病院の検査の基礎知識

特定の病気を念頭に受診者が選択して受ける人間ドックの追加検査

人間ドックには「オプション検査」と呼ばれる検査があります。基準検査のほかに、受診者が選択、希望して別料金で受ける追加検査のことです。ある特定の病気を示す異常があるかどうかを調べるために行われます。

脳梗塞が心配な方は脳ドックへ

喫煙歴が長い人や、家族にがんや脳卒中、心臓病に罹った人がいる場合などは、一般の人に比べて病気を発症する危険性が高いといえますので、自分にあった健康管理をするためにも、オプション検査を受けておくとよいでしょう。検査には大きく分けて、がんに関する検査とそれ以外の生活習慣病に関する検査があります。

がんのオプション検査
基準検査でも、がんに関する検査は行われますが、ごく小さな早期のがんを見つけることが困難な場合もあります。そこでオプション検査では、より精密な画像検査などを行います。

肺がんではマルチスライスCT、大腸がんでは大腸内視鏡検査、前立腺がんでは腫瘍マーカー(PSA)や超音波検査、乳がんではマンモグラフィ、子宮がんでは細胞診などが代表的な検査となっています。

生活習慣病のオプション検査
よく知られているのは「脳ドック」で、脳梗塞やくも膜下出血を起こす危険性がないかをMR(MRIMRA)、頚動脈超音波で詳しく調べます。脳ドックでは、きわめて初期の認知症を見逃さないための神経心理検査なども行われます。

また、心臓の機能の形態を運動負荷心電図心臓超音波マルチスライスCTで詳しく調べる「心臓病ドック」や、X線や超音波で骨粗鬆症の重要な要因である骨密度の検査を行う「骨粗鬆症ドック」などもあります。

人間ドックは、生活習慣病のリスクが高まる30代〜40代は2年に1回の頻度、脳卒中や心臓疾患(心筋梗塞、狭心症ほか)、がんのリスクが高まる50歳を過ぎたら毎年受けることが勧められます。オプション検査の中でも、脳や心臓病ドックなどは、検査が大がかりで、基準検査とは別の日に受けることもあります。

これらは毎年受ける必要はありませんので、1年に1つずつ種類の違うものを受けるようにすると、数年間で一通り全身を調べることができます。

動脈硬化を調べる人間ドックのオプション検査

日本人の死亡原因のおよそ6割は、がん、心疾患、脳血管疾患の3つで占められています。このうち、心疾患と脳血管疾患は、動脈硬化の進行と深く関わっています。その動脈硬化の可能性を調べ、心疾患と脳血管疾患の予防につなげる検査を、人間ドックのオプション検査で受けられるようになっています。

医師が検査結果を説明します

動脈硬化の可能性を調べる検査には、血液や尿を採って調べる方法と、超音波で血管の壁を観察する方法があります。血液検査では「C反応性たんぱく(CRP)」と「インスリン抵抗性指数」を、尿検査では「微量アルブミン」の値をそれぞれ調べます。

C反応性たんぱく(CRP)
近年、動脈硬化は「血管が炎症を起こした状態」と考えられるようになっています。そこで、炎症が起きているかどうかを血液中のC反応性たんぱく(CRP)という物質を調べるのがこの検査です。一定量以上検出された場合は、動脈硬化の危険度が高く、心疾患や脳血管疾患の発祥につながりやすいと予測することができます。

インスリン抵抗性指数
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれる際に必要なものです。そのインスリンの効きが悪くなると、血液中のブドウ糖(血糖)が増え、同時に、血糖の濃度を下げるためにインスリンが大量に分泌されます。こうなると動脈硬化の危険性が高まってきます。

したがって、インスリンが上手く効かなくなる「インスリン抵抗性」の程度を調べれば、動脈硬化の進み具合を調べることができるわけです。内臓脂肪の多い人は、脂肪細胞からインスリンの効きを抑制する物質が分泌されるので、特に注意が必要です。

微量アルブミン
アルブミンはたんぱく質の一種で、体に必要な成分なので通常は体から排泄されません。しかし、腎臓の糸球体という細い血管のかたまりに炎症が生じると、アルブミンが尿の中に漏れ出てきます。そのため、尿検査で微量のアルブミンが検出された場合は、血管に炎症が起こっている可能性が高く、動脈硬化の危険性が高いと考えられます。

頚動脈超音波検査
動脈硬化の進み具合を実際に確認するため、体の外から頚動脈に超音波を当て、血管の壁の状態を観察する方法が、頚動脈超音波(頚動脈エコー)です。動脈硬化の進行状態を具体的に調べる検査としては、簡便で精度が高いとされています。

血管脈波検査
動脈硬化を診断するためには、血液を送り届けるという血管の機能を調べる「血管脈波検査」も行われます。この検査では、動脈の硬さを評価するCAVI(心臓足首血管指数)、下肢の動脈の狭窄・閉塞を評価するABI(足関節上腕血圧比)の測定が行われます。

人間ドックで発見されるがんの8割は早期がん

人間ドックで発見されるがんは、男女合わせると胃がんが最も多く、女性に限った場合は、乳がんが増えています。人間ドックで見つかるがんのおよそ8割は、早期がんだとされています。早期発見に有用な画像検査には、次のようなものがあります。

PET(陽電子放射断層撮影)
陽電子を放出する放射性医薬品を静脈から注射して、陽電子によって出される放射線を特殊なカメラを使って画像化します。がんの検査の場合には、ブドウ糖に似た放射性医薬品を使います。

がん細胞は、正常な細胞よりもブドウ糖の消費量が多いので、この薬剤は細胞に多く取り込まれます。つまり、がんのあるところから放射線が多く放出され、それが画像に映し出されて、がんの所在が明らかになるのです。

PET検査は、一度に全身を撮影できるうえ、5mm程度の小さながんを見つけることも可能です。しかし、前立腺や腎臓、膀胱など、放射線医薬品を尿とともに排泄する部分のがんは見つけにくいのが欠点です。

検査時間は、一度に全身を撮影するので、2時間程度かかります。また、特殊な装置が必要なため限られた医療機関でしか行えません。

マルチスライスCT(コンピュータ断層撮影)
CT検査は、体を輪切りにするようにエックス線撮影し、コンピュータで処理をして画像に表わすものです。マルチスライスCTは、通常のCTよりも細かい間隔で、高速で体を連続撮影することができます。

従来のCTでは画像と画像の隙間にあって見逃されてきたような小さな病巣や血管の異常を発見することが可能です。また、得られたデータから、鮮明な三次元の立体画像を作ることもできます。検査時間は5〜15分程度です。

マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)
圧迫版で乳房を上下と左右から挟み、エックス線撮影する検査です。ごく小さながんや、石灰化(がん細胞の中心部が死んで、カルシウムが沈着して固まった状態)をとらえることができ、しこりになる前の早期の乳がんを発見できます。厚生労働省は、40歳以上の女性の乳がん検診には、マンモグラフィーを使用すること勧めています。


 
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