値を示すことがありますから、これが異常だからといって病気だとはいえません。
また、いろいろな病気で赤沈は異常値になりますから、この検査だけでどの病気かを判定することはできず、身体症状やその他の検査(CRP検査、赤血球数、血清たんぱく分画検査など)によって診断が下されます。
異常な場合に疑われる病気
高値の場合
- 感染症…肺炎、結核、気管支炎、梅毒、腎盂腎炎など
- 心臓病…心筋梗塞、心内膜炎、心筋炎など
- 消火器病…肝炎、胆のう炎、膵炎、潰瘍性大腸炎など
- 免疫の異常…全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチなど
- 血液病…多発性骨髄腫、白血病、悪性貧血など
- がん…ほとんどの進行中のがん
低値の場合
多血症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、低フィブリノゲン血症など
CRPとは、C-リアクティブ・プロテインの略で、炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するたタンパク質のことです。肺炎血球(ストレプトコッカスニューモニエ)が持っているC多糖体に反応するため、C反応性タンパクと名づけられました。
当初は肺炎に特有のタンパクと考えれられていましたが、炎症や組織破壊のある病気なら必ずCRP値が陽性を示すため、この検査で病気を特定することはできません。
しかし、病気の進行度や重症度、経過、予後などを知るうえでは大切な指標となっています。
CRPはの検査は、血沈や白血球数など、ほかの炎症検査と一緒に行なわれます。
特に血沈値の増加より早く陽性になり、回復期には早く陰性を示すため、CRPの検査と血沈検査の併用は、病気の経過観察に重要な役割を果たしています。
CRPを調べると何がわかるのか?
炎症が起こったときに、24時間以内に急増し、2〜3日後には減少するので、炎症の早期診断に役立ちます。また、ほかの検査と組み合わせることによって、急激な組織の破壊や病気の重症度、経過、治療成績などを判定することができます。
また、狭心症ではCRPは陰性ですが、急性心筋梗塞では陽性・高値となりますので、これらを鑑別する指標としても用いられています。
さらに、クラミジアなどによる慢性炎症が急性心筋梗塞の原因となることが近年の研究で判明し、このような場合にも低濃度のCRPの上昇が認められます。
CRPはどのように検査するのか?
毛細管法と生化学的な定量法がありますが、毛細管法では結成を毛細管に入れ、そこにCRP抗血清を混入、37度の温度で2時間、4度の温度で一晩冷やします。血清中にCRPがあればCRP抗血清と反応して白い沈殿物がありますが、その沈殿物の有無と高さによって陰性か陽性かを判定します。
検査結果の判定
陰性(正常値)は沈殿物がまったく認められなかったときで、要請はその程度によって(+)から(6+)までの6段階に分けられます。定量法では3〜5mg/dl以上が異常とされています。
異常があったらどうするか?
各種の検査を総合して診断が下されます。炎症疾患の回復期や、潜在的な細菌感染症が疑われる病態では、症状・病勢にあわせて、繰り返し検査を行ないます。
また、風邪などでも上昇することがあるので、この場合は、症状が落ち着いた時期に検査し、潜在的な炎症や疾患の有無を判定します。
異常な場合に疑われる病気
陽性の場合はまず、リウマチ熱、リウマチ様関節炎、気管支肺炎、耳下腺炎、骨髄炎、尿路感染症などの炎症性の病気が疑われます。また、心筋梗塞やがん、肉腫などの組織破壊を伴う疾患や、急性胃炎、白血病、急性骨炎でも陽性になります。
結核に感染しても、多くの人は発病せずに、結核菌が体内で生き続けます。ストレスや栄養不良などでからだの抵抗力が落ちてくると、その結核菌が増殖し、発病します。
現代の高齢者は、若いうちに感染していることが多く、突然発病する可能性がありますので注意しましょう。
結核菌の有無を調べる検査には、主に次のようなものがあります。
ツベルクリン反応
結核菌の培養液から抽出した精製タンパク質(PPD)を前腕部の内側の皮膚に注射し、48時間後、皮膚に一定の大きさの赤斑が出るか確認します。
塗沫検査
痰を採取し、ガラス板に塗沫してチール・ネールゼン染色という特殊な染色法を施し、顕微鏡で観察します。
培養検査
塗沫検査だけで菌が確認できなかった場合には、痰を特殊培地で1ヶ月ほど培養・発育させたうえで、再び検査を行います。培地で発育した菌は抗酸菌といいます。
結核菌のほかにも非定型坑酸菌が育ちますが、これはナイアシンテストという方法で鑑別できます。
検査を受けるときの注意
検査用の痰が採取できたら、表面が乾かないうちに速やかに提出します。ツベルクリン反応では、注射した皮膚をかきむしらないようにしてください。
基準値
塗沫・培養検査で痰に結核菌が確認されなければ陰性(-)で異常なし、ツベルクリン反応で皮膚に一定の大きさの赤斑が出れば陽性(+)で正常です。赤斑がなければ陰性(-)です。
結核の予防注射(BCG)を受けていると、ツベルクリン反応が陽性になります。陰性の場合にはこの予防注射が必要です。
検査結果の見方と判定
塗沫・培養検査で痰に結核菌が確認されれば陽性(+)で、結核と診断されます。
ツベルクリン反応では皮膚に一定以上の大きさの赤斑が出れば強陽性(++以上)で、結核にかかっている疑いがあります。その場合は、胸部X線検査やたんの塗沫・培養検査、白血球数、赤沈、CRP(C-反応性タンパク)など複数の検査を行い、結核かどうかの確定診断が行われます。
細菌検査とは、細菌による感染を受けた臓器の分泌液や血液などから、病気の原因となっている細菌を検出する検査のことです。
感染症にかかると、発熱やはれ、痛みなどの自覚症状が起こり、毛付け期中の白血球や血沈、炎症反応などで診断できます。しかし、病気や症状によっては、原因菌がわからないと、根治が困難な場合があります。そのようなときに、この細菌検査が重要な役割を果たします。
細菌検査で何がわかるのか?
血液
静脈から血液を採取して、含まれる細菌を調べます。敗血症、感染性心内膜症、腸チフス、パラチフス、グラム陰性桿菌感染症などが疑われるときに行ないます。
痰(たん)
咳をして痰を排出し、容器にとります。肺炎、気管支炎、肺結核などが疑われるときに行ないます。
鼻汁
鼻をかんで鼻汁を採取します。鼻炎や副鼻腔炎のときに行ないます。
耳漏
耳から漏れ出る分泌液を採取します。外耳道炎や中耳炎のときに行ないます。
胃液
口から細い管を挿入して採取します。結核やアニサキス症が疑われるときに行ないます。
胆汁
口から細い管を挿入して採取します。胆嚢炎、胆管炎、膵炎などが疑われるときの行ないます。
髄液
背中から脊髄腔に針を刺して、髄液を採取します。髄膜炎が疑われるときの行ないます。
尿道や膣の分泌液
尿道や膣から分泌する液を採取します。淋病やクラミジアなどの性感染症(STD)、尿道炎、膀胱炎、トリコモナスやカンジダの感染症、膣炎、子宮頚管炎、子宮内膜症などが疑われるときの行ないます。
検査を受けるときの注意
細菌によっては特殊な染色をしたり、1週間ほど培養しないと、発見できないものもあります。
のどの粘膜を拭って検体とすることもありますが、このようにして検体を得る場合は、ほかの細菌による感染を招かないように注意します。
異常があったらどうするか?
病気の原因となる細菌が確認されたら、抗生物質による治療が行なわれます。
現在は、大部分の細菌感染に対して有効な抗生物質が開発されていますから、心配はいりません。
しかし、自己判断で治療を中断すると、抗生物質の効かない耐性菌をつくる原因となりますので、医師の指示にきちんと従って治療を行なってください。
細菌が陽性の場合に疑われる病気
- 血液…敗血症、感染性心内膜症、チフス性疾患
- 髄液…髄膜炎
- 喀痰…肺炎、気管支炎、肺結核
- 耳漏…外耳道炎、中耳炎
- 胆汁…胆嚢・胆道感染症、膵炎、チフス
- 胃液…肺結核、アニサキス症
- 尿…腎盂腎炎、膀胱炎、チフス、ワイル病
- 便…赤痢、サルモネラ、腸炎ビブリオ、コレラ
ASOとは、正しくは抗ストレプトリジン-Oといい、腎炎や猩紅熱(しょうこうねつ)、扁桃炎、中耳炎などの引き金になる溶連菌(溶血性連鎖球菌)に感染すると、それに対抗するために血液中に出現する抗体のことを指します。
多少の差はありますが、成人なら普通は誰でも溶連菌の感染歴があり、体内に抗体を持っています。そのため、血液を調べると、健康な人からもASOが検出され、その数値の大きさから、現在も溶連菌に感染中かどうかなどが診断できます。
ASO検査で何がわかるのか?
溶連菌に感染すると、しばしば咽頭炎、扁桃炎、中耳炎などを起こし、続いて急性糸球体腎炎やリウマチ熱、敗血症などを起こすこともあります。それらの病気の原因が溶連菌であるかを知ることができます。
ASO検査はどのような検査か?
血清を用いて測定します。ASOは健康な人でも変動があり、明らかな陽性の場合以外は2週間以上の間隔で再測定し、2段階以上の変動があれば陽性と判断します。
溶連菌の中には、ストレプトリジン-O以外の毒素を作る菌もいて、この場合は溶連菌に感染していてもASOは陰性になるため、ほかの測定法(抗ストレプトキナーゼ、ASK)を行ない、溶連菌感染の有無を調べます。
ASOの基準値
ASOの基準値は、年齢により変動します。一般的なランツランドル法では、成人の基準値は166ToDDU以下が目安ですが、乳児期は100ToDDU以下、小児期は256ToDDU以下となっています。
検査結果の判定
ASO検査で170ToDDU以上の高値なら、感染中と考えてよいでしょう。
溶連菌が引き起こす感染症には、咽頭炎や扁桃炎の上気道感染症や、中耳炎、皮膚が化膿する蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの局部的感染症、敗血症や産褥熱などの全身的感染症があります。
また、上気道に感染したあとのリウマチ熱、急性糸球体腎炎も考えられます。
異常があったらどうするか?
溶連菌の感染で怖いのは、体の免疫機構に及ぼす影響とそれによる腎臓や心臓の障害などです。
溶連菌感染症のすべてが免疫機構を混乱させるとは限りませんが、経過が悪い場合は注意が必要です。内科で何回かASOの検査を繰り返して確かめ、ほかの検査で異常がないかどうか慎重にみていきます。
糸球体腎炎が疑われる場合は腎臓内科で、リウマチ熱による関節炎が疑われる場合は整形外科で、心内膜炎が疑われる場合は循環器科で、直ちに詳しい検査と治療を受ける必要があります。
異常な場合に疑われる病気
- 高値…急性リウマチ熱、急性糸球体腎炎、急性咽頭炎、中耳炎、しょう紅熱(溶連菌感染症)、急性扁桃炎、関節リウマチなど
- 低値…免疫不全症候群など
ウイルスに感染したとき、血液や分泌物からウイルスを検出すれば確実に診断を下すことができます。しかし、ウイルスそのものを検出するのが難しいことが多いので、ウイルスに感染したときに体内に生じる抗体を検出することによって、ウイルスに感染したかどうかを調べる検査が行なわれます。これがウイルス抗体価検査です。
ウイルス(抗原)が体内に入ると間もなく、抗原に対抗する抗体という物質をつくります。抗体は免疫グロブリンというタンパク質で、そのうち感染の防御に関係しているのはIgMとIgGです。
IgMはウイルスが体内に入ってくると間もなく増え始め、約2週間でピークに達した後減少して、1〜2ヶ月でほとんどなくなります。
一方、IgGはIgMに数日遅れて出現し、IgMが減少を始めても増え続け、ウイルスを退治した後も高い値を続けます。IgGはその後少しずつ減っていきますが、同じウイルスが再び侵入すると、2〜3日で急に増加してウイルスを追い払い、そのウイルスに感染することはなくなります。
ウイルス抗体価検査で何がわかるのか?
ウイルス抗体価検査には、ペア血清検査とIgM抗体検査があります。ペア血清検査は感染した直後と、それから10〜14日後に、血清を採取して抗体の量を調べます。
IgM抗体検査は、発症してすぐに血液を採取してIgM抗体だけを調べ、その値が高ければ新たにウイルスに感染したということになります。なお、抗体の検査は感染してから約2週間くらいたたないと検出できないので、感染して間もない時期の診断には役に立ちません。
ウイルス抗体価検査はどのような検査か?
血液を採取し、血清を分析器にかけて検出します。
異常があったらどうするか?
自覚症状やその他の検査から病気を診断し、治療が必要な場合には医師の指示に従って治療を進めます。風疹は、妊婦が感染すると、胎児が奇形(先天性風疹症候群:胎児の感覚器が形成される妊娠3ヶ月以内の感染が影響します)となるため、妊婦では罹患時期を特定することが重要になります。IgM抗体が検出された場合には、3ヶ月以内に感染があったと考えられます。
異常な場合に疑われる病気
風疹、麻疹、ウイルス肝炎、エイズ、成人T細胞白血病(ATL)、ポリオ、クラミジアなどのウイルス感染症
HIV(エイズウイルス)抗体検査とは、エイズに感染していないかを調べる検査です。健康な人の体は、外からウイルスが侵入すると、免疫細胞がはたらいて抗体をつくり、それらを攻撃する仕組みなっています。
ところがエイズウイルスの場合は、その免疫機構に重要な役割を果たしているヘルパーT細胞の中に侵入し、免疫機構を破壊してしまいます。細胞内に侵入したエイズウイルスは、ヘルパーT細胞が分裂する際、自分のコピーを作って一緒に分裂し、その細胞膜を破って、別のヘルパーT細胞に侵入していきます。
こうして免疫機構が破壊されてしまうと、健康な体だとかかりにくい病気におかされて、死に至ります。その代表的なものが、カリニ原虫によるカリニ肺炎や、肺や消火器に炎症を起こすカンジダ症などです。
HIV抗体検査で何がわかるのか?
エイズウイルスに感染しているかどうかがわかります。
エイズウイルスは感染者の血液や精液、膣分泌液などの体液を通じて、体の粘膜や傷口から侵入し、4〜7年の潜伏期を経て発病します。
ところが、キャリアと呼ばれる感染者でも潜伏期の間は健康な人と変わりなく元気なため、接触した人に知らずに感染させる危険があります。
エイズ患者だけではなく、キャリアの状態にある人も含めて、防疫対策の面からもHIV抗体を調べる検査は欠かせないものなのです。
HIV抗体検査はどのような検査か?
血液を採取して行ないます。エイズに感染しているかどうかを調べるには、血清の中にエイズウイルスに対抗する抗体ができているかどうかで確かめます。なお、感染後6〜12週間たたないと抗体はできません。
検査法には酵素抗体法(エリザ法)、凝集法(PA法)、間接蛍光抗体法(IF法)、ウエスタンブロット法(WB法)などがあります。エリザ法やPA法は感度がよすぎて、エイズ抗体以外に対しても陽性になることがあります。そのため、エリザ法やPA法でまずスクリーニング(ふるいわけ)検査を行ない、IF法、WB法などで確認試験を行ないます。
判定の基準
エリザ法やPA法で陰性(-)なら正常です。またこの検査で陽性(+)と出ても、他の抗体による陽性(偽陽性)の可能性があります。そのため、同じ方法で2回目を行ない、さらにIF法、WB法で陰性なら正常です。
医療機関の検査で陽性と判定されたとしても、その結果が本人以外の人に知らされることはなく、秘密は堅く守られます。
また、保健所では、無料で匿名の検査を予約制で行なっています。
検査を受けるときの注意
エイズに感染してから抗体ができるまで6〜12週間かかるといわれています。そのため、感染の可能性があってまもなく検査を受けても判定はできません。感染が疑われるときから3ヶ月以上してから検査を受けましょう。
異常があったらどうするか?
感染してから発病するまでに、1〜10年はかかるとされていますが、様々な薬が開発されて、多種類の薬を併用することにより、発病や進行はかなり抑えられるようになって来ています。
また、これからも特効薬が開発される可能性もあり、感染したからといって決して絶望する病気ではありません。体力の低下を招かないように、不摂生と過労を避け、栄養バランスの取れた食事と規則正しい生活を心がけましょう。
異常な場合に疑われる病気
エイズ、日和見感染(カリニ肺炎、カンジダ症、トキソプラズマ症、クリプトスポリジウム症、ヘルペスウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、真菌感染症)、カポジ肉腫、リンパ腫など
近年、若い世代に増えている非淋菌性尿道炎のほとんどはクラミジア・トラコマチスという病原微生物の感染によって起こります。男性では尿道の出口がかゆくなり、白く濁った尿が出て、排尿痛や熱っぽさをかんじます。女性では薄いおりものがある程度ですが、そのうち黄色い色がついてきます。
男女ともに症状としては軽いものですが、放置していると菌が性器内部まで入っていき合併症を起こします。男性では慢性前立腺炎や精巣上体炎になる場合があります。
女性は尿道が短いために菌が膀胱へ達しやすいため、膀胱炎になったり、膣から子宮頚部におよんだ場合には、子宮頚管炎を引き起こすこともあります。
クラミジアの検査はどのように行うのか?
受診する診療科は、性病科もしくは泌尿器科(男性)・産婦人科(女性)になります。まず問診を行って、男性で尿道炎が疑われる場合は尿沈渣を行って白血球の有無を確認します。クラミジアの検出には核酸増幅法(PCR法、LCR法)、抗原検査法などを用います。
核酸増幅法は精度が高く、尿を検体として用いるので簡易性にも優れています。女性では子宮頚管から分泌物を採取し核酸増幅法にてクラミジアを検出し診断します。
以前は血液中の免疫グロブリン(Ig)のうち、IgA抗体とIgG抗体を調べる血液検査が行われていましたが、過去の感染しか判定できず、現在は治癒していても陽性反応を示すため、日常診療での使用機会は減っています。
梅毒にかかっているかどうかを調べる検査です。梅毒はトレポネーマ・パリズムという病原微生物によって引き起こされる病気で、陰部のしこりやリンパ節の腫れからはじまって、最終的には心臓や脳、脊髄などがおかされて死に至ることもあります。
抗生物質の普及によって以前のように恐れられることはなくなりましたが、現在でも潜在的な感染者はかなりいると考えられています。母子感染の危険性も高く、妊婦にはこの梅毒血清反応が欠かせません。また、人間ドックの血液検査にはたいていこれが含まれています。
梅毒血清反応はどのような検査か?
梅毒血清反応には、大きく分けて2つの方法があります。
1つは、牛からとったカルジオリピンという脂質を抗原とし、血清の中の抗体と反応するかどうかを調べる方法です。これには昔からあるワッセルマン反応のほか、緒方法、ガラス板法などがあり、STSと総称されています。
もう1つは、梅毒の病原体そのものを抗原とし、血清をくわえて反応を見るTPHAテストやFTA-ABSテストなどの方法で、TPといいます。
STSは、感染から4週間前後で陽性になりますが、TPはさらに遅いために、一般の梅毒のスクリーニング(ふるいわけ)検査にはSTSが用いられます。
またSTSは、梅毒の病態が第1期から第3期へと進むに連れて反応が強くなります。しかし、治療とともに反応は弱くなり、完治すれば陰性になります。そのため、STSは治療効果を見る上でも大切な目安となっています。
検査結果の判定
まず、スクリーニングとしてSTSが行なわれます。STSは梅毒だけではなく、膠原病や肝臓病、妊娠などでも陽性と出る(偽陽性)ことがあるので、要請の場合はさらにTPHAを行ない、これも陽性であれば梅毒だと診断されます。
STSが陽性でTPHAが陰性の場合は、さらにFTA-ABSを行ない、これが陽性であれば梅毒と診断されます。
なお、梅毒に感染したあと抗体が検出されるまでには、STSの場合は約4週間、TPHAではさらに2週間くらいかかるため、感染が疑われた場合は、4週間以上たってから検査を受けるとよいでしょう。
検査結果が陰性と出ても、疑わしい場合には3〜4週間後に改めて検査を行なうこともあります。
異常があったらどうするか?
抗体の量を調べる定量検査を行ない、病気の状態を調べ、ペニシリンなどの抗生物質を中心にして治療を進めます。
梅毒トレポネーマを完全に退治するには大量の抗生物質を長期間にわたって使用しなければなりません。治療を中断したり、自分の判断で薬の量を変えたりせずに、医師の指導の下で完治するまで続けましょう。血液や体液を他人に触れさせないようにすることも大切です。
異常な場合に疑われる病気
梅毒、膠原病、マラリア、γ(ガンマ)-グロブリン異常症など
「寄生虫は過去のもの」と考えている人が多いようですが、そうとは言い切れないのが現状です。たしかに、回虫やコウ虫などの土壌感性性寄生虫疾患は、戦後激減しました。しかし、海外渡航者などが持ち帰る輸入寄生虫症や新しい寄生虫症は、現在増加の傾向を示しています。
寄生虫の多くは、食べ物とともに卵や幼虫の状態で人体に入りますが、これが体内に寄生し、卵やときには幼虫が、便に混じって排泄されます。これらを検出して調べるのが、寄生虫検査です。便を用いてそのなかの卵や成虫を検出する糞便検査、肛門に貼った特殊なテープを調べる方法や、血液で調べる免疫学的検査方法があります。
糞便検査
便の中に虫卵を排出する寄生虫は、便を顕微鏡で観察して、卵や虫体を検出します。このために行なうのが、直接薄層塗抹法や集卵法です。便を肉眼で観察して、寄生虫を認める場合もあります。ある種類の条虫がいると、便のなかに白い片節があったり、ぎょう虫なら表面に糸屑のようなせいちゅうがふちゃくしていることがあります。
セロテープ肛門検査法
ぎょう虫は夜中に肛門付近に産卵します。特殊なセロテープを肛門に貼って、これで採取した卵を顕微鏡で観察します。
免疫学的検査法
便のなかに寄生虫やその卵が認められない場合に有効なのが、血液で調べる免疫学的検査です。特異性という点で問題があるものの、血液か感染に対する体内の免疫反応を調べる方法です。