病院の検査の基礎知識

健康診断の目的と検査項目

健康診断(健診)は、特に自覚症状のない人が、自分の健康状態を知って生活習慣病を予防したり、隠れた病気を発見するために行われます。健康診断には、職場や自治体の健診などがあります。企業などに勤めていないと受けにくいことがあるかもしれませんが、健診の大切さを理解し、1年に1回は受けるようにしましょう。

検査項目
健診では、医師による診察をはじめ、血圧測定、尿検査、血液検査、肺機能検査胸部エックス線検査心電図検査視力検査眼圧測定眼底検査などが行われます。尿検査では、尿糖尿たんぱく尿潜血反応など、血液検査では総コレステロール血糖GOT(AST)、GPT(ALT)γ-GTP赤血球数などさまざまな項目を調べます。

検査項目の数は、職場や自治体などによって異なります。「人間ドック」の場合は、健診より検査項目が多く、オプションの検査を加えることもできます。
健診や人間ドックでは、検査項目ごとに、結果を数値で表したり、異常の有無を示します。また、複数の項目から、脂質代謝、糖代謝、肝機能、腎機能などを調べ、「異常なし」「経過観察」「要再検査」「要精密検査」などと判定されます。

基準値について
数値で示される検査項目には「基準値」が設けられています。健康な人の集団の検査値をもとに、その95%の人が含まれる範囲を統計的に求めた値が基準値とされ、医療機関ごとに値が違うことがあります。各検査値が基準値の範囲内であれば、問題ないとされます。

生活習慣病を予防する
毎年の検査結果は保管しておき、今回と前回の値を比べてみましょう。基準値の範囲内であっても、前年から大きく変動している場合は、注意が必要です。
例えば、総コレステロール値が高くなっている場合は、現在の生活習慣をそのまま続けるとさらに値が上昇し、「脂質異常症(旧:高脂血症)」になる可能性があります。

また、生活習慣病に関係する検査項目の場合、値が基準値の範囲を少々外れていても、「再検査」ではなく、「経過観察」と判定されることがよくあります。これは、「すぐに治療を始めるほどではないが、生活習慣病を改善する必要がある」という意味です。
生活習慣病があると、動脈硬化が進み心筋梗塞などが起こりやすくなります。その予防のためにも、生活習慣の改善に取り組みましょう。

隠れた病気を見つける
「要再検査」あるいは「要精密検査」と判定された場合、病気がある可能性があります。必ず医療機関を受診して診断を受けたり、治療を受けることが大切です。

オプション検査

人間ドックには、「オプション検査」と呼ばれる検査があります。基準検査のほかに、受診者が選択、希望して別料金で受ける追加検査のことです。ある特定の病気を示す異常があるかどうかを調べるために行われます。

乳がんや子宮がんは若くして発症することもあります

たばこを吸う人や、家族にがんや脳卒中、心臓病の人がいる場合などは、病気を発症する危険性が高いといえますので、自分にあった健康管理をするためにも、オプション検査を受けておくとよいでしょう。検査には大きく分けて、がんに関する検査と、それ以外の生活習慣病に関する検査があります。

がんのオプション検査
基準検査でも、がんに関する検査は行われますが、ごく小さな早期のがんを見つけることが困難な場合もあります。そこで、オプション検査では、より精密な画像検査などを行います。
肺がんではマルチスライスCT、大腸がんでは大腸内視鏡検査、前立腺がんでは腫瘍マーカー(PSA)や超音波検査、乳がんではマンモグラフィ、子宮がんでは細胞診などが代表的な検査となっています。

生活習慣病のオプション検査
よく知られているのは「脳ドック」で、脳梗塞やくも膜下出血を起こす危険性がないかをMR(MRIMRA)、頚動脈超音波で詳しく調べます。脳ドックでは、きわめて初期の認知症を見逃さないための神経心理検査なども行われます。

また、心臓の機能の形態を運動負荷心電図心臓超音波マルチスライスCTで詳しく調べる「心臓病ドック」や、エックス線や超音波で骨密度を調べる「骨粗鬆症ドック」などもあります。

人間ドックは、40歳を過ぎたら毎年受けることが勧められます。オプション検査の中でも、脳や心臓病ドックなどは、検査が大がかりで、基準検査とは別の日に受けることもあります。これらは毎年受ける必要はありませんので、1年に1つずつ種類の違うものを受けるようにすると、数年間で一通り全身を調べることができます。

人間ドック:動脈硬化を調べる検査

日本人の死亡原因のおよそ6割は、がん、心疾患、脳血管疾患の3つで占められています。このうち、心疾患と脳血管疾患は、動脈硬化の進行と深く関わっています。その動脈硬化の可能性を調べ、心疾患と脳血管疾患の予防につなげる検査を、人間ドックのオプション検査で受けられるようになっています。

動脈硬化の可能性を調べる検査には、血液や尿を採って調べる方法と、超音波で血管の壁を観察する方法があります。血液検査では「C反応性たんぱく(CRP)」と「インスリン抵抗性指数」を、尿検査では「微量アルブミン」の値をそれぞれ調べます。

C反応性たんぱく(CRP)
近年、動脈硬化は「血管が炎症を起こした状態」と考えられるようになっています。そこで、炎症が起きているかどうかを血液中のC反応性たんぱく(CRP)という物質を調べるのがこの検査です。
一定量以上検出された場合は、動脈硬化の危険度が高く、心疾患や脳血管疾患の発祥につながりやすいと予測することができます。

インスリン抵抗性指数
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれる際に必要なものです。そのインスリンの効きが悪くなると、血液中のブドウ糖(血糖)が増え、同時に、血糖の濃度を下げるためにインスリンが大量に分泌されます。こうなると動脈硬化の危険性が高まってきます。

したがって、インスリンが上手く効かなくなる「インスリン抵抗性」の程度を調べれば、動脈硬化の進み具合を調べることができるわけです。内臓脂肪の多い人は、脂肪細胞からインスリンの効きを抑制する物質が分泌されるので、特に注意が必要です。

微量アルブミン
アルブミンはたんぱく質の一種で、体に必要な成分なので通常は体から排泄されません。しかし、腎臓の糸球体という細い血管のかたまりに炎症が生じると、アルブミンが尿の中に漏れ出てきます。
そのため、尿検査で微量のアルブミンが検出された場合は、血管に炎症が起こっている可能性が高く、動脈硬化の危険性が高いと考えられます。

頚動脈超音波検査
動脈硬化の進み具合を実際に確認するため、体の外から頚動脈に超音波を当て、血管の壁の状態を観察する方法が、頚動脈超音波検査です。動脈硬化の進行状態を具体的に調べる検査としては、簡便で精度が高いとされています。

人間ドック:がんの早期発見に役立つ検査

人間ドックで発見されるがんは、男女合わせると胃がんが最も多く、女性に限った場合は、乳がんが増えています。人間ドックで見つかるがんのおよそ8割は、早期がんだとされています。早期発見に有用な画像検査には、次のようなものがあります。

PET(陽電子放射断層撮影)
陽電子を放出する放射性医薬品を静脈から注射して、陽電子によって出される放射線を特殊なカメラを使って画像化する検査です。がんの検査の場合には、ブドウ糖に似た放射性医薬品を使います。

がん細胞は、正常な細胞よりもブドウ糖の消費量が多いので、この薬剤は細胞に多く取り込まれます。つまり、がんのあるところから放射線が多く放出され、それが画像に映し出されて、がんの所在が明らかになるのです。

PETは、一度に全身を撮影でき、5mm程度の小さながんを見つけることも可能です。しかし、前立腺や腎臓、膀胱など、放射線医薬品を尿とともに排泄する部分のがんは見つけにくいのが欠点です。
検査時間は、一度に全身を撮影するので、2時間程度かかります。また、特殊な装置が必要なため限られた医療機関でしか行えません。

マルチスライスCT(コンピュータ断層撮影)
CT検査は、体を輪切りにするようにエックス線撮影し、コンピュータで処理をして画像に表わすものです。マルチスライスCTは、通常のCTよりも細かい間隔で、高速で体を連続撮影することができます。

従来のCTでは画像と画像の隙間にあって見逃されてきたような小さな病巣や血管の異常を発見することが可能です。また、得られたデータから、鮮明な三次元の立体画像を作ることもできます。検査時間は5〜15分程度です。

マンモグラフィ(乳房エックス線撮影)
圧迫版で乳房を上下と左右から挟み、エックス線撮影する検査です。ごく小さながんや、石灰化(がん細胞の中心部が死んで、カルシウムが沈着して固まった状態)をとらえることができ、しこりになる前の早期の乳がんを発見できます。厚生労働省は、40歳以上の女性の乳がんの検査には、マンモグラフィを使用すること勧めています。

人間ドックの検査結果の見方

人間ドックの検査結果は、わかりやすいように「正常(範囲)」「経過観察」「再検査」「精密検査」で示されます。血圧や尿検査などでは、検査数値が「基準値」の範囲に入るものが正常と判定され、それ以外はなんらかの異常が疑われます。

基準値は、過去に大きな病気の経験がない、健康な人の検査結果から求められます。この集団の検査値の上下2.5%を除いた、95%内に含まれる数値が、基準値とされます。
日本人間ドック学界では、医療機関によって若干のばらつきがある基準値を統一するために、全国のデータをもとに基準値のガイドラインを作成しています。日本人間ドック学界などによる認定施設や一部の医療機関では、このガイドラインが利用されています。

実際は「正常」でも異常値が出やすい項目があります
検査時の心理状態や食事などによって、実際には正常であるにもかかわらず、異常が疑われる数値が出やすい項目があります。以下はその代表的な項目です。

血圧
医師や看護師などに緊張して、血圧が上がることがあります。これを「白衣高血圧」といいます。ふだんから家庭で血圧を測定しておくと、白衣高血圧なのかどうかの判定に役立ちます。

総コレステロール
総コレステロール値が基準より高い場合、動脈硬化が起こる可能性が高くなりますが、閉経後の女性では閉経前よりも20mg/dlほど数値が高くなる傾向があります。多くの場合は心配ありません。

中性脂肪
検査前日に脂肪分の多いものを食べたり、アルコールを摂取していると、中性脂肪の値が一時的に高くなることがあります。

尿たんぱく
陽性の場合は腎炎などが疑われます。ただし、高たんぱくの食事をとったり、スポーツをしたり、強いストレスがあったりすると、病気がなくても尿たんぱくが陽性になることがあります。

検査結果が基準値から外れていた場合、病気の危険信号なのかどうかの判断が必要です。人間ドックでは、医師が問診で受信者の生活習慣なども確かめた上で、総合的に結果を判定します。

人間ドックで異常を指摘されたら

検査で異常を指摘された場合、医師の指示通り、再検査や精密検査を受けて、病気ではないかどうか確認することが大切です。たとえ自覚症状がなくても、放置しておいてはいけません。

人間ドックについて

再検査や精密検査では、将来的に気になる可能性が高い状態なのか、すでに発症しているのか、何の病気なのかなどを調べます。特に重要なのは、がんかどうかの確認をすることです。
例えば、便潜血が陽性の場合は「大腸がん」が疑われます。また、腹部エックス線撮影での異常は「胃がん」「食道がん」「十二指腸がん」、マンモグラフィ超音波検査での異常は「乳がん」がそれぞれ疑われます。

眼底検査で異常が認められた場合は、視神経が障害され、視野が欠けるなどの症状が起こる「緑内障」の疑いがあります。緑内障は眼圧が高くなって起こるタイプのほか、眼圧が正常の範囲内でも起こるタイプ(正常眼圧緑内障)が多く見られます。眼圧に問題がなくても、眼底検査で異常が疑われたら、精密検査が必要です。

また、血圧の高い状態が続くと、動脈硬化が促進されます。動脈硬化は脳卒中や心臓病を引き起こすため、これらの病気の兆候がないかを調べる必要があります。

がん検診とその重要性

日本人の死亡原因の第一位は「がん」で、年間約30万人の人が、がんで亡くなっています。今のところ、がんを完全に予防することはできません。がんの場合、できるだけ早期に発見し、早期に治療をすることが重要です。そのために行われるのが「がん検診」です。

40歳になったら1年に1回、検診を受けましょう

しかし、がん検診を受けている人は、まだ多いとはいえません。2004年のがん検診の受診率は、胃がんで約13%、肺がん約23%、大腸がん約18%、子宮がん約14%、乳がん約11%で、ここ5〜6年間横ばい状態が続いています。多くの人は「忙しいから」「自分は病気とは無縁だから」などの理由から受けていないとされています。

現在の日本では、毎年約50万人が新たにがんにかかるといわれており、誰にでもがんにかかる可能性があります。しかし、早い段階で発見して治療できれば、治せる可能性が高まります。そのためにも、がん検診を受けることが大切なのです。

がん検診では、がんの可能性がある人はスクリーニング(ふるい分け)検査が行われます。スクリーニング検査で異常が見つかった場合は精密検査を受けます。

おもながん検診は、国の施策として行われており、多くの自治体が無料あるいは小額の自己負担で実施しています。自治体の広報誌やホームページなどで情報を入手して、がん検診を受けるようにしましょう。このほかに、人間ドックでも自己負担でがん検診を受けることができます。

主ながん検診の内容

一般に、がんの早期発見のためには、40歳代以降は1年に1回、がん検診を受けるように勧められています。40歳を過ぎたら、積極的に検診を受けるようにしましょう。なお、女性特有のがんの場合は、それより早い年代(ex:子宮頸がんは20歳以上が対象)で検診を勧められるものもあるので注意しましょう。

異常なしでも、全てのがんの可能性が否定されたわけではありません

胃がん
一般に胃のエックス線検査が行われます。この検査では、バリウムとよばれる造影剤と発泡剤を飲み、異を空気で膨らませた状態にして、さまざまな角度から撮影します。なお、人間ドックでは自治体とは異なり、内視鏡検査が行われます。

肺がん
肺がんは主に「抹消型」と「中心型」に分けられます。抹消型は肺の奥のほうにできるものを、中心型は肺の入り口付近にできるものをさします。抹消型の発見には、がんなどの異常が白い影となって写る胸部エックス線検査が適しています。一方、中心型の発見には、痰の中にがん細胞が混じっていないかを調べる喀痰細胞診が適しています。

大腸がん
大腸がんは粘膜の表面にでき、そこから出血して血液が便に混じります。そこで、便潜血反応検査という、肉眼では見えない微量の血液が便に混じっていないかを調べる検査が行われます。ただし、痔や良性ポリープなどからの出血に対して反応してしまうこともあります。

乳がん
まず、医師が乳房や乳頭の形などを観察する視診を行います。また、手で触れてしこりを探したり、分泌物を調べたり、脇のリンパ節の腫れを調べる触診が行われます。
次に、マンモグラフィーが行われます。これは、視診・触診ではわからないような、しこりになる前の早期のがんを発見するための乳房のエックス線検査のことで、専用の装置が使われます。乳房を2枚の圧迫板で挟み、押し広げた状態で撮影します。人間ドックでは超音波検査が行われます。

子宮がん
子宮にできるがんには「子宮頸がん」と「子宮体がん」があります。日本人には子宮頸がんが多く、子宮がん検診では、子宮頸がんを調べる頚部細胞診が行われます。
この検査では、医師が綿棒やへらで子宮頚部を軽くこすって、細胞を採取します。それを顕微鏡で観察し、異常な細胞があるかどうかを調べます。

がん検診で「再検査が必要」と言われたら

がん検診で「要再検査」あるいは「要精密検査」と判定された場合、がんの疑いがあることを意味します。精密検査を行って、がんの有無を調べる必要があります。放置しないで、早めに医療機関を受診しましょう。
がんの確定診断は、多くの場合「CT検査」や「内視鏡検査」「超音波検査」などの画像検査と、組織そのものを調べる「生検」を組み合わせて行われます。

きちんと再検査を受けることが大切です

胃がん
上部消化管内視鏡検査や生検が行われます。上部消化管内視鏡検査では、内視鏡を胃の中に挿入し、直接胃の粘膜を観察するため、わずかなただれや変色などもとらえることができます。先端から鉗子(かんし:組織を把持する器具)を出して、がんが疑われる粘膜の一部を採取することもできます。生検では、採取した粘膜を顕微鏡で観察し、がんかどうかが確定診断されます。

肺がん
胸部CT検査や生検が行われます。胸部CT検査は、体を薄く輪切りにしたような断面の画像を撮影する検査で、がんの大きさや形などがわかります。肺生検は、気管支内視鏡を使ったり、局所麻酔のうえ特殊な針を皮膚から刺すなどして、肺の組織を採取します。

大腸がん
直腸診や下部消化管内視鏡検査、生検が行われます。直腸診とは、医師が肛門から直腸に指を挿入して調べる検査です。大腸内視鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜を観察するほか、組織の一部を採取します。
ほかに、バリウムを肛門から注入してX線撮影する注腸造影検査が行われることもあります。

乳がん
乳腺超音波検査やマンモトーム生検が行われます。乳腺超音波検査では、皮膚に器具を当て超音波を発信して、内部の様子を画像化します。がん検診でははっきりしないがんを確定診断できます。
マンモトーム生検では、細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で調べます。

乳頭分泌物に異常があれば、乳管内に造影剤を注入し、エックス線撮影を行う乳管造影撮影や、乳管からごく細いファイバースコープを入れて内部を調べる乳管内視鏡検査をおこないます。
これらにより、乳頭部分のがんの進み具合や、乳管の中の小さながんを調べることができます。

子宮がん
組織診が行われます。子宮頚部や膣を調べる膣拡大鏡(コルポスコープ)で頚部の粘膜を観察し、組織を針などで採取します。がんの精密検査を受ける場合は、がんの診断や治療に詳しい医療機関を受診するとよいでしょう。


 
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